Re:crossWORLD 異界探訪ユミルギガース

LA note (ら のおと)

文字の大きさ
25 / 48
2章 Queen ANT (アリの女王編)

26. I want to enter if there is a hole(穴があったら入りたい)

しおりを挟む
「デっ、デカイ!」
 その場にいた誰もがそう感じた。
 扉を抜けて中へ進むと、大広間の中央に遠目から見ても巨大な生き物?が立っている。
 月斗達が乗って来たバスを縦にして約5台分はありそうだ。
 大きいと感じた部屋の入り口の扉の比では無かった。
 頭部から伸びた長い触覚とアリ特有の大顎、硬そうな外殻に4本の腕があり大きな剣を携えている。
 しっかりと硬い外殻で覆われた上半身と違い、下半身は白い肌をあらわに人間の女性の様なフォルムをしているが尾骶骨あたりからのラインはアリ特有の大きな尻の様なシルエットをしていた。

 間違いなくがアリ達の女王だろう。

 アリの女王の頭上から光が差し込む、月斗達の位置から丁度逆光の様に照らし出された本体が暗く陰を作っていた。
 明らかに他のアリ達と違うのはその大きさもだがアリ特有の黒い外殻がいかくでは無く全体的に白い。
 女王アリにはアルビノの様な特徴が見受けられた。それが更に神秘的な印象を与えている。
 案内役のアリは無言のまま一行を奥へと招き入れる。その後を月斗、堂島が並んで歩き、その後ろに本庄 陸が続く。

 全員がゆっくりと部屋へ入り終わると、後ろの大きな扉がバタンと音を立てて閉まった。
「!!!」
 大きな音に反応し月斗が振り返る。
 意に介さず案内役のアリは、尚も無言のまま奥へと進んだ。
 広場で会話してた時の雰囲気と全く違い、人型の昆虫の無機質な感じが伝わって来る。

 これが本来のの性質なのかも知れないが…

 陸に続いて南 千里と天道 京華が並んで歩く。その後ろに、幼稚園教員の泉 穂波を先頭に園児達5人が固まって歩き、マイクロバスの運転手の老人がその後に続く。
 園児達を両サイドから囲む様にバス運転手の三原と今橋、太子橋、その反対側に北浜、伏見、博労ばくろうが続き、園児達の後ろに道修どしょう、梶、淡路 駿が控えていた。
 アリの女王の正面、100mメートルほど離れた位置で、案内役のアリがピタリと足を止める。

 すると突然、円形に敷き詰められた足元の大理石の床板が光を放った!光は円形に広がり、線を描いて見慣れない文字が書き込まれていく。
 足元に魔法陣らしき物が現れ眩い光が園児達の足元を中心に広がった。
 異変に気付き月斗が後ろを振り返るとその光は一瞬で園児達とその周りにいた南 千里ちさとを含めた生徒達数人を飲み込んだ。
千里ちさと!!!」月斗は光に飲み込まれる千里に手を伸ばすが光が消え、千里達の姿が跡形も無く消えた。
「!!!!」
「うわぁぁぁー!何をした!」
 感情を露わに月斗は、案内役のアリに向かって叫ぶ。
変換器コンバーター起動!』
 案内役のアリは無感情にそう言うと脳に目の前の巨大な女王アリの思考が届く。
『邪魔物は消えて貰った!』
「何だと!」
『変換器(コンバーター)、正常に作動!』 
『貴様らがのこのこ付いて来るからだ!』
「!!コイツ!」
 月斗は女王に向かって走りだし右手に炎の球を作りだした。
 するとこれまで他のアリ達の姿は無かったが床板の大理石が光を出し魔法陣から武装したアリの衛兵達が次々と出現し月斗に向かって立ちはだかる。
 行手を阻まれた月斗の右側を素早く影が動き淡路 駿が衛兵に体当たりをして動きを止めた。
「サンキュー!駿!」
「……」月斗は勢い良く衛兵の隙間をすり抜け女王アリに向かって炎の球を投げつけた。
 炎は女王の足元に直撃し激しく燃え上がるがたちどころに勢いを失った。
「クッ!効いてない!」
『無駄だ!女王に炎は効かない!』
 案内役のアリの無感情な思考が伝わる。
 硬そうな外殻よりも脆そうな女王アリの足ですら月斗の炎は歯が立たなかった。
 月斗の額に汗がにじむ。
 月斗と陸が背中合わせになりながら周りに集まってくる衛兵達と対峙する。



 月斗は掌に火の玉を作り出すと示し合わせたかの様に陸が両手を地面に当てる。
 足元の大理石の床がめくり上がり割れた破片を月斗の炎の玉がぶつかりつぶてとなって目の前のアリの衛兵の硬い外皮を傷つける。
「効いてるぞ!」
「ああ!」
 そういって更に陸がさっきよりも勢いよく床板をめくり上げた。

 それに乗じて月斗が炎を爆発させる。その一連の攻撃にアリの衛兵達が少しずつ武器を手にして威嚇したまま後退を始める。
「オラオラオラオラーッ!」
 本庄 陸が叫びながら地面に手を
「叩くんじゃ無くて添えるのか!」
「ああ、左手は添えるだけだ!」
「………」
 掛け声と相反した動作に月斗がそう漏らしながら跳ね上げた床板を炎の玉の爆風で衛兵目掛けて飛ばす。

「のってきた!のって来た!月斗!ガンガン行くぜ!」

 陸が高揚した感じでめくれ上がった床板から覗いた土に手を添える。

 土が盛り上がり足元をすくわれた衛兵達がバランスを崩して倒れ込む。

 更に陸は勢いよく地面を盛り上げて自分達とアリの間に土の壁を作り出した。

 目の前の土の壁に阻まれてアリの衛兵達がその場で立ち止まっている中を道修 空太と淡路 駿の2人が機動力を活かして隙の出来た女王アリの元へと辿り着く。

『来るな!来るな!入って来るな!』女王アリの思考が流れて来る。
「入って来るな?どう言う事だ?」
 陸が創った土の壁の安全地帯に堂島 海里と梶 大作が合流する。
「何か弱点なのかも?」
「ああ!かも知れん!」
「それにしても何でアリ達は一気に攻め込んで来ないんでしょう?」
「確かに、あの数と武器を使えば俺たちなんかすぐにやられるはずだからな…」
 陸と月斗が連携をしアリの衛兵達を後退させて行く。
 硬そうな外殻の割にアリ達の守備が脆い。

 床板を爆風で吹き飛ばしているとはいえ統制の取れた衛兵で有れば数で優位なはず。

 にも関わらずアリ達は女王アリの元へとジリジリと後退を続けた。
 
 更に堂島 海里がアリの集団目掛けて指から塩水の水鉄砲を浴びせている。

 予想以上に地味な攻撃?にアリの衛兵達は怯んだ。
「うむ、効いてるな!」
「効いてるんですかね?」
「甘いモノに目が無いアリにしょっぱい塩水は効いてる筈だ!」
「確かに甘いものにアリは群がりますけど…だからといって甘いモノに目が無いんでしょうか?それに…しょっぱいのが苦手かどうかも怪しい!」
「梶!そう言うお前の魔法アニマは何なんだ?」
「すみません!今、この状況で何なんですけど!さっぱりわかりません!」
「なら、人の魔法アニマに対してつべこべ言うな!」
 どうやら堂島の中で魔法=アニマという呼び方が定着した様だ。
「それにしても陸先輩の土を操る能力!グングン上がってませんか?」

 陸が整えられた金髪リーゼントを振り乱しながら土を盛り上げ、大きな壁を創り群がるアリの衛兵達を女王アリの方向へと押し返して行く。

『何をやっている!奴らを近づけさせるな!』女王アリの思考が流れて来る。
『…………』アリの衛兵達は無言のまま尚も後退し続ける。

「いいぞ陸そのまま押し切れ!」
 月斗が炎の球でアリの衛兵達を威嚇しながら女王アリの方へと更に衛兵達を追いやる。
 先に女王アリの元へと辿り付いていた淡路 駿と道修 空太の姿が見える。
『辞めろ!それ以上近づけさせるな!』
 女王アリの思考からかなりの焦りを感じる。
『………』
 それに反してアリの衛兵達の動きがおかしい。まるで女王アリの元へと月斗等を誘導するかの様に後退を続け、陸が創り出した土の壁にも全く攻撃を加えようとしない。
「一気に女王アリに取り付くぞ!」堂島が皆に声を掛ける。
 アリの女王の足に取り付いていた道修 空太が堂島達に気付く。
「先生!この上に何か入り口みたいなのがあります!」
「???」
 道修 空太が女王アリの股の付近を指さした。
 硬い外殻に覆われた上半身と違いほぼ剥き出しに近い下半身が露わに見えている。

 陸が地面を盛り上げて女王アリの足元近くまで一直線に堤防の様な道を創り出す。
 巨大な女王アリとその足元に群がるアリの衛兵達は月斗達の進行を妨げる気配も無く微動だにしない。
「コイツ、動かないぞ!」
「今だ!」
   月斗達は土を盛り上げて創った堤防を駆け足で走り抜け女王アリの足元へと辿り着いた。
 その間も女王アリは手に持った巨大な剣を振り下ろす事もせず、ただただ月斗達の進行を許してしまう。

 足元に辿り着いた一行は、先に女王アリの元に着いていた道修 空太と淡路 駿と合流をして空太の指さす入り口なるものを見上げた。
「なんか、見た事無い文字ですけど…多分…「入口ココ↑」って書いてますよね?コレ…」
「ああ…見た事無い文字だが、何となく読めるな!
「入口ココ↑」って!」

 一行は女王アリの足元から真上をマジマジと眺める。 
『見るな!見るな!』
 