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メル友
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出会い系サイトはPCの普及でかなりの人気である。お陰で、簡単に交流ができるようになった。しかし、プロフィールが真実かは怪しい。次の男女の場合もそうである。
「29歳と363日。ああ、あさってで、30代か…… 」
PCの前でため息をつく男は、大手広告代理店経理課に勤務する川口章夫である。5年前から始めたPCと携帯で、出会い系サイトで知り合ったメル友もかなりの数になった。しかし、どの相手も長く続かなかった。章夫はメールチェックをする。あやからのメールが来ていた。
「章夫もあさってで30だね。あした、20代最後のお別れ会をしようよ。もちろん、二人きりでね。とびきりのレストンで、どうかしら? あたしからのプレゼント あや姉より」
メールを読んで我が目を疑った。3年前出会い系サイトで知り合ったあやとは、かなり気があってずっと続いている唯一のメル友である。ひとつ年上の女性で、仕事はデザイナーで、チーフをしている。1ヶ月前、章夫があやの写真を送ってくれと頼んだが、知らないほうがいいよ、と取り合ってくれなかった。章夫は一方的に写真を送って、君のも欲しい、と添えた。しかし、それきりメールが来なかった。
それが、突然、明日、会おうと言って来たのである。今までのやり取りで東京に住んでいることは分かっていた。章夫はキーボードを打った。
「ありがとう。せっかくだからお祝いしてくれるかい? 場所はお任せします。 あきお」
すぐに送信した。高ぶる気持ちをおさえながら、章夫は明け方まで起きていたが、あやからのメールはついに来なかった。
(なんなんだよ。人を誘っておいてさ! )
翌日、章夫は眠い目をこすりながら出勤した。ぼんやりする頭で例のごとく伝票の数字をPCに打ち込んでいた。
「おはようございます。川口さん、この伝票の処理をお願いしますね」
章夫がPCから顔を上げると、タイトなミニスカートとシースルーのシャツを着たとても美しい女性が立っていた。顔を見ると、凄腕美人管理職と異名をとる山本彩だった。年はあまり変わらないが、すでに課長である。章夫はいまだに経理主任だった。おまけに伝票など部下に運ばせて、山本がここへ来る事など今までになかったから、同僚たちの視線がいっせいに集まった。章夫は慌てて山本彩が差し出している伝票の束を受け取った。
「はい、すぐに処理します」
そう答えたが、山本彩はずっと立っていた。章夫などにもう用はないはずである。1分ほど時間が流れた。その様子を不安そうにみんなが見ている。
「あの、まだ何か御用でしょうか? 」
山本彩は章夫の受け取った伝票の束に手を伸ばし、指を差した。章夫が目を伝票に落とすと、伝票の上のメモ用紙に、どこかの住所と地図が書かれていた。
「そこでいいかしら? きのう、一晩中、レストランを探してたのだけど、いいところが見つからなくて…… 。あたしのうちはどうかしら? あたし、こう見えても料理得意なのよ」
章夫は意味が分からず伝票を見ていた目を彼女に向けた。彼女の顔が真っ赤に上気していた。
「きみが……あや姉なの? 」
彩はこっくりうなずいた。
「29歳と363日。ああ、あさってで、30代か…… 」
PCの前でため息をつく男は、大手広告代理店経理課に勤務する川口章夫である。5年前から始めたPCと携帯で、出会い系サイトで知り合ったメル友もかなりの数になった。しかし、どの相手も長く続かなかった。章夫はメールチェックをする。あやからのメールが来ていた。
「章夫もあさってで30だね。あした、20代最後のお別れ会をしようよ。もちろん、二人きりでね。とびきりのレストンで、どうかしら? あたしからのプレゼント あや姉より」
メールを読んで我が目を疑った。3年前出会い系サイトで知り合ったあやとは、かなり気があってずっと続いている唯一のメル友である。ひとつ年上の女性で、仕事はデザイナーで、チーフをしている。1ヶ月前、章夫があやの写真を送ってくれと頼んだが、知らないほうがいいよ、と取り合ってくれなかった。章夫は一方的に写真を送って、君のも欲しい、と添えた。しかし、それきりメールが来なかった。
それが、突然、明日、会おうと言って来たのである。今までのやり取りで東京に住んでいることは分かっていた。章夫はキーボードを打った。
「ありがとう。せっかくだからお祝いしてくれるかい? 場所はお任せします。 あきお」
すぐに送信した。高ぶる気持ちをおさえながら、章夫は明け方まで起きていたが、あやからのメールはついに来なかった。
(なんなんだよ。人を誘っておいてさ! )
翌日、章夫は眠い目をこすりながら出勤した。ぼんやりする頭で例のごとく伝票の数字をPCに打ち込んでいた。
「おはようございます。川口さん、この伝票の処理をお願いしますね」
章夫がPCから顔を上げると、タイトなミニスカートとシースルーのシャツを着たとても美しい女性が立っていた。顔を見ると、凄腕美人管理職と異名をとる山本彩だった。年はあまり変わらないが、すでに課長である。章夫はいまだに経理主任だった。おまけに伝票など部下に運ばせて、山本がここへ来る事など今までになかったから、同僚たちの視線がいっせいに集まった。章夫は慌てて山本彩が差し出している伝票の束を受け取った。
「はい、すぐに処理します」
そう答えたが、山本彩はずっと立っていた。章夫などにもう用はないはずである。1分ほど時間が流れた。その様子を不安そうにみんなが見ている。
「あの、まだ何か御用でしょうか? 」
山本彩は章夫の受け取った伝票の束に手を伸ばし、指を差した。章夫が目を伝票に落とすと、伝票の上のメモ用紙に、どこかの住所と地図が書かれていた。
「そこでいいかしら? きのう、一晩中、レストランを探してたのだけど、いいところが見つからなくて…… 。あたしのうちはどうかしら? あたし、こう見えても料理得意なのよ」
章夫は意味が分からず伝票を見ていた目を彼女に向けた。彼女の顔が真っ赤に上気していた。
「きみが……あや姉なの? 」
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