窓野枠 短編傑作集 1

窓野枠

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タイムマシン

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 冗談の大嫌いな大発明家のN博士がいた。彼には冗談の大好きなF助手がいた。毎日聞かされるF助手のつまらない冗談に、N博士はいささか辟易へきえきしていた。あるとき、N博士の研究室にF助手が駆け込んできた。
「は、博士、大発明です!」
「ほう、何を発明した?」
「タイムマシンです」
「……」
「本当です。今、お見せします」
しばらくして、助手は2つの大きなトラベルケースを運んできた。
「これがそうです」
「わしにはただのトラベルケースにしか見えんよ」
 助手は腕時計をN博士に渡し、
「博士もご一緒にタイムとラベルをしていただければ分かります」
「まさか、10秒後にトラベルしますといって、この狭いケースの中に10秒間入っているなんてことはないだろうな」
 助手はケースに入りかけたが、上半身を乗り出し苦笑した。
「なんだ、このジョークは、博士にもすぐお分かりですか?」
 博士は目を吊り上げた。
「2度と顔を見せるな!」
 そう言うと、ケースに入りかけていた助手をケースの中に押し込みふたを閉じた。博士は部屋の隅にあった電話ボックスみたいなカプセルに助手の入ったケースを押し込んだ。
「あきれた助手だ。もう石器時代にでも行っていろ」
 博士はカプセルの外側についているスイッチを押した。すると、カプセルはスーと消えてしまった。
「まさかこんな事のためにタイムマシンを使うとは思わなかったよ」
 また何人目かの冗談好きの助手が、石器時代へと消えていった。
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