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銀色の虎
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アフリカの広い草原にギャーギャーという大きな声がひびきわたりました。若いとらのふうふに赤ちゃんが生まれました。
「目のくりくりしたかわいい女の子だ」
お父さんとらは、生まれたてのないている赤ちゃんの顔をぺろりとなめてやりました。そこにまた一頭ギャーという声と共に生れてきました。
お父さんとらは目を丸くしました。二番目の赤ちゃんの体がかがやいていたからです。じぶんたちの体とはまったくちがう色をした全身が銀色の男の子でした。お父さんとらはちょっと変わったわが子におどろきましたが、1番目の子と同じようにだきよせると銀色のからだをゆっくりとなめてあげました。お父さんとらは一番目の子に、イチ、二番目の子にレイと名前をつけました。イチとレイはとらの家族に見守られながらすこやかに育っていきました。
数ヶ月がたちました。イチとレイがとっくみあいをしてふざけているようすをみていたお母さんとらは、二匹をよびました。
「そろそろ、おまえたちもかりのやり方をおぼえようね」
よく日、お母さんとらたちおとなのとらはイチとレイをつれて高原に向かって歩き始めました。初めてのかりにイチとレイは、ちょっと心ぞうがドキドキしていました。二匹はお母さんとらとやっといっしょにかりに出かけられてうれしくてたまりません。
「きょうはたくさんのごちそうをもって帰ろうね」
イチはならんで歩いていたおとうとのレイの顔を見ながらいいました。
「ほら、あそこにシマ馬のむれがいるよ」
レイがえものを見つけたとき、すでにリーダーのとらは体を低くし、シマ馬にむかってじりじりと近づいていました。お母さんとらはイチとレイに小さな声でいいました。
「おまえたちはそこでわたしたちのかりをするところをよく見ておくのよ」
そのとき、とおくで草を食べていたシマ馬たちが急に食べるのをやめてレイのほうを見ていいました。
「おい、あそこに何か光ったものがいるぞ」
シマ馬のむれの一頭が、身体の光っているレイを見つけたのです。
「うわ、とらのむれがきている。光るもののそばにとらがいるぞ。みんな、逃げろ」
シマ馬のむれはいっせいににげだしました。
「レイのせいで、にがしてしまったわ」
イチがレイをにらんでいいました。それからとらたちは日がくれるまでかりをしましたが、えものにすぐ気がつかれにげられてばかり、ついにとらの家族はえものを一匹もつかまえることができませんでした。家に帰ったレイはお母さんとらに小さい声で聞きました。
「お母さん、ぼくの体はどうして光っているの?」
お母さんとらは目を細めてレイの目から流れるなみだをなめていいました。
「あなたはたまたまそんな体に生れてきただけなの。気にすることないわ」
お母さんとらは悲しそうにしているレイの体を自分の体のそばにだきよせて、一だんと大きくなったそれはきれいな銀色の体をゆっくりと大切そうに何度もなめてあげました。けれど、すっかり銀色のとらは、その日から元気をなくしてしまいました。
次の日も次の日も、朝早くからとらの家族はイチやレイをつれてかりに出かけましたが、どの動物たちも体の光る銀色のとらを見つけると、すぐににげてしまいました。それでもとらの家族は、あきらめずにイチとレイをかりにつれていきました。
とらの家族たちは、もう三日も食べ物を口にしていませんでしたが、なかまたちはレイのことをせめたりしませんでした。レイをせめていたイチも元気をなくしたレイを見ているといつのまにかはげますようになっていました。
「レイ、あしたはきっと大じょうぶだから元気を出そうね」
そうはいったイチも、またあしたもおなじかとおもうと元気がなくなりました。
「このままでは、家族のみんながうえてしまう」
お母さんとらはこまって、すでにかりのしごとをやめている一番としをとったとらのところへそうだんに行きました。
次の朝、かりに出かける前にお母さんとらはレイにいいました。
「いいかい、きょうはおまえだけ、わたしたちよりちょっとおくれて出発しなさい」
レイは、ついにお母さんに見すてられた、とおもいさびしいきもちになりました。
とらの家族たちはレイだけおいてシマ馬のむれをさがしに出発しました。このときほど、レイは自分の光りかがやく体の色を悲しく思ったことはありませんでした。でも、お母さんとらにいわれたとおり、レイはしばらくしてから出発しました。
レイがしばらく歩いているとシマウマのむれがとおくに見えました。とおくはなれていても銀色の体は目立ちました。レイを見つけたシマウマのリーダーがさけびました。
「わー、とらが来たぞー」
シマウマたちはいっせいににげました。
「また、ぼくのせいでにげられちゃった」
レイががっかりと下をむいていると、目の前にお母さんとらがあらわれました。
「きょうは、お前のおかげで、おなかいっぱいのごちそうが食べられるよ」
「そう、ぼくがかりに行かなかったからだね」
「いや、ちがうよ。光るお前を見てシマウマはすぐにげだすだろ? あたしたちはにげ出すシマ馬のむれを先回りしてまちぶせしたのよ。おまえの光るからだが役に立ったの。お前のことに気を取られてわたしたちには気がつかなかったのよ」
「ほら、見てよ、レイ」
イチの声のするほうを見ると、イチとなかまがシマ馬をくわえて立っていました。
