35 / 45
厨二病、自国に帰る。
しおりを挟む
「ああ!!クリス……クリス!!」
俺は泣きじゃくる母親に強く抱きしめられていた。
「……意外だな。あなたがそこまで俺に固執していたなんて。」
「何を言うの!!クリス……あなたも私達の大事な子供よ…!」
「………よく帰ってきたな…。おかえりクリス。」
父親も俺を強く抱きしめた。親はなんだかんだ言って子供が心配なんだ……王様の声が頭に響いた。
何故だ。……何故今更俺は戻されたんだ。
まどかに思いを伝えようとした。好きだ、ずっと一緒にいよう。そう言おうとした時だった。
「くそっ!」
俺は自分の部屋の壁を殴った。
まどかは今何をしているんだろうか。いきなり1人にされて泣いているのではないか。まどかは………「クリス?」
突然部屋のドアがノックされた。母さんだ。
「どうした母さん。」
「団長さんが迎えに来ているわよ?」
団長?俺が下に降りて行くと団長は嬉しそうに言った。
「クリス!!飲みに行くぞ!!」
「「「きゃー!クリス様ー!!」」」
俺はもみくちゃにされていた。
「ちょ、やめてくれ服が破ける。」
「服?クリス様不思議な服を着ているわね?」
「ああん、どのクリス様も素敵よぉ!!」
だから破けると言ってるだろう!俺はしがみついてくるお姉さん達を1人ずつ剥がした。
「ははは、相変わらずだなクリス。お前が居なくなって大変だったんだぞ。」
団長はビールを飲みながら笑っていた。俺はウイスキーを飲んでいる。
「特にレイラちゃんは……心配で食事もろくに取れなかったみたいだ。」
そう言えばレイラ…痩せていたな。…………悪かったなレイラ…。
「まぁ結果良ければ全てよし、だな。ところでお前が飛ばされたニホンと言うのはどういう所なんだ?話せ。」
団長の言葉に私も聞きたい!と剥がしたお姉さん達がまた集まってきた。だから引っ付くなと言ってるだろう。
「日本はフリスコードとは全く違う世界だった。乗り物や食文化はもちろん、魔法が無いのに驚いた。」
俺がそう言うと皆驚いた顔をした。
「魔法が無い!?魔物が襲ってきたらどうするんだ!?」
「いや、生活だってどうするの?お湯も沸かせられないじゃない。」
「日本には魔物は居ない。魔法の代わりに電気やガスがあるからな。生活にも困らないよ。」
「デンキ?ガス……?それを使って生活するのか?ってか魔物が居ないって随分平和だなぁ。」
「ああ、とっても平和だ。剣が無くても何も困らないほど平和だ。」
皆は信じられない!!と青ざめていた。
「………しかしそんな世界ではお前は浮いた存在だっただろ?」
「………ああ。」
俺は厨二病と呼ばれていた事を思い出した。
「おい、青筋立ってるが大丈夫か?……まぁ良かったよ戻ってこれて。お互いのためにやっぱり自分の世界が1番だよな。」
「お互いのため……?」
「ニホンでお前がどんな生活してたのが知らんが…やっぱり世話になったやつが居たんだろ?まだ子供とは言え男1人の世話をするのは大変だ。向こうも荷が降りてホッとしてるんじゃないのか?」
………そうなのか?俺は一緒に出掛けた時のまどかを思い出していた。いろんな物に興味を示す俺にまどかは困ったように笑っていた。…………迷惑だったのか?
俺は学校に行かせてくれた向こうの両親の顔を思い出していた。お母さんは頑張るから大丈夫、と言ってくれて居たが…やっぱり金銭的に大変だったのか?…………俺はお荷物だったのか?
団長が何か言っていたが俺の頭には入ってこなかった。
「…………ただいま…。」
「あら、早かったわね…ってまどか!?どうしたの真っ青…。」
「お母さん……クリスが…………。」
「クリスちゃん?あら?クリスちゃんどうしたの?」
喧嘩でもしたの?と私の頭を撫でるお母さんに私は震えた声で言った。
「………お母さん…クリスが…………クリスが帰っちゃった……。」
私達はいつもの様にテーブルで集まっていた。……いや、クリスがいないから3人だけで―――。
「そうか…クリスくんは帰ったのか…。」
お父さんが悲しそうに呟いた。
「………いや、これで良かったのかも知れない。クリスくんはずっと帰りたいと言っていたし…あまりに長く居すぎてこちらの世界に未練が出来てしまっては可哀想だしな。」
そうだ……そうだよね。クリスは自分の世界に戻ることが出来て良かったじゃない。……未練?クリスは未練が無かったの?あの時団業より私が大切って言ってくれたけど…………あれは嘘だったのかな?クリスはもう、私達の事は気に留めてないのかな?
良い子の私と悪い子の私が頭をぐるぐる回っていて考えがまとまらない。クリスおめでとうと満面の笑みを浮かべる良い子の私と、クリス行かないでと泣いている悪い子の私。
「………まどか?大丈夫……?」
「えっ!?あっうん!大丈夫だよ!」
お母さんに突然声かけられて私はつい大きな声を出してしまった。
「お父さんの言う通り!!無事に帰れたんだしハッピーエンドだね!!」
「………まどか………。」
「あっでもお母さん学校どうしよう!あれかな?国に帰ることになりましたって言えばいいのかな?」
クリスはモテるから女の子達悲鳴あげそう……私がそう言うとお母さんは真面目な顔で言った。
「学校は辞めさせません。学校側には国のお母さんの具合が悪くなったから少しだけ国に帰ってると説明します!」
「「えっ……ええー!!」」
お母さんの決断に私達は驚いた。だってそんな!
「お母さん!?学校だってタダじゃないんだよ!?」
「分かっています!でもクリスちゃんが戻ってきて学校に居場所が無くなってたら可哀想でしょ?」
「お母さん…?クリスが戻ってくるって………。」
「まどか、クリスちゃんは優しい、いい子よ?………私達に挨拶も無しに帰る子じゃないわ。」
「……………しかしお母さん、クリスくんは……。」
「お父さん、半年待って貰えませんか?半年待って帰ってこなかったら…クリスちゃんを辞めさせます。」
お父さんは少し考えた後、分かった…と静かに呟いた。
本当?クリスは帰ってくるの?さようならって…挨拶をしに来てくれるの?……さようならって言われれば、悪い子の私も納得するのかな?
私は黙って自分の部屋へと入って行った―――。
俺は泣きじゃくる母親に強く抱きしめられていた。
「……意外だな。あなたがそこまで俺に固執していたなんて。」
「何を言うの!!クリス……あなたも私達の大事な子供よ…!」
「………よく帰ってきたな…。おかえりクリス。」
父親も俺を強く抱きしめた。親はなんだかんだ言って子供が心配なんだ……王様の声が頭に響いた。
何故だ。……何故今更俺は戻されたんだ。
まどかに思いを伝えようとした。好きだ、ずっと一緒にいよう。そう言おうとした時だった。
「くそっ!」
俺は自分の部屋の壁を殴った。
まどかは今何をしているんだろうか。いきなり1人にされて泣いているのではないか。まどかは………「クリス?」
突然部屋のドアがノックされた。母さんだ。
「どうした母さん。」
「団長さんが迎えに来ているわよ?」
団長?俺が下に降りて行くと団長は嬉しそうに言った。
「クリス!!飲みに行くぞ!!」
「「「きゃー!クリス様ー!!」」」
俺はもみくちゃにされていた。
「ちょ、やめてくれ服が破ける。」
「服?クリス様不思議な服を着ているわね?」
「ああん、どのクリス様も素敵よぉ!!」
だから破けると言ってるだろう!俺はしがみついてくるお姉さん達を1人ずつ剥がした。
「ははは、相変わらずだなクリス。お前が居なくなって大変だったんだぞ。」
団長はビールを飲みながら笑っていた。俺はウイスキーを飲んでいる。
「特にレイラちゃんは……心配で食事もろくに取れなかったみたいだ。」
そう言えばレイラ…痩せていたな。…………悪かったなレイラ…。
「まぁ結果良ければ全てよし、だな。ところでお前が飛ばされたニホンと言うのはどういう所なんだ?話せ。」
団長の言葉に私も聞きたい!と剥がしたお姉さん達がまた集まってきた。だから引っ付くなと言ってるだろう。
「日本はフリスコードとは全く違う世界だった。乗り物や食文化はもちろん、魔法が無いのに驚いた。」
俺がそう言うと皆驚いた顔をした。
「魔法が無い!?魔物が襲ってきたらどうするんだ!?」
「いや、生活だってどうするの?お湯も沸かせられないじゃない。」
「日本には魔物は居ない。魔法の代わりに電気やガスがあるからな。生活にも困らないよ。」
「デンキ?ガス……?それを使って生活するのか?ってか魔物が居ないって随分平和だなぁ。」
「ああ、とっても平和だ。剣が無くても何も困らないほど平和だ。」
皆は信じられない!!と青ざめていた。
「………しかしそんな世界ではお前は浮いた存在だっただろ?」
「………ああ。」
俺は厨二病と呼ばれていた事を思い出した。
「おい、青筋立ってるが大丈夫か?……まぁ良かったよ戻ってこれて。お互いのためにやっぱり自分の世界が1番だよな。」
「お互いのため……?」
「ニホンでお前がどんな生活してたのが知らんが…やっぱり世話になったやつが居たんだろ?まだ子供とは言え男1人の世話をするのは大変だ。向こうも荷が降りてホッとしてるんじゃないのか?」
………そうなのか?俺は一緒に出掛けた時のまどかを思い出していた。いろんな物に興味を示す俺にまどかは困ったように笑っていた。…………迷惑だったのか?
俺は学校に行かせてくれた向こうの両親の顔を思い出していた。お母さんは頑張るから大丈夫、と言ってくれて居たが…やっぱり金銭的に大変だったのか?…………俺はお荷物だったのか?
団長が何か言っていたが俺の頭には入ってこなかった。
「…………ただいま…。」
「あら、早かったわね…ってまどか!?どうしたの真っ青…。」
「お母さん……クリスが…………。」
「クリスちゃん?あら?クリスちゃんどうしたの?」
喧嘩でもしたの?と私の頭を撫でるお母さんに私は震えた声で言った。
「………お母さん…クリスが…………クリスが帰っちゃった……。」
私達はいつもの様にテーブルで集まっていた。……いや、クリスがいないから3人だけで―――。
「そうか…クリスくんは帰ったのか…。」
お父さんが悲しそうに呟いた。
「………いや、これで良かったのかも知れない。クリスくんはずっと帰りたいと言っていたし…あまりに長く居すぎてこちらの世界に未練が出来てしまっては可哀想だしな。」
そうだ……そうだよね。クリスは自分の世界に戻ることが出来て良かったじゃない。……未練?クリスは未練が無かったの?あの時団業より私が大切って言ってくれたけど…………あれは嘘だったのかな?クリスはもう、私達の事は気に留めてないのかな?
良い子の私と悪い子の私が頭をぐるぐる回っていて考えがまとまらない。クリスおめでとうと満面の笑みを浮かべる良い子の私と、クリス行かないでと泣いている悪い子の私。
「………まどか?大丈夫……?」
「えっ!?あっうん!大丈夫だよ!」
お母さんに突然声かけられて私はつい大きな声を出してしまった。
「お父さんの言う通り!!無事に帰れたんだしハッピーエンドだね!!」
「………まどか………。」
「あっでもお母さん学校どうしよう!あれかな?国に帰ることになりましたって言えばいいのかな?」
クリスはモテるから女の子達悲鳴あげそう……私がそう言うとお母さんは真面目な顔で言った。
「学校は辞めさせません。学校側には国のお母さんの具合が悪くなったから少しだけ国に帰ってると説明します!」
「「えっ……ええー!!」」
お母さんの決断に私達は驚いた。だってそんな!
「お母さん!?学校だってタダじゃないんだよ!?」
「分かっています!でもクリスちゃんが戻ってきて学校に居場所が無くなってたら可哀想でしょ?」
「お母さん…?クリスが戻ってくるって………。」
「まどか、クリスちゃんは優しい、いい子よ?………私達に挨拶も無しに帰る子じゃないわ。」
「……………しかしお母さん、クリスくんは……。」
「お父さん、半年待って貰えませんか?半年待って帰ってこなかったら…クリスちゃんを辞めさせます。」
お父さんは少し考えた後、分かった…と静かに呟いた。
本当?クリスは帰ってくるの?さようならって…挨拶をしに来てくれるの?……さようならって言われれば、悪い子の私も納得するのかな?
私は黙って自分の部屋へと入って行った―――。
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜
来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。
望んでいたわけじゃない。
けれど、逃げられなかった。
生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。
親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。
無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。
それでも――彼だけは違った。
優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。
形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。
これは束縛? それとも、本当の愛?
穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。
※この物語はフィクションです。
登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。
子供にしかモテない私が異世界転移したら、子連れイケメンに囲まれて逆ハーレム始まりました
もちもちのごはん
恋愛
地味で恋愛経験ゼロの29歳OL・春野こはるは、なぜか子供にだけ異常に懐かれる特異体質。ある日突然異世界に転移した彼女は、育児に手を焼くイケメンシングルファザーたちと出会う。泣き虫姫や暴れん坊、野生児たちに「おねえしゃん大好き!!」とモテモテなこはるに、彼らのパパたちも次第に惹かれはじめて……!? 逆ハーレム? ざまぁ? そんなの知らない!私はただ、子供たちと平和に暮らしたいだけなのに――!
【12月末日公開終了】有能女官の赴任先は辺境伯領
たぬきち25番
恋愛
辺境伯領の当主が他界。代わりに領主になったのは元騎士団の隊長ギルベルト(26)
ずっと騎士団に在籍して領のことなど右も左もわからない。
そのため新しい辺境伯様は帳簿も書類も不備ばかり。しかも辺境伯領は王国の端なので修正も大変。
そこで仕事を終わらせるために、腕っぷしに定評のあるギリギリ貴族の男爵出身の女官ライラ(18)が辺境伯領に出向くことになった。
だがそこでライラを待っていたのは、元騎士とは思えないほどつかみどころのない辺境伯様と、前辺境伯夫妻の忘れ形見の3人のこどもたち(14歳男子、9歳男子、6歳女子)だった。
仕事のわからない辺境伯を助けながら、こどもたちの生活を助けたり、魔物を倒したり!?
そしていつしか、ライラと辺境伯やこどもたちとの関係が変わっていく……
※お待たせしました。
※他サイト様にも掲載中
次期国王様の寵愛を受けるいじめられっこの私と没落していくいじめっこの貴族令嬢
さら
恋愛
名門公爵家の娘・レティシアは、幼い頃から“地味で鈍くさい”と同級生たちに嘲られ、社交界では笑い者にされてきた。中でも、侯爵令嬢セリーヌによる陰湿ないじめは日常茶飯事。誰も彼女を助けず、婚約の話も破談となり、レティシアは「無能な令嬢」として居場所を失っていく。
しかし、そんな彼女に運命の転機が訪れた。
王立学園での舞踏会の夜、次期国王アレクシス殿下が突然、レティシアの手を取り――「君が、私の隣にふさわしい」と告げたのだ。
戸惑う彼女をよそに、殿下は一途な想いを示し続け、やがてレティシアは“王妃教育”を受けながら、自らの力で未来を切り開いていく。いじめられっこだった少女は、人々の声に耳を傾け、改革を導く“知恵ある王妃”へと成長していくのだった。
一方、他人を見下し続けてきたセリーヌは、過去の行いが明るみに出て家の地位を失い、婚約者にも見放されて没落していく――。
最愛の番に殺された獣王妃
望月 或
恋愛
目の前には、最愛の人の憎しみと怒りに満ちた黄金色の瞳。
彼のすぐ後ろには、私の姿をした聖女が怯えた表情で口元に両手を当てこちらを見ている。
手で隠しているけれど、その唇が堪え切れず嘲笑っている事を私は知っている。
聖女の姿となった私の左胸を貫いた彼の愛剣が、ゆっくりと引き抜かれる。
哀しみと失意と諦めの中、私の身体は床に崩れ落ちて――
突然彼から放たれた、狂気と絶望が入り混じった慟哭を聞きながら、私の思考は止まり、意識は閉ざされ永遠の眠りについた――はずだったのだけれど……?
「憐れなアンタに“選択”を与える。このままあの世に逝くか、別の“誰か”になって新たな人生を歩むか」
謎の人物の言葉に、私が選択したのは――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる