窓野枠 短編傑作集 1

窓野枠

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透明人間

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 誰かが声を掛けて来る。ふと、後ろを振り返ると、透明人間が立っていた。なぜ、透明人間がいたかが分かったかというと、俺にはなんとなく分かった。声も透明で、まるで聞こえない。けれど、俺にはそいつの言葉を理解する事ができた。そいつは、はしゃぎながら盛んに話しかけてきた。よほどうれしかったに違いない。奴が言うには、気がついたら、いつのまにか全てが透明になってしまったらしい。寂しくて悲しくて、毎日、いろんな人に話し掛けているが、誰も分かってくれない。どうやら、俺は声を掛けた12,346人目の男らしい。奴は本当に心底喜んでいるようだった。
 そんな奴の喜ぶ姿を見ると、自分のことのように俺もうれしかった。だって、透明人間の俺に気がついてくれたのだから。

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