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序章〜観測者
6.Magic principal (魔法の原理) 挿絵あり
しおりを挟むバスが西宮を出発してから約4時間ほどが過ぎていた。
そしてこの世界に着いてからも2時間以上が経過している事になる。
朝食を食べたのが6:40だったのでお腹が減るのも当たり前か…と月斗は思っていた。
予定では10時には寺に到着して境内で軽く運動をしてから昼ごはんのはずだったので、皆おにぎりやらお弁当やらの類のものは持っていなかった。
堂島がお腹が空くだろうと気を利かせてマネージャーの2人に用意させたパンとお菓子で、妃音や運転手を含めた全員がお腹の足しにした。
太陽が沈んで元の世界で見るよりも灰色がかった月が地平線のほんの少し上に浮かんでる。
こんなにも真っ暗な夜空に星一つみえないのは雲が夜空を覆い尽くしているせいだろうか?月斗は不思議な違和感を感じながらも目の前の現実を受け入れる事にした。
「でもそもそもこの魔法と名前の共通点てどうなってるんだ?」
月斗が誰に聞くでもなく呟く。
「この世界にも神様がいて、俺らの事を見ていて、コイツこの名前だからこの魔法な!みたいな?」それに陸が答える。
「いやいや、この世界にも神様が居て!ってところ自体、元の世界にも居たみたいだろ?神様なんて居ないのに!」
「何だと?神様なんて居ないとでも言うのか?」千里だった。
「まぁ現実の世界の事はおいといて異世界って神様の数が少ない割に身近にいたりもするみたいですけどね!」「身近に?」そんな食いつく?千里!
「そんなマメなことはしないでしょうね!」
1年の梶が答えた。
「日本みたいに八百万もいたりしないの?」
「居ませんよ!きっと!精霊=神様みたいな概念もあるみたいですよ!」
「梶ぃ!お前詳しいな!」
「ええ、僕は異世界モノ好きなので!そんでもって異世界に来た人間は、大体チーターなんですよ!」「チーター?異世界モノ?」
「ええ、すごい能力値が高くて無双するんです!」
「チーターが?」
「………いえ、その発音だと大御所演歌歌手みたいになりますんで!」
梶が月斗のイントネーションに突っ込んだ。
「正しくはチーターです」
「その能力ってどうやってわかんの?」
「大体は目の前に自分のステータス画面が表示されたり、ギルドや教会なんかで能力値を測ってもらうんです。」
「ギルドって?」
「商人なら商人ギルド、手工業なら手工業ギルド、ここでは、冒険者ギルドの事ですね。いわゆる組合?みたいなものですかね。」
「へぇー冒険者ギルドってのがあるのか!」
「じゃあさ。みんなに魔法の事も教えといてくれよ」
「そうですね、異世界が舞台のアニメやゲームだと皆さんご存知の様に、火、水、風、土、雷といった攻撃魔法や、怪我を治したり、死者を蘇らせる魔法なんかもあります」
「おお!」
「ぼくが思うのは自分で頭の中か、無意識に自分の名前と自分自身の魔法を思い浮かべてるんじゃないか?とおもってます」
「うーん、でも俺が火の玉出したときは、妃音さんの光をイメージしてたし、自分のことや名前なんて思い浮かべもしなかった!」
「私、あの時、月斗を見てて火の玉とか出そう!って思ってたかも…」
マネージャーの南 千里がそう言いながら月斗の方をみた。
「ぼくも…月斗先輩って赤!ってイメージだから一瞬、炎が頭に浮かびました」
1年の梶がそう言う。
「そういえば俺、陸の足元がちょっとだけ盛り上がったら面白いなぁって思ったかも!」(どんなイメージ?)
「カイちゃんの指先は水鉄砲って思っちゃってた!」(それもどんなイメージ?)
「これって、自分が思い描くイメージじゃなくて他人から見たイメージが影響してるんじゃないか?」
陸が髪を整えながらそう言う。
「じゃあ、何で妃音さんは最初にあんな事が出来たんだろう?」
「多分それもイメージなんだと思います。日本人なら小さい頃から慣れ親しんだアニメの主人公が技を放つときのポーズ」
「か~め~は~……」
「いけません太さん!それ以上は!」
1年の梶に2年の太子橋が制される。
「なるほど、何となくだけどこの世界のルールがわかって来たな」
梶の説明に月斗は頷きながら
「じゃあさ、誰からもイメージされない1人きりの時って魔法は発動しないのかな?」
「そうなるんじゃないかな?」
陸がそれに応え
「試してみる必要があるな!」
顧問の堂島が「もちろんそれ以前に単独行動は避けるべきだが…」と皆に伝える。
「先生、俺トイレ行きたいんですけど。」
「おう、トイレなんて無いからそこらでしろ!1人じゃ危ないから連れションでもしてこい!」
堂島にそう言われ月斗達が連れ立って行く。
「あの…私たちも…」マネージャーの女子2人だった。
「あ…ああ。お前たちも1人では危険だから、なんだ…その…バスの向こう側の陰でするしか…ないか…」
そう言われ、恥ずかしそうに南 千里と天道京華が橘妃音を誘って向かう。
「トイレが無いなんてありえなく無いですか?」
天道京華が2人に話しだした。
この世界が一体どういうもので、これから何が起こるのかわからないがこの辺りにはトイレと呼ばる様な代物は一切無かった。
順番に1人1人交代で用を足すことにした。
「ところで京華ちゃんとやら……見守る必要ってあるのかしら?」
「もちろんですわ!妃音さんとやら……お姉さまを見守れて光栄ですわ!」
先に京華にお姉さまと呼ばれた南 千里が2人に見守られながら用を済ませた。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎
代わって赤いクーペを運転していた橘妃音の順番だ。
「何だかチェッカーフラッグみたいね……ゴォールみたいな……」
「和柄の今治制ですのよ!」
千里と京華の持つタオルで目隠しがされている。
♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢
「ほんと、てか今私たちがいるところって、巨人の髑髏の中なのよね?忘れてたけど…」
南 千里がそう言うと
「ほんと忘れてましたの…てか本物なんですかね?オブジェ的なものなんかじゃありませんの?」
「何のための?」
「客寄せパンダ的なですわ!」
「今時?パンダで人来る?」
「ものの例えですの。関東でやたらパンダの赤ちゃんがすごいニュースで騒がれてた時期があったんですけど、白浜アドベンチャーワールドだとそんなの、そんなに珍しくないですの。」
「そうなの?」
「あと、パンダ、うさぎ、コアラって歌あるじゃ無いですか!知ってました?あの3種類が実際いるのって、日本じゃ神戸の王子動物園だけなんですの!」
見た目はお高くとまってそうなお嬢様の天道京華。
実際かなりな資産家の娘で何故この学校にいるのか不思議だった。
そんな天道 京華が神戸市立の動物園のこんなウンチクを語るのも不思議だった。
「そうなんだ。」
………………………………………………………………
「もしこんな巨人に出くわしたらどうなるんだろう?」
「怖いこと言わないで下さい…」
「それこそ魔法をキチンと使える様にしないと!」
………………………………………………………………
「あースッキリしました!お姉さま方戻りましょ!」
妃音と千里が顔を見合わせる。
天道京華が2人に声を掛けてみんなが集まる場所へと向かった。
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