対異世界防衛学園

くノ一

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メインストーリー

23.S組のエース2

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「今度こそ負けねえぞ」
「望むところだ」
 零の部屋には零と潤が何やら叫んでいた。
「「勝負!!」」
 二人は手に持っているコントローラーを同時に押していた。
 現在二人はテレビゲームをしていた。レース系になると特に零は本気だ。朝8時から昼の11時までぶっ通しでやり続けていた。なぜこうなったのかは昨日の出来事にあった。

~昨日の学園の昼休みでの出来事~
「潤って明日は暇か?」
「明日って土曜日か?」
 教室でご飯を食べ終わった零と潤が会話をしていた。零は椅子に座りながら、潤に話を続けた。
「新作のレースゲームを買ったんだが……、もし予定空いてるなら朝からやる?」
 昨日の木曜に販売された新作のゲームを零は帰りに買っていた。それを一緒にやらないかと誘っているのだ。
「そう言われてもなあ…、今部活動の加入とか活発になってるじゃん。俺もどっかに所属したいと考えてるし」
「そうか…、今部活動で部員の争奪戦が行われてたっけ。一部では実際に勝負している所もあるし」
 日にちは4月20日を過ぎていた。始業式から動いてる部活動もあれば、4月後半から動く部活動もある。始業式から動く部活動はあまりにも少ないが、4月後半から動く部活動は非常に多い。スポーツ系から文化系まで多くの部活があるこの学園では毎年の恒例行事でもある。
「まあ、土曜は暇だからとりあえず朝から行くわ。何時に向かえばええんだ?」
「やる気だねえ……、朝8時から相手出来るよ」
 彼自身、暇なのか零の誘いに乗っていた。勝負から離れたくないのだろう。そこへ鏡花がやって来た。
「面白そうな話をしてるね。私も行っていい?」
 どうやら男二人の会話を盗み聞きしていたようだ。大体の事情を聞いていたかのような素振りをしていた。
「別にいいけど、朝から起きているのは俺だけだよ。多分葵は寝ていると思うけど。まあ、訪問した時にチャイム音で起きると思うよ」
「私は葵ちゃんと会話をする為に行くんじゃ無いんだけど……。ま、ゆっくりと話もしたいと思ったしいいか」
 納得したかのようにうんうんと頷いていた。
 
「ゴメンね~、朝からお邪魔しちゃって」
二人がテレビでゲームしている時、テーブルには葵と鏡花がお茶を飲んでいた。
「いいのよ。私も本来なら家族と零以外ならこんな姿を見せないのだけどね」
「まさか葵ちゃんって獣人族だったなんて……、最初見た時は驚いたよ」
 お茶を飲んでいた葵の頭には狐耳みたいなのが生えていた。この世界には人間以外に人間に狐耳が生えたりとかする事もありえる。中には耳と尻尾も生えて生まれてくる事もあった。それを引っくるめて『獣人族』と公式に認められた種族になっている。
 なお、この時代にはその部分を隠して生活出来るように『隠蔽魔力装置』というのも開発されている。今葵の部屋にはカプセル式の装置もそれに分類される。
「てかよくよく考えると、零とかは気持ち悪いとかよく言わないなあって思うんだけど」
 鏡花が気になった質問を葵に問いかけた。獣人族の生まれるのはただ単に魔力によって形成されたに過ぎないため、中には獣人族を嫌う人達もいる。そんな問いに葵は少し立ち上がり、スタスタと廊下へと出た。そして何やら手に持ちながら戻って来た。
「零って実はこんなのに興味があるのよ……」
 零の部屋から雑誌を取る為に廊下に出たのだ。
「獣人族の写真集?……あいつこんなのに興味があったのね……」
 その雑誌は『人族の可愛い写真集』と書かれていた。こう見えて、零はかなりの獣人族を好意に見ているようだ。
「これって昔からなの……?」
 少し引きながら鏡花は質問をした。
「そう、昔からなの。中学からこんなの集めていたっけ」
 ペラペラと雑誌をめくりながら葵は答えた。この雑誌と似た本などは零の部屋にはまだまだ隠されていると葵はそう鏡花に言っていた時に零がテーブルに来て座った。
「どんだけやれば気がすむんだよ……、相手するだけで疲れる」
 零はそう呟きながらテーブルに置かれた雑誌に目が入った。一瞬動きが止まったかのように見えた。そして、慌ててその雑誌に手を伸ばし取ろうとした時、先に葵が動きその雑誌を持ち上げ大事に抱えた。
「あ……その参考書をどこから……」
「零の隠しているところなんて私が知らないとでも?」
「今すぐその参考書をこちらに……」
  零は必死に手を伸ばすが完全に葵に遊ばれていた。隣で見ていた鏡花はクスクスと笑っていた。
 そんな3人のやり取りをしている時、テレビの方では潤が気を失ったかのように倒れていた。朝からぶっ通しでやり続けて、零に勝てたのは数試合程しかない。
「次は勝ってやるぞおおおお!!」
 そんな叫びをあげながら起き上がった。それを見ていた鏡花が潤の隣に立ちながら、
「次は私が相手してあげる」
 コントローラーを持ち、やる気を見せていた。
「ゲームやる方なのか?」
 努力家の鏡花はゲームなどはやらないと潤は見ていた。だが、その考えは間違っていたようで、
「私だって遊ぶ時は遊ぶよ。特にRPGやFPSやレース系のゲームとかほぼ毎日のようにプレイしているよ」
 "やべえ……こいつガチ勢だ"などと潤は心の中で呟いていた。
「このシリーズのゲーム好きなんだよねえ。あ、手抜かないから覚悟してね」
「相変わらず鬼だこいつは……」

