対異世界防衛学園

くノ一

文字の大きさ
25 / 55
メインストーリー

24.S組のエース3

しおりを挟む
 食事を終えた食卓には零一人がテーブルに倒れていた。
「まさかここまで食うとは思わなかったぞ……」
「あら~、私だって食う時は食うわよ」
 大量に作ったであろう皿が何枚も置いてあったが、全て綺麗に食べられていた。それもそのはずだ。ほとんどは鏡花が食べてしまったのだ。
「夜の分も一緒に作ってたけど、まさか全部食べてしまうなんて」
 零は頭を抱えながら落ち込んでいた。そんな発言を聞いていた葵が零に問いかけた。
「もしかして……食材ないの?」
 その質問に零はゆっくりと頷いた。それを葵は見た時、少し表情を固めた。そして思いっきり零の両肩を掴み前後に揺らしながら叫んだ。
「あんなに買ったのにもう無いの!!あれても一週間はあるかなって思ってたんだけど」
「大食いの人が入ればすぐ無くなるよ」
 懸命に揺られながらそう返した。零の肩に置いてた手を放して、急ぎ冷蔵庫に向かいドアを開けるが、中には少量の食材ぐらいしか無かった。
 それを見た時、葵は地面に手をおいた。どうやらこう見えて、葵もよく食う方なのだろう。二人には両者が落ち込んでいるように見えていた。
 潤と鏡花はこの景色を見て、二人の日常的な会話だと思っていた。
「なら、買いに行こうぜ。暇昼時だしさ。ほら、また無くなるのもあれだし、今の内に買っておくのもいいって……」
 潤の言葉に先に反応したのは零だった。じーっと潤に視線を送る感じで見ていた。その視線に気づいたのか、鏡花が呆れた顔で潤に"やっちゃったね"と呟いていた。
「なら荷物は潤に持たせるとして、ショッピングモールに行くか」
「え……え?」
 先ほどとは違う笑みを浮かべながら零は立ち上がり皆に言った。台所で落ち込んでいた葵もいつの間にか元に戻っていた。鏡花もそれに賛同していたが、唯一賛同してないのが潤だけだった。
「待て!何故俺が荷物持たないと行けないんだ!!」
「え?それはゲームの敗者の罰ゲームじゃないの?」
「聞いてねえよ!そもそも罰ゲームなんて無かったよね!」
 零の言葉にツッコミを入れたりしながら潤が叫んでいた。そもそも罰ゲームなど決めてなかったが、こんな時に買い物と言い出しすのを零は待っていたんだろう。それに感づいた潤が零に言った。
「まさか俺が言うのを待っていたのか!」
「俺がそんな人に見えるか?」
「そんな笑みする顔で言っている時点で信用出来ないわ!」
 キーキーと叫びながらツッコミを入れていった。そんな時、葵が荷物を用意し終わっていた。いつも零達が買い物に行く時に使う布で作られた鞄だ。中にはビニール袋が何個か入っているエコバックだ。
 その鞄を葵は潤に投げて渡した。
「んじゃ、行きますか。今の時間なら2時には着くかな。さっさと出るぞー」
「俺の荷物持ちは変わりないね」
 ここまで来ると流石に潤は諦めていた。皆が外に出て、そしてショッピングモールに向かっていった。

私はいつも一人だった。唯一の兄妹の兄ですら私を見下していた。私にはこの学園に来てほんとに良かったのかは分からない。ただ………、兄に勝つという目標もあったんだと思う。私"如月小葉"は家族というのが嫌いだ。

 2時過ぎのショッピングモールに如月小葉は歩いていた。服装は学生服で、ポニーテールが印象的の少女だ。
 彼女は今年この学園に入学をしてきた生徒の一人だった。そんな彼女は休日に買い物をする為にショッピングモールに来ていた。手には『欲しい物リスト』と書かれた紙を持ちながらでの買い物だ。
「こんな物かな……」
 彼女は袋に入った品を見ながらそう呟いた。今彼女はルームメイトに買い物を頼まれていた。そのルームメイトは人懐っこいのかよく小葉と会話をする。そのせいかよくお互いに頼み事をする事が多い。
 その場を立ち去ろうとした時、
「おや……、誰かと思えば小葉ではないか……」
 聞き覚えのある声が小葉の後ろから聞こえてきた。彼女はこの声を聞いた時、全身が固まった。そしてゆっくりと後ろに振り向いた。
「……兄さん…」
 彼女は震えながら口からそう呟いた。
 兄さんと呼ばれた青年は『如月寅』、小葉の双子の兄にあたる。そんな兄である寅を小葉は嫌っていた。
「出来損ないの君がこんな所で何をしているんだ?」
 そう、寅は小葉を愚弄していたのだ。寅は『自分よりも弱く、自分よりも衰えた存在の妹』と認識しているのだ。
 小葉は手を強く握りながら感情を抑えていた。言い返すように言った。
「私はただ、買い物でこちらに来ていただけです。兄さんには関係ない事です」
 小葉は強い口調でそう言い返した。ホントはもっと言い返したかったのだが、今の小葉にはそんな勇気は無かった。
 寅はクスクスと笑いながら、
「いつも思うのだが、なぜ僕と喋る時にそんなに震えているんだ?まさか僕が怖いとか?」
 呆れたような口調で寅は言った。小葉はこの質問に対しては何も言う事が出来なかった。いや、出来なかった。彼女はただ黙る事しか出来なかった。周りの人達は見て見ぬふりをしながら二人の側を過ぎて行く。そして寅は口を開いて、見下すような口調で小葉に言った。
「やっぱり君は僕の質問に何も答えられない。昔からそうだったからね」
「………」
 小葉はひたすらその場を耐えていた。すぐにでも逃げ出したい欲を抑えながら……。
 そんな時、どこからも無く声が聞こえてきた。
「その辺で勘弁したらどうだ?」
「え……」
 突如の事で小葉は驚いた。その声の持ち主が小葉の前に立った。一人ではなく、四人の男女が小葉の前に立ったのだ。
 いつもこんな場面を助けてくれない……。彼女はいつも思っていた。だが、それは中学までの話だ。今は新しい環境にいる。もしかしたら私を助けてくれる、そんな人が現れるかも知れない。彼女は密かにその思いを願っていた。
「君は……、そうか……藤咲雪を倒した光咲零か…」
 意外だったのか、寅は驚いていた。むしろ寅は彼の事を知っていた。そして少しクスクスと笑いながら、
「お前達の関係ない事だよ。そう、これは兄妹の話し合いだよ。部外者は帰ってくれないかな」
「この話が兄妹でする話に見えるとは思えないんだがな。俺も姉や妹がいるからよく分かるんだよ」
 零は言った。これは兄妹でする話ではないと……。
 小葉には分かっていた。これは兄妹でする話ではないぐらいには分かっていた。
「なら君に問おう。光咲零」
  寅がメガネを触りながら大きな口調で言った。
「兄妹とは何なのか。そしてそれを支える力とは何なのか」
 寅の言っている意味は零には最初は分からなかった。本来なら零にとっては当たり前の事に過ぎないのだから。
「兄妹は家族、そしてそれを支えるのは愛情だ」
 昔の出来事だが、よく姉に愛されていたと思える出来事は何回もあり、周りの人達からも言われた事がある。零にとっては当たり前の事だとそう感じていた。
 ならなぜ彼はこのような質問をしたのか…、それは零にも分からなかった。もしかしたら分かりたく無かったかも知れない。
「やっぱり、君と僕では考え方は真っ向から違うようだね」
 寅はそう言いながら、何かを企んでるようなそんな微笑みをしていた。いや、確信をしたのだろう。そんな時、
「如月、こんな所にいたのかよ」
「買い物にしちゃ長すぎだろ」
 寅を探して来たのか、二人の男性が来た。片方は力がありそう体格に赤毛で3人の中でも一番背が高かった。そしてもう一人は茶色の毛をした青年だった。
「ごめんごめん、霧上君にセルラ君。少し妹がいたもんで声を掛けてたんだ」
「これどう見ても妹にいたから声を掛けたレベルには見えないのだが」
 寅は二人に何でもないかのような感じに答えた。赤髪のセルラと呼ばれた青年は何かと留学生的な感じがしていた。
「では僕は失礼するよ。今度会う時は試合かな?それまで敗北しないと願っているよ」
 寅はその場を去っていった。
「あ、待てよ」
 その後ろをセルラが追いかけていった。その場に一人の青年が残っていた。
「君が光咲零か……。次会う時は試合だろうからその時は全力で相手させてもらうよ」
 それだけを言い残して二人の跡を追うかのように去っていった。その場には零達が残っていた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

道化たちの末路

希臘楽園
ファンタジー
母亡き後、継承権もない父と側室母娘が公爵家を狙い始めた。でも私には王太子という切り札がいる。半年間、道化たちが踊るのを、私たちは静かに楽しんで見ていた。AIに書かせてみた第3弾。今回も3000文字程度のお気楽な作品です。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

今更……助けてくれと……言われても……

#Daki-Makura
ファンタジー
出奔した息子から手紙が届いた…… 今更……助けてくれと……言われても……

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

【完結】モブ令嬢のわたしが、なぜか公爵閣下に目をつけられています

きゅちゃん
ファンタジー
男爵家の三女エリーゼは、前世の記憶を持つ元社畜OL。社交界デビューの夜、壁際でひとりジュースを飲んでいたところを、王国随一の権力者・ヴァルナ公爵カイルにスカウトされる。魔法省の研究員として採用されたエリーゼは、三年間誰も気づかなかった計算の誤りを着任三日で発見。着々と存在感を示していく。一方、公爵の婚約候補と噂されるクロード侯爵令嬢セラフィーヌは、エリーゼを目障りに思い妨害を仕掛けてくるが...

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

私は私で幸せになりますので

あんど もあ
ファンタジー
子爵家令嬢オーレリーの両親は、六歳年下の可憐で病弱なクラリスにかかりっきりだった。 ある日、クラリスが「オーレリーが池に落ちる夢を見た」と予言をした。 それから三年。今日オーレリーは、クラリスの予言に従い、北の果ての領地に住む伯爵令息と結婚する。 最後にオーレリーが皆に告げた真実とは。

妹の身代わりだった私に「本命は君だ」――王宮前で王子に抱き潰され、溺愛がバレました。~私が虐げられるきっかけになった少年が、私と王子を結び付

唯崎りいち
恋愛
妹の身代わりとして王子とデートすることになった私。でも王子の本命は最初から私で――。長年虐げられ、地味でみすぼらしい私が、王子の愛と溺愛に包まれ、ついに幸せを掴む甘々ラブファンタジー。妹や家族との誤解、影武者の存在も絡み、ハラハラと胸キュンが止まらない物語。

処理中です...