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第4章 あかねの応援
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そんなある日──
高校卒業以来、連絡を取っていなかったあかねからメッセージが届いた。
《ひさしぶり。真一くん、『あかねの空』読んだよ。会って話せるかな。》
待ち合わせの場所は、高校近くの古い喫茶店。ふたりが一度だけ立ち寄った記憶のある店だった。
午後の光が差し込む窓際の席に、真一は先に座っていた。
扉が開き、あかねがゆっくりと入ってきた。
「……久しぶり」
「ほんと…… なんかぁ……」
制服の代わりに、淡いベージュのワンピースが新鮮だった。それに大人びた印象も加わり真一はあかねに見とれた。
ふたりはぎこちなく笑い、ホットコーヒーを注文した。
「あの本、変な話だったけど、ずっと胸があたたかかった」
「変って言われるの慣れてきたけど、君に言われるとちょっと特別だな」
「ねえ、“空”って……私?」
あかねがまっすぐ顔を上げた。「案内人の女の子も……私のこと?」
真一は黙ったまま、スプーンを指で転がす。
あかねは、少し笑って、でも泣きそうな声で言った。
「ずるいな、真一くんは。何も言わないで、あんなふうに全部書いちゃって」
真一は静かに口を開いた。
「あのとき、君が“小説書いてみたら”って言ってくれた。それが全部の始まりだった」
あかねは頷いた。「覚えてるよ。軽い気持ちで言っただけなのに……ほんとに書いちゃって、しかも泣かせてくるし」
「君が泣いたから、初めて“誰かに届く文章”を書きたいって思ったんだ」
沈黙の中、あかねはそっと言った。
「……ありがとう。ちゃんと読んでるよ、ずっと」
「うん。君にだけは、伝えたかったから」
真一は胸ポケットから折りたたんだ手紙を取り出す。
《To 遥──僕の“またね”へ》
その下に、小さくこう添えられていた。
《And to あかね──僕の“今”へ》
あかねはそれを見て、涙を浮かべて笑った。
「バカみたい……でも、うれしい」
やわらかな午後の光が、ふたりの間に静かに流れていた。
高校卒業以来、連絡を取っていなかったあかねからメッセージが届いた。
《ひさしぶり。真一くん、『あかねの空』読んだよ。会って話せるかな。》
待ち合わせの場所は、高校近くの古い喫茶店。ふたりが一度だけ立ち寄った記憶のある店だった。
午後の光が差し込む窓際の席に、真一は先に座っていた。
扉が開き、あかねがゆっくりと入ってきた。
「……久しぶり」
「ほんと…… なんかぁ……」
制服の代わりに、淡いベージュのワンピースが新鮮だった。それに大人びた印象も加わり真一はあかねに見とれた。
ふたりはぎこちなく笑い、ホットコーヒーを注文した。
「あの本、変な話だったけど、ずっと胸があたたかかった」
「変って言われるの慣れてきたけど、君に言われるとちょっと特別だな」
「ねえ、“空”って……私?」
あかねがまっすぐ顔を上げた。「案内人の女の子も……私のこと?」
真一は黙ったまま、スプーンを指で転がす。
あかねは、少し笑って、でも泣きそうな声で言った。
「ずるいな、真一くんは。何も言わないで、あんなふうに全部書いちゃって」
真一は静かに口を開いた。
「あのとき、君が“小説書いてみたら”って言ってくれた。それが全部の始まりだった」
あかねは頷いた。「覚えてるよ。軽い気持ちで言っただけなのに……ほんとに書いちゃって、しかも泣かせてくるし」
「君が泣いたから、初めて“誰かに届く文章”を書きたいって思ったんだ」
沈黙の中、あかねはそっと言った。
「……ありがとう。ちゃんと読んでるよ、ずっと」
「うん。君にだけは、伝えたかったから」
真一は胸ポケットから折りたたんだ手紙を取り出す。
《To 遥──僕の“またね”へ》
その下に、小さくこう添えられていた。
《And to あかね──僕の“今”へ》
あかねはそれを見て、涙を浮かべて笑った。
「バカみたい……でも、うれしい」
やわらかな午後の光が、ふたりの間に静かに流れていた。
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