「完敗です……」
「私に勝とうなんて10年早いのよ」
 十数分が経過していた。数試合して全て潤が負けていた。完全意識あるのか分からないがモフモフとしたカーペットに寝転んでいた。
 ゲームとは別に零の参考書と言っていた雑誌を葵から取り返そうとしていたが、逆に葵に遊ばれて疲れ果てていた。葵は大事そうにしっかりと握りしめていた。
 零が潤の姿を見て呟いた。
「ホント、潤ってゲームだと弱いよなあ……」
「うるせー、良いところまでいけたのに、あとちょっとのところで抜かれてしまうんだよ!」
 零の呟きに潤は強く言い返した。女子二人は気楽に笑っていた。
 零が時間を見ていた。現時刻12時40分。昼時の時間だった。それを見終えると零は立ち上がりキッチンに入っていた。
「さて……何作るか」
 いつもだと2人前で十分なのだが、今回は鏡花と潤がいるためにいつもの倍は作らないといけなかった。早速冷蔵庫の中身を拝借し始めた。
「結構ご飯余っているなあ……、よしご飯全部使ってチャーハンにするか」
 冷蔵庫からタッパーに入っていたご飯を6個取り出した。二人で作る時にご飯がよく余っていた為に、溜まってしまったのだ。
「今から飯作るからゆっくりしといて」
 零は3人に伝えた。
「零の手作りか……、俺は東野月さんの手作り料理を……ぎゃああああ」
 潤が言っているそばで鏡花が皮膚を強く摘んだ。それに応えるかのように潤は転がりながら足を抑えていた。
「何するんじゃあああ」
「今口から変態的な発言がとれたんでね……お仕置きだ」
「俺は変態じゃねええええっての!!」
 そう言いつつ足を抑えていた。
「クラスじゃ葵ちゃんの料理は誰だって食べたいのよ!このど変態!」
 そんな潤の状態を楽しむかのように鏡花は続けて言い放った。
 そんな事がテレビ前で行われている時、葵はお茶をすすっていた。コップを置いた時、二人でに向かって言った。
「私よりも零の方が料理美味いよ」
「「え」」
 葵の一言に二人はピタリと止まった。そんな会話を食材を切っていながら聞いていた零はそっと呟いた。
「実際は料理はどっちもどっちだけどね」
 小さく呟きながらフライパンに火を入れた。
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