居候は厨二病。

Musk.

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厨二病、告白される。

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あれから。俺達は何も変わりなく過ごしていた。

なんでだろう…変わらなくて良かったと安心する一方、変わらなかったという落胆の気持ちも感じられた。

なんでだ?俺は変わって欲しかった?どんなふうに?

俺は未だに悶々とこの得体の知れない気持ちに悩んでいた。


「あの………。」

「ん?」

屋上で1人悩んでいると突然声がかかった。振り向くと見知らぬ女子。誰だ。

「悪い、名前がわからない。誰だ。」

俺が聞くと女の子は恥ずかしそうに下を向くと口を開いた。

「…私、柳井みゆって言います。アレクくんの隣のクラスの。」

「そうか柳井か。俺になんか用か?」

「………あの…私アレクくんの事が好きです!付き合ってください!」

!? 突然の告白にびっくりした。だって俺この子と喋った事ないぞ?

「悪いが…付き合えない。すまないな…。」

「……………佐々木さんがいるから?」

「え?まどか?」

柳井を見ると涙目だが怒りが篭った目をしていた。この目――あの子に似ているな。前にまどかを体育倉庫に呼び出した子に。

「いや、まどかは関係ない。」

「だったらなんで――!」

「俺、婚約者がいるんだ。」

俺がそう告げると彼女は呆然としていた。

「婚約者?えっ佐々木さんじゃなくて?」

「ああ、国に帰ったらその子と結婚する。だから柳井とは付き合えない。」

俺の言葉に柳井はフラフラとしながら屋上から出ていった。



「ねぇ知ってる?アレクくんって婚約者が居るんだって。」

「聞いた!違うクラスの子が告ったら言われたんでしょ?」

「婚約者って佐々木さんの事じゃないんでしょ?」

「えっ……じゃぁさ、佐々木さんって…ただの同居人?」

至る所から聞こえる噂話。嫌だな、だから言ったじゃない。私彼女でも何でもないって。………私言ったじゃない…。

「帰ろう、まどか。」

いつものようにクリスと帰る。ああ、まただ。噂されてる。

「今日夕飯どうしよ…「まどか!!」

いきなり花梨に腕を掴まれた。

「花梨?どうしたの部活は?」

「今日おやすみ!アレクくん悪いけどまどか貸してくれない?」

突然の事に私もクリスもびっくりしたけど、ああ、とクリスは言った。

「ありがとう。まどかごめんちょっと時間ちょうだい。」

花梨はそう言うと近くの公園まで私を引っ張って行った。

「花梨どうしたの?何かあったの?」

私の声に花梨はピタッと足を止めて向き直った。

「ごめんね、ちょっと聞きたくて。アレクくんに婚約者がいるって本当?まどかは知ってたの?」

「あっうん。クリスから聞いた事ある。周りが決めた事だから気にしてないって言ってたけど国に帰ったら結婚するって言ってたんでしょ?やっぱりちゃんとした婚約者だったんだねぇ。」

「そんな呑気に……!まどかはいいの!?」

「いいって何が?嫌だなぁ私はクリスの彼女でも何でもないよ?ただの同居人だよ?」

「ただの同居人……?何言ってるの…だったらなんで泣いてんの!」

「えっ………?」

あれ?無意識に。涙がポロポロと落ちていた。泣いていると気付いたら涙が止まらなかった。

「うう……なんでだ涙が止まらないよ。」

「好きなんだね…アレクくんが。」

好き?私がクリスを?

「好きなの?…私クリスの事が?」

「はぁ?だから泣いてるんでしょ!婚約者がいるって現実突きつけられて辛かったんでしょ?」

そうか、私クリスが好きだったのか。嫌だなぁ恋愛に疎いから気付かなかったよ。クリスの言葉に物凄く幸せ感じたり、物凄く辛くなったりしてたのは………好きだったからか。

………でもクリスは…この世界の人じゃない。いつか帰ってしまう人。だから――。

「うん、私他の人を好きになる!」

「ええ!?なんでそうなるの!?」

花梨が意味わかんないって私を揺さぶった。

「花梨、クリスは学校卒業したら国に帰っちゃうの。いや、もしかしたら卒業する前に帰っちゃうかもしれない。」

「だったら国際結婚でもすればいいじゃない!!」

「国際結婚なんて出来ないよ。私は日本を離れたくないし…クリスだって国を離れたくないから婚約者と結婚するって言ったんでしょ?」

「それは………。」

「花梨、私はクリスとはいい思い出にしたい、ただそれだけなんだ。」

「まどか…………。分かった。」

花梨は私を抱きしめてくれた。ありがとう花梨。



「ただいまー。」

「おかえりまどか!ちょっと話がある!」

家に着くなり今度はクリスに部屋に連れてかれた。なんだ今日は忙しい。

「どうしたのクリス?」

「すまなかった!!」

突然の謝罪に私はびっくりした。何が!?

「さっき花梨から婚約者がいるならまどかにちょっかい出すなとメールが来た。………俺、婚約者なんてどうでもいいんだ。」

「え?どういう………。」

「告白された時まどかの事聞かれたんだ。その時また、まどかを傷つけてしまうと思って婚約者の名前を出した。それだけなんだ。」

えっなんだそうなの?私のことを心配して……。

「じゃぁ国に帰ったら結婚するってのも……。」

「しない。言っただろ?周りが勝手に決めたって。花梨にもそう言ったら紛らわしい!と怒られた。」

なんだそっか。…そういうことだったのか。

「まどかを傷付けたなら悪かった。謝る。」

「いや、大丈夫だよ。むしろ守ってくれてありがとう。」

私がそう言うとクリスは安心したように笑った。


夜スマホを見ると花梨からメールが来ていた。

【良かったね、国際結婚応援してる!】

ありがとう花梨。
でもクリスとは国際結婚なんて出来ないよ。だって違う世界の人だもん。
私は気付いてしまった自分の気持ちを封印することにした。いつかクリスとの事はいい思い出として話せるように。
その時が来るまで、この気持ちは封印しよう。私はそう心に決めたのだった。


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