その後もレイは、自分でちょくせつシマウマをつかまえたりすることはありませんでしたが、みんなといっしょにかりをしていつまでもなかまとしあわせにくらしました。
「目のくりくりしたかわいい女の子だ」
お父さんとらは、生まれたてのないている赤ちゃんの顔をぺろりとなめてやりました。そこにまた一頭ギャーという声と共に生れてきました。
お父さんとらは目を丸くしました。二番目の赤ちゃんの体がかがやいていたからです。じぶんたちの体とはまったくちがう色をした全身が銀色の男の子でした。お父さんとらはちょっと変わったわが子におどろきましたが、1番目の子と同じようにだきよせると銀色のからだをゆっくりとなめてあげました。お父さんとらは一番目の子に、イチ、二番目の子にレイと名前をつけました。イチとレイはとらの家族に見守られながらすこやかに育っていきました。
数ヶ月がたちました。イチとレイがとっくみあいをしてふざけているようすをみていたお母さんとらは、二匹をよびました。
「そろそろ、おまえたちもかりのやり方をおぼえようね」
よく日、お母さんとらたちおとなのとらはイチとレイをつれて高原に向かって歩き始めました。初めてのかりにイチとレイは、ちょっと心ぞうがドキドキしていました。二匹はお母さんとらとやっといっしょにかりに出かけられてうれしくてたまりません。
「きょうはたくさんのごちそうをもって帰ろうね」
イチはならんで歩いていたおとうとのレイの顔を見ながらいいました。
「ほら、あそこにシマ馬のむれがいるよ」
レイがえものを見つけたとき、すでにリーダーのとらは体を低くし、シマ馬にむかってじりじりと近づいていました。お母さんとらはイチとレイに小さな声でいいました。
「おまえたちはそこでわたしたちのかりをするところをよく見ておくのよ」
そのとき、とおくで草を食べていたシマ馬たちが急に食べるのをやめてレイのほうを見ていいました。
「おい、あそこに何か光ったものがいるぞ」
シマ馬のむれの一頭が、身体の光っているレイを見つけたのです。
「うわ、とらのむれがきている。光るもののそばにとらがいるぞ。みんな、逃げろ」
シマ馬のむれはいっせいににげだしました。
「レイのせいで、にがしてしまったわ」
イチがレイをにらんでいいました。それからとらたちは日がくれるまでかりをしましたが、えものにすぐ気がつかれにげられてばかり、ついにとらの家族はえものを一匹もつかまえることができませんでした。家に帰ったレイはお母さんとらに小さい声で聞きました。
「お母さん、ぼくの体はどうして光っているの?」
お母さんとらは目を細めてレイの目から流れるなみだをなめていいました。
「あなたはたまたまそんな体に生れてきただけなの。気にすることないわ」
お母さんとらは悲しそうにしているレイの体を自分の体のそばにだきよせて、一だんと大きくなったそれはきれいな銀色の体をゆっくりと大切そうに何度もなめてあげました。けれど、すっかり銀色のとらは、その日から元気をなくしてしまいました。
次の日も次の日も、朝早くからとらの家族はイチやレイをつれてかりに出かけましたが、どの動物たちも体の光る銀色のとらを見つけると、すぐににげてしまいました。それでもとらの家族は、あきらめずにイチとレイをかりにつれていきました。
とらの家族たちは、もう三日も食べ物を口にしていませんでしたが、なかまたちはレイのことをせめたりしませんでした。レイをせめていたイチも元気をなくしたレイを見ているといつのまにかはげますようになっていました。
「レイ、あしたはきっと大じょうぶだから元気を出そうね」
そうはいったイチも、またあしたもおなじかとおもうと元気がなくなりました。
「このままでは、家族のみんながうえてしまう」
お母さんとらはこまって、すでにかりのしごとをやめている一番としをとったとらのところへそうだんに行きました。
次の朝、かりに出かける前にお母さんとらはレイにいいました。
「いいかい、きょうはおまえだけ、わたしたちよりちょっとおくれて出発しなさい」
レイは、ついにお母さんに見すてられた、とおもいさびしいきもちになりました。
とらの家族たちはレイだけおいてシマ馬のむれをさがしに出発しました。このときほど、レイは自分の光りかがやく体の色を悲しく思ったことはありませんでした。でも、お母さんとらにいわれたとおり、レイはしばらくしてから出発しました。
レイがしばらく歩いているとシマウマのむれがとおくに見えました。とおくはなれていても銀色の体は目立ちました。レイを見つけたシマウマのリーダーがさけびました。
「わー、とらが来たぞー」
シマウマたちはいっせいににげました。
「また、ぼくのせいでにげられちゃった」
レイががっかりと下をむいていると、目の前にお母さんとらがあらわれました。
「きょうは、お前のおかげで、おなかいっぱいのごちそうが食べられるよ」
「そう、ぼくがかりに行かなかったからだね」
「いや、ちがうよ。光るお前を見てシマウマはすぐにげだすだろ? あたしたちはにげ出すシマ馬のむれを先回りしてまちぶせしたのよ。おまえの光るからだが役に立ったの。お前のことに気を取られてわたしたちには気がつかなかったのよ」
「ほら、見てよ、レイ」
イチの声のするほうを見ると、イチとなかまがシマ馬をくわえて立っていました。
その後もレイは、自分でちょくせつシマウマをつかまえたりすることはありませんでしたが、みんなといっしょにかりをしていつまでもなかまとしあわせにくらしました。
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