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序章〜観測者
11. Theory of relativity (相対性理論)
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11 Theory of relativity (相対性理論)
堂島 海里が大学で教職課程を終了し母校である応徳学園の教員試験を受けて新任教師となったのが今から10年前。
応徳学園は、西宮市と尼崎市の境を流れる武庫川沿に位置する。
中高一貫校で隣接して高校と中学校の校舎が並ぶ。設立から100周年を迎えた際に伝統的な男子校から新設学部を開設し男女共学校となった。
主に部活動では野球や陸上競技、ラグビー、バスケットボール、ハンドボールなどの特に運動部において全国的に有名で野球部は甲子園出場の常連校に名を連ねている。
堂島 海里は在校中ハンドボール部のキャプテンとして2度全国大会で優勝を果たしていて、高校卒業後も大学に通いながら後輩たちの面倒をみるなか、大学で母校の教師を目指し、応徳学園ハンドボール部のOBとしてコーチを買って出て大いに部を盛り上げた。
10年前のあの事件は堂島 海里が新任教師としてこの応徳学園に通い始めて最初の夏休みが終わり、9月に入って間もなく起こった。
2014年9月13日
阪急電車の豊津駅から徒歩10分ほどの位置に吹田山手幼稚園がある。
その日、園児たちを乗せたマイクロバスが朝のお迎えの最中に忽然と姿を消した。
連日のニュースや「消えた5人の園児たち」という雑誌の見出しでも人数がはっきりと伝えられていた。
一部週刊誌には行方不明になった園児たちの名前の記載もあった様だがプライバシーの観点や、家族への配慮不足としてその雑誌はすぐに差し止められていた。
身代金目的の誘拐事件だとか、運転手が主犯とされる宗教がらみの拉致監禁事件だとか、色々な憶測が飛び交うなか10年たった今日でも何の手掛かりもなく未解決のままだった。
当時SNSが流行しはじめ、色々な書き込みが横行していた。当たり前の日常の中、昨日と何も変わらず朝の送り出しをした園児たちがマイクロバスごと忽然と姿を消して生死がわからぬまま悪戯に時間だけが過ぎる。
教師になりたてだった堂島は親子さんや同乗していた幼稚園教員の心情を考えると胸が締め付けられる思いをした記憶があった。
ただ、今は、目の前に現れたこのマイクロバスの園児たちや教員、運転手自身にはほんの1日か2日しか経っていないのに対して、元の世界で流れた刻の重さに押しつぶされそうになる。
堂島 海里は、この世界と元の世界との繋がりについて考えを巡らした。
1つは、マイクロバスが行方不明になった10年前に我々が飛ばされて来たケース1。
このケースだと、過去と現在、未来という次元が別々に存在していてなんらかの影響で10年という年月をタイムスリップして来たことになる。
逆に10年後の元の世界が未来という次元として存在することとなるので10年後に戻れる可能性も出て来るはず…
その方法は今のところ皆目検討もつかないが…
2つ目は相対性理論の観点からこの世界が光速以上で移動している宇宙船の様なものと仮定して光に近い速度で移動している。
光速を越える、もしくはそれに近い速度で移動する乗り物の中では時間がゆっくりと進むという理論。
この世界自体が箱庭の様なもので光の速度で移動をしていると仮定するならば、中ではゆっくりと時間が進むのでそこにいる人間にとっては数分、もしくは数日であるのに対して元の世界では、目まぐるしく時間が流れるケース。
浦島太郎が竜宮城へと行き3日過ごしたのちに岸へ戻ると数百年が経っていたというケース。
浦島太郎は亀型の宇宙人に連れられて竜宮城という宇宙船に乗せられたのでは?という説もある。
3つ目としてこの世界と元の世界の時間の流れが違うというもの。
刻の流れが非常に緩やかでまるで止まっているかの様な…その場の刻を止めて周りだけが通常の刻の流れをしている。
タイムカプセルや冷凍睡眠からめざめる様なものか…
いづれにしても2.3番目のケースでは元の世界に戻る事が出来たとしても、刻の隔たりが大きくてここで過ごす時間が長ければ長いほど何10年、何百年、もしくは何千年と経過してしまう。
そうなれば我々の知っている人間がいない世界への帰還ということになる。
存在しない人間、現実世界…というか現世での死…という事か。
堂島 海里は1人無言のまま、思考を巡らしていた。
更に問題点は、1人多い…という事。
さて、この状況をどうみんなに説明するか…
説明すべきでは無いのか……?堂島 海里は頭を悩ませた。
堂島 海里が大学で教職課程を終了し母校である応徳学園の教員試験を受けて新任教師となったのが今から10年前。
応徳学園は、西宮市と尼崎市の境を流れる武庫川沿に位置する。
中高一貫校で隣接して高校と中学校の校舎が並ぶ。設立から100周年を迎えた際に伝統的な男子校から新設学部を開設し男女共学校となった。
主に部活動では野球や陸上競技、ラグビー、バスケットボール、ハンドボールなどの特に運動部において全国的に有名で野球部は甲子園出場の常連校に名を連ねている。
堂島 海里は在校中ハンドボール部のキャプテンとして2度全国大会で優勝を果たしていて、高校卒業後も大学に通いながら後輩たちの面倒をみるなか、大学で母校の教師を目指し、応徳学園ハンドボール部のOBとしてコーチを買って出て大いに部を盛り上げた。
10年前のあの事件は堂島 海里が新任教師としてこの応徳学園に通い始めて最初の夏休みが終わり、9月に入って間もなく起こった。
2014年9月13日
阪急電車の豊津駅から徒歩10分ほどの位置に吹田山手幼稚園がある。
その日、園児たちを乗せたマイクロバスが朝のお迎えの最中に忽然と姿を消した。
連日のニュースや「消えた5人の園児たち」という雑誌の見出しでも人数がはっきりと伝えられていた。
一部週刊誌には行方不明になった園児たちの名前の記載もあった様だがプライバシーの観点や、家族への配慮不足としてその雑誌はすぐに差し止められていた。
身代金目的の誘拐事件だとか、運転手が主犯とされる宗教がらみの拉致監禁事件だとか、色々な憶測が飛び交うなか10年たった今日でも何の手掛かりもなく未解決のままだった。
当時SNSが流行しはじめ、色々な書き込みが横行していた。当たり前の日常の中、昨日と何も変わらず朝の送り出しをした園児たちがマイクロバスごと忽然と姿を消して生死がわからぬまま悪戯に時間だけが過ぎる。
教師になりたてだった堂島は親子さんや同乗していた幼稚園教員の心情を考えると胸が締め付けられる思いをした記憶があった。
ただ、今は、目の前に現れたこのマイクロバスの園児たちや教員、運転手自身にはほんの1日か2日しか経っていないのに対して、元の世界で流れた刻の重さに押しつぶされそうになる。
堂島 海里は、この世界と元の世界との繋がりについて考えを巡らした。
1つは、マイクロバスが行方不明になった10年前に我々が飛ばされて来たケース1。
このケースだと、過去と現在、未来という次元が別々に存在していてなんらかの影響で10年という年月をタイムスリップして来たことになる。
逆に10年後の元の世界が未来という次元として存在することとなるので10年後に戻れる可能性も出て来るはず…
その方法は今のところ皆目検討もつかないが…
2つ目は相対性理論の観点からこの世界が光速以上で移動している宇宙船の様なものと仮定して光に近い速度で移動している。
光速を越える、もしくはそれに近い速度で移動する乗り物の中では時間がゆっくりと進むという理論。
この世界自体が箱庭の様なもので光の速度で移動をしていると仮定するならば、中ではゆっくりと時間が進むのでそこにいる人間にとっては数分、もしくは数日であるのに対して元の世界では、目まぐるしく時間が流れるケース。
浦島太郎が竜宮城へと行き3日過ごしたのちに岸へ戻ると数百年が経っていたというケース。
浦島太郎は亀型の宇宙人に連れられて竜宮城という宇宙船に乗せられたのでは?という説もある。
3つ目としてこの世界と元の世界の時間の流れが違うというもの。
刻の流れが非常に緩やかでまるで止まっているかの様な…その場の刻を止めて周りだけが通常の刻の流れをしている。
タイムカプセルや冷凍睡眠からめざめる様なものか…
いづれにしても2.3番目のケースでは元の世界に戻る事が出来たとしても、刻の隔たりが大きくてここで過ごす時間が長ければ長いほど何10年、何百年、もしくは何千年と経過してしまう。
そうなれば我々の知っている人間がいない世界への帰還ということになる。
存在しない人間、現実世界…というか現世での死…という事か。
堂島 海里は1人無言のまま、思考を巡らしていた。
更に問題点は、1人多い…という事。
さて、この状況をどうみんなに説明するか…
説明すべきでは無いのか……?堂島 海里は頭を悩ませた。
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