20 / 20
2
追う人と 追われる人
しおりを挟む
宇宙人こと通称名・田中健一には私生活の微塵もなかった。何処へ行っても新聞記者、テレビ報道記者、一般人、子供、債権者、警察官、犬が彼の後を追って来た。彼が銀河系3番目に位置するホニャラカ星から家出をし、地球に流れ着いた時、生活費に困ってサラリーマン金融から生活費を借りたのだが、地球の生活に慣れない彼は仕事が続かず返済が滞った。
一般人、子供が彼を追う訳は、珍しい姿態に興味があったし、宇宙人だから物珍しかったし、極たまに空中を飛ぶ姿を見たかったし、まあ、動物園のパンダを見るくらいの気分であった。
債権者が追う訳は、彼が宇宙に逃げ借金を踏み倒されないよう常に彼を見張るため追っていた。
犬が追う訳はただ習性というか走っている彼を見ると無性に追い掛けたくなった。
警察官が追う訳はこの追っかけ騒動で交通機関の渋滞、麻痺を整理するため走った。
追っている者たちの理由は個々色々あるが、兎に角、彼を誰もが追わずにはいられなかった。だから、彼には気の休まる場所がない。彼は安住の地を求めて逃避行の毎日だ。そして、密かに作った秘密基地がある北海道の山中に逃げた。文字通り、秘密基地であるから誰にも存在は知られていない。しかし、仕組みを知らない彼は、秘密基地を作る資金をサラリーマン金融から借りていたので詳細は自ずと金融業者には知られていた。彼の性格は至ってサービス精神が旺盛で明るかった。彼は地球へは自力飛行してやって来たのであるが、地球上ではどうも空気があると空気抵抗が邪魔して思うように飛べなかった。そう、彼は空気を必要としない身体であった。太陽光線というエネルギーがあれば、身体の中で光合成を起こし、栄養に変換する内臓を備えていた。だから、太陽エネルギーを得られない夜はなるべく動かないでじっとしていることがほとんどであった。エネルギーが不足すると胸のカラータイマーが点滅し警報音を鳴らしてくれるので生きていく上で支障はなかった。しかし、格好が目立った。つり上がった目、シルバーと赤のツートンカラーの身体は、人目を引いた。
都会から夜逃げ同然と言いたいところであるが、夜逃げられない彼は、真っ昼間に逃げるしかないので、当然、目に付く。だから、いつも誰かに追い掛けられているのである。兎にも角にもあらゆる物から逃げていた。そういう訳で、彼は北海道にある秘密基地に寝泊まりして早7日間が経とうとしていた。
8日目の朝、秘密基地と呼ぶ別荘に隠れていた彼が窓のカーテンを開け外の空気を吸おうとして窓を開けた。鳥のさえずり、木々のざわめき、北海道の山の中らしい。彼は自由をかみしめていたときであった。何やら、人の声がするではないか。人などいるはずのない、秘密の場所であるはずなのに。声のするほうを見た彼は驚いた。いつの間にかカメラを構えた男女50人ほどが遠巻きに陣取っていた。その中のひとりの男が叫んだ。
「やはり、この家だ。彼がいたぞ」
その声で全てのカメラが彼に向けられた。シャッター音が鳴り響く。
「どうしてここが分かったんだ? ここも7日間の命であったか」
記者たちの手には田中から送られたファックスが握りしめられていた。その文面は次の内容であった。
もう探さないでください。僕はひっそりと暮らします。
差出人 田中健一 北海道長万部町国後1827番地秘密基地内
となっていた。
彼はドアを急いで閉めた。しかし、彼はほくそ笑んだ。すっかり用心深くなった彼は常に逃げ道を作っていた。彼は部屋に戻るとキッチンに入って中央に据えられていたテーブルを脇に押しやった。そして、壁に飾られたピカソの絵をずらし隠し金庫のダイヤルを回した。金庫を開けると中に1本の紐が垂れていた。その紐をつかむと勢いよく引っ張った。
ウイーン、ウイーン、あと120秒で発射です。台所の床の中央が左右に開いて下から人間の形をした物が徐々に上がってきた。
「私が作ったモビルスーツだ。これで脱出だ」
彼はモビルスーツの中に身体をねじ入れた。彼の身体のサイズに合わせて作られたモビルスーツはすっぽり彼の身体を包み込んだ。その間にも家の中で大きな音を発していた警報音とともに、時間のカウントダウンを告げる合成音が鳴り響いていた。
「後、60秒で発射です。これより、1秒ごとにカウントします。50、49、48、47……」
一方、外に集結していたメディアの集団はこの異様な警報音の出所が田中の家からであることを知り相談していた。
「一気に踏み込みましょう。彼を確保するには、今でしょう?」
「彼の人権はどうするんだ」
「彼は宇宙人で地球の法律は通用しない」
「そうなの? そうだな、宇宙人だもな」
記者たちは玄関に駆け寄った。そのうちの一人が呼び鈴を押す。
「田中さん、あんたはもう包囲されている。大人しくしなさい」
その時、先ほどからカウントダウンしていた警報音が「発射」と宣告した。
モビルスーツを着た田中は、スーツのスタンドから身体を外して一歩ずつ歩み始めた。そして、取材陣の前に歩み出た。
「こんにちは、宇宙人の田中さんはここにはいませんよ、さっき、裏口から逃げましたから」
「あんた、中に入ってるんだろ? バレバレなんだよ」
「……」
「そんな着ぐるみ着たって駄目だよ」
「はは、ばれましたか」
こうして目立ちたがり屋の性癖を持つ宇宙人は、隠れては、出現し、驚かすという演出をして、趣向を凝らすのであった。
一般人、子供が彼を追う訳は、珍しい姿態に興味があったし、宇宙人だから物珍しかったし、極たまに空中を飛ぶ姿を見たかったし、まあ、動物園のパンダを見るくらいの気分であった。
債権者が追う訳は、彼が宇宙に逃げ借金を踏み倒されないよう常に彼を見張るため追っていた。
犬が追う訳はただ習性というか走っている彼を見ると無性に追い掛けたくなった。
警察官が追う訳はこの追っかけ騒動で交通機関の渋滞、麻痺を整理するため走った。
追っている者たちの理由は個々色々あるが、兎に角、彼を誰もが追わずにはいられなかった。だから、彼には気の休まる場所がない。彼は安住の地を求めて逃避行の毎日だ。そして、密かに作った秘密基地がある北海道の山中に逃げた。文字通り、秘密基地であるから誰にも存在は知られていない。しかし、仕組みを知らない彼は、秘密基地を作る資金をサラリーマン金融から借りていたので詳細は自ずと金融業者には知られていた。彼の性格は至ってサービス精神が旺盛で明るかった。彼は地球へは自力飛行してやって来たのであるが、地球上ではどうも空気があると空気抵抗が邪魔して思うように飛べなかった。そう、彼は空気を必要としない身体であった。太陽光線というエネルギーがあれば、身体の中で光合成を起こし、栄養に変換する内臓を備えていた。だから、太陽エネルギーを得られない夜はなるべく動かないでじっとしていることがほとんどであった。エネルギーが不足すると胸のカラータイマーが点滅し警報音を鳴らしてくれるので生きていく上で支障はなかった。しかし、格好が目立った。つり上がった目、シルバーと赤のツートンカラーの身体は、人目を引いた。
都会から夜逃げ同然と言いたいところであるが、夜逃げられない彼は、真っ昼間に逃げるしかないので、当然、目に付く。だから、いつも誰かに追い掛けられているのである。兎にも角にもあらゆる物から逃げていた。そういう訳で、彼は北海道にある秘密基地に寝泊まりして早7日間が経とうとしていた。
8日目の朝、秘密基地と呼ぶ別荘に隠れていた彼が窓のカーテンを開け外の空気を吸おうとして窓を開けた。鳥のさえずり、木々のざわめき、北海道の山の中らしい。彼は自由をかみしめていたときであった。何やら、人の声がするではないか。人などいるはずのない、秘密の場所であるはずなのに。声のするほうを見た彼は驚いた。いつの間にかカメラを構えた男女50人ほどが遠巻きに陣取っていた。その中のひとりの男が叫んだ。
「やはり、この家だ。彼がいたぞ」
その声で全てのカメラが彼に向けられた。シャッター音が鳴り響く。
「どうしてここが分かったんだ? ここも7日間の命であったか」
記者たちの手には田中から送られたファックスが握りしめられていた。その文面は次の内容であった。
もう探さないでください。僕はひっそりと暮らします。
差出人 田中健一 北海道長万部町国後1827番地秘密基地内
となっていた。
彼はドアを急いで閉めた。しかし、彼はほくそ笑んだ。すっかり用心深くなった彼は常に逃げ道を作っていた。彼は部屋に戻るとキッチンに入って中央に据えられていたテーブルを脇に押しやった。そして、壁に飾られたピカソの絵をずらし隠し金庫のダイヤルを回した。金庫を開けると中に1本の紐が垂れていた。その紐をつかむと勢いよく引っ張った。
ウイーン、ウイーン、あと120秒で発射です。台所の床の中央が左右に開いて下から人間の形をした物が徐々に上がってきた。
「私が作ったモビルスーツだ。これで脱出だ」
彼はモビルスーツの中に身体をねじ入れた。彼の身体のサイズに合わせて作られたモビルスーツはすっぽり彼の身体を包み込んだ。その間にも家の中で大きな音を発していた警報音とともに、時間のカウントダウンを告げる合成音が鳴り響いていた。
「後、60秒で発射です。これより、1秒ごとにカウントします。50、49、48、47……」
一方、外に集結していたメディアの集団はこの異様な警報音の出所が田中の家からであることを知り相談していた。
「一気に踏み込みましょう。彼を確保するには、今でしょう?」
「彼の人権はどうするんだ」
「彼は宇宙人で地球の法律は通用しない」
「そうなの? そうだな、宇宙人だもな」
記者たちは玄関に駆け寄った。そのうちの一人が呼び鈴を押す。
「田中さん、あんたはもう包囲されている。大人しくしなさい」
その時、先ほどからカウントダウンしていた警報音が「発射」と宣告した。
モビルスーツを着た田中は、スーツのスタンドから身体を外して一歩ずつ歩み始めた。そして、取材陣の前に歩み出た。
「こんにちは、宇宙人の田中さんはここにはいませんよ、さっき、裏口から逃げましたから」
「あんた、中に入ってるんだろ? バレバレなんだよ」
「……」
「そんな着ぐるみ着たって駄目だよ」
「はは、ばれましたか」
こうして目立ちたがり屋の性癖を持つ宇宙人は、隠れては、出現し、驚かすという演出をして、趣向を凝らすのであった。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
投稿ありがとうございます。
描写が丁寧で、突拍子もない世界観でも違和感なく進行させるのは凄いです。
短い小ネタもアメリカンジョークの様な小気味良さがあって面白かったです。
拝読いただきましてありがとうございます。さらなる、うれしい感想をありがとうございます。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。