6 / 21
第2章 また、いつか
1
しおりを挟む
教室の窓から、橙色の夕陽が斜めに差し込んでいた。机の影が長く伸び、床に小さなグラデーションをつくっている。放課後の教室には、子どもたちの声ももう聞こえない。そこに残っていたのは、大川真一と深沢遥、二人だけだった。
真一は、教室のいちばん前の席に腰掛け、目の前の木の机の角を指先でなぞっていた。黒板には、担任が残した算数の図形がかすかに残っている。彼の背後には、今朝もそこにいた遥の席があった。
「……大川くん」
後ろからかけられた声に、真一は少しだけ肩を震わせた。ゆっくり振り返ると、遥が立っていた。ランドセルはもう背負っていて、両手の指先をそっと組んでいる。眉のあたりにかかる髪が、夕日でほんのり赤く染まっていた。
「今日、ありがとう。最後に話してくれて」
遥はにこりと笑った。でも、その笑顔の奥に、どこか少しだけ陰があった。
真一はどう返していいかわからなかった。ただ小さくうなずくと、視線を机の上に落とした。
「わたしね、明日、行っちゃうけど……」
遥が一歩だけ近づいた。
「元気になって、戻ってきたいなって思ってる。……でも、約束はできないかも」
そう言うと、遥は机の上に置かれていた小さな折り紙の鶴を取った。何度も折り目を確かめながら、大切そうに手のひらに乗せた。
「約束って、できないと、すごく悲しいでしょ。だから、約束はしない。でも……忘れないことは、できると思う。ずっと、覚えてるって」
遥はそっと、折り紙の鶴を真一の前に差し出した。
真一は、教室のいちばん前の席に腰掛け、目の前の木の机の角を指先でなぞっていた。黒板には、担任が残した算数の図形がかすかに残っている。彼の背後には、今朝もそこにいた遥の席があった。
「……大川くん」
後ろからかけられた声に、真一は少しだけ肩を震わせた。ゆっくり振り返ると、遥が立っていた。ランドセルはもう背負っていて、両手の指先をそっと組んでいる。眉のあたりにかかる髪が、夕日でほんのり赤く染まっていた。
「今日、ありがとう。最後に話してくれて」
遥はにこりと笑った。でも、その笑顔の奥に、どこか少しだけ陰があった。
真一はどう返していいかわからなかった。ただ小さくうなずくと、視線を机の上に落とした。
「わたしね、明日、行っちゃうけど……」
遥が一歩だけ近づいた。
「元気になって、戻ってきたいなって思ってる。……でも、約束はできないかも」
そう言うと、遥は机の上に置かれていた小さな折り紙の鶴を取った。何度も折り目を確かめながら、大切そうに手のひらに乗せた。
「約束って、できないと、すごく悲しいでしょ。だから、約束はしない。でも……忘れないことは、できると思う。ずっと、覚えてるって」
遥はそっと、折り紙の鶴を真一の前に差し出した。
0
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。
診察室の午後<菜の花の丘編>その1
スピカナ
恋愛
神的イケメン医師・北原春樹と、病弱で天才的なアーティストである妻・莉子。
そして二人を愛してしまったイケメン御曹司・浅田夏輝。
「菜の花クリニック」と「サテライトセンター」を舞台に、三人の愛と日常が描かれます。
時に泣けて、時に笑える――溺愛とBL要素を含む、ほのぼの愛の物語。
多くのスタッフの人生がここで楽しく花開いていきます。
この小説は「医師の兄が溺愛する病弱な義妹を毎日診察する甘~い愛の物語」の1000話以降の続編です。
※医学描写はすべて架空です。
友達婚~5年もあいつに片想い~
日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は
同僚の大樹に5年も片想いしている
5年前にした
「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」
梨衣は今30歳
その約束を大樹は覚えているのか
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
∞
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の逢坂玲人は入学時から髪を金色に染め、無愛想なため一匹狼として高校生活を送っている。
入学して間もないある日の放課後、玲人は2年生の生徒会長・如月沙奈にロープで拘束されてしまう。それを解く鍵は彼女を抱きしめると約束することだった。ただ、玲人は上手く言いくるめて彼女から逃げることに成功する。そんな中、銀髪の美少女のアリス・ユメミールと出会い、お互いに好きな猫のことなどを通じて彼女と交流を深めていく。
しかし、沙奈も一度の失敗で諦めるような女の子ではない。玲人は沙奈に追いかけられる日々が始まる。
抱きしめて。生徒会に入って。口づけして。ヤンデレな沙奈からの様々な我が儘を通して見えてくるものは何なのか。見えた先には何があるのか。沙奈の好意が非常に強くも温かい青春ラブストーリー。
※タイトルは「むげん」と読みます。
※完結しました!(2020.7.29)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる