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7.上下スーツの女性
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「そう、この事は前の…前回この世界に来た時に堂島先生が言ってた事なんですけど…」
陸はそう前置きをしたあと
「この世界は……というよりここ以外にも世界はいくつも存在していて同じ場所に重なって存在していると…言ってました。それを監視者、もしくは観測者が認知するとそれが正とされる。ってな感じで。難しすぎてあんまり良くわかって無いんですけど…」
「なるほど、俺が考えそうな事だな。…量子論…または量子力学。観測者……か。光の粒子と波動。同じ場所に重なって存在する……平行世界……シュレーディンガーの猫……か。興味深い…」
そう言って堂島は笑みを浮かべる。
そして外で皆んなを待たせてる為、あまり時間は無かったが平行世界についても少し説明してくれた。
バスから最後に陸と堂島が降りて来た。
それまで思い思いに近くにいる者同士で会話をしていた生徒たちが一斉に堂島に注目して静かになった。
「先生!ここって何処なんですか?」
生徒の1人が質問をする。
「ここは巨人世界という日本とは違う世界らしい」
何で巨人世界って知ってるんだろう?と言ってる生徒もいる。
当然だ。
だが堂島はその事には触れずにいた。
「ここって地球なんですか?」
「それもわからん…ただ、日本では無いのは間違いない。そして俺たちのいた地球では無い可能性も高い」
「日本には…元の世界には帰れるんですか?」
「ああ、何としても帰ろう」
そう言って堂島は生徒たちの顔を見回した。
さっき陸は堂島と2人でバスの車内に残り話をした内容。
陸がこの世界に来るのが2度目だと言うことは、あの場にいたごく一部の人間。
月斗、南、天道、そして運転席にいた三原以外には伝えずにしておく事にした。
この様な状況下で情報共有は当然大事だが下手に説明をしてもすぐに納得のいくようなものではない。
それに余計な混乱を避ける為にあえてこの事実を伝えない事にした。
しばらくの沈黙のあと、スッと赤いクーペの女性が手を上げて立ち上がり
「まずは自己紹介をさせて。こんな状況なのでお互いの事を知っておく必要があると思うの!」
そう言うと
「私は橘 妃音。年は22歳…」
と自己紹介を始めた。
それに対してこの中で陸を含む3人がそれぞれ反応をする。
1年のミクニと2年のミコトだった。
陸は前回、妃音がみんなに見せた光の玉の魔法を披露しない事と彼女の雰囲気が違うという印象を受けた。それに彼女の告げた年齢も気になったが堂島との会話から同じ人間でも元いた人物とは辿ったルートの違いから性格も多少変わると言う話を聞いてある程度納得はしていた。
だがミクニとミコトはそれとはまた違い妃音の言葉に対して2人は似た反応をしていた。
ミクニの視線が妃音に向けられるが彼女は意に介さない様に派手な赤いニット調のタイトなワンピースから白い太ももをあらわにその場座り込む。
妃音の自己紹介が終わり堂島が立ち上がる。
「堂島 海里32歳、応徳学園高等部で物理教師とハンドボール部の顧問をしている」
陸は堂島の自己紹介中にも次に自己紹介する人物が気になっていた。
「妻と子供が2人いる…」
「⁈?!!!」
陸は堂島の口から出た言葉に驚いて咄嗟に月斗に目を向ける…が月斗は無反応だった。
どうやらこっちの堂島先生は妖精では無いらしい…。
驚きのあまり陸が唖然としてると次の人物の自己紹介が始まっていた。
「……です。25歳。今月から臨時講師として応徳学園高等部に赴任して来てハンドボール部の副顧問をしています」
淡々とそれだけ伝えると彼女は元の場所へ戻る。
名前を聞き逃した……何か、名前を連呼してた様な…?
彼女は年相応とは言い難いどこか落ち着いた雰囲気はカチッと着こなされた上下のスーツのせいだろうか?
およそ合宿に参加するには程遠い服装にも思える。
やはり前回とメンバーが随分と違う。
焦りにも似た感情を陸が抱いていると自分の番が回って来た。
この自己紹介の場で自分がこの世界に訪れるのが2回目で、※2 魔法の事を皆んなに伝えるか?
悩んだ末…
「本庄 陸17歳…」
年齢を言った時、陸から向かって斜め前にいた1年のミクニと目が合った。
その目は何かを見透かされているかの様な強い眼差し…。
陸は背中にじんわりと汗が流れるのを感じながら自己紹介を終え元の場所に戻った。
陽は完全に落ち、バスのヘッドライトがその場にいる全員を照らしていた。
陸はそう前置きをしたあと
「この世界は……というよりここ以外にも世界はいくつも存在していて同じ場所に重なって存在していると…言ってました。それを監視者、もしくは観測者が認知するとそれが正とされる。ってな感じで。難しすぎてあんまり良くわかって無いんですけど…」
「なるほど、俺が考えそうな事だな。…量子論…または量子力学。観測者……か。光の粒子と波動。同じ場所に重なって存在する……平行世界……シュレーディンガーの猫……か。興味深い…」
そう言って堂島は笑みを浮かべる。
そして外で皆んなを待たせてる為、あまり時間は無かったが平行世界についても少し説明してくれた。
バスから最後に陸と堂島が降りて来た。
それまで思い思いに近くにいる者同士で会話をしていた生徒たちが一斉に堂島に注目して静かになった。
「先生!ここって何処なんですか?」
生徒の1人が質問をする。
「ここは巨人世界という日本とは違う世界らしい」
何で巨人世界って知ってるんだろう?と言ってる生徒もいる。
当然だ。
だが堂島はその事には触れずにいた。
「ここって地球なんですか?」
「それもわからん…ただ、日本では無いのは間違いない。そして俺たちのいた地球では無い可能性も高い」
「日本には…元の世界には帰れるんですか?」
「ああ、何としても帰ろう」
そう言って堂島は生徒たちの顔を見回した。
さっき陸は堂島と2人でバスの車内に残り話をした内容。
陸がこの世界に来るのが2度目だと言うことは、あの場にいたごく一部の人間。
月斗、南、天道、そして運転席にいた三原以外には伝えずにしておく事にした。
この様な状況下で情報共有は当然大事だが下手に説明をしてもすぐに納得のいくようなものではない。
それに余計な混乱を避ける為にあえてこの事実を伝えない事にした。
しばらくの沈黙のあと、スッと赤いクーペの女性が手を上げて立ち上がり
「まずは自己紹介をさせて。こんな状況なのでお互いの事を知っておく必要があると思うの!」
そう言うと
「私は橘 妃音。年は22歳…」
と自己紹介を始めた。
それに対してこの中で陸を含む3人がそれぞれ反応をする。
1年のミクニと2年のミコトだった。
陸は前回、妃音がみんなに見せた光の玉の魔法を披露しない事と彼女の雰囲気が違うという印象を受けた。それに彼女の告げた年齢も気になったが堂島との会話から同じ人間でも元いた人物とは辿ったルートの違いから性格も多少変わると言う話を聞いてある程度納得はしていた。
だがミクニとミコトはそれとはまた違い妃音の言葉に対して2人は似た反応をしていた。
ミクニの視線が妃音に向けられるが彼女は意に介さない様に派手な赤いニット調のタイトなワンピースから白い太ももをあらわにその場座り込む。
妃音の自己紹介が終わり堂島が立ち上がる。
「堂島 海里32歳、応徳学園高等部で物理教師とハンドボール部の顧問をしている」
陸は堂島の自己紹介中にも次に自己紹介する人物が気になっていた。
「妻と子供が2人いる…」
「⁈?!!!」
陸は堂島の口から出た言葉に驚いて咄嗟に月斗に目を向ける…が月斗は無反応だった。
どうやらこっちの堂島先生は妖精では無いらしい…。
驚きのあまり陸が唖然としてると次の人物の自己紹介が始まっていた。
「……です。25歳。今月から臨時講師として応徳学園高等部に赴任して来てハンドボール部の副顧問をしています」
淡々とそれだけ伝えると彼女は元の場所へ戻る。
名前を聞き逃した……何か、名前を連呼してた様な…?
彼女は年相応とは言い難いどこか落ち着いた雰囲気はカチッと着こなされた上下のスーツのせいだろうか?
およそ合宿に参加するには程遠い服装にも思える。
やはり前回とメンバーが随分と違う。
焦りにも似た感情を陸が抱いていると自分の番が回って来た。
この自己紹介の場で自分がこの世界に訪れるのが2回目で、※2 魔法の事を皆んなに伝えるか?
悩んだ末…
「本庄 陸17歳…」
年齢を言った時、陸から向かって斜め前にいた1年のミクニと目が合った。
その目は何かを見透かされているかの様な強い眼差し…。
陸は背中にじんわりと汗が流れるのを感じながら自己紹介を終え元の場所に戻った。
陽は完全に落ち、バスのヘッドライトがその場にいる全員を照らしていた。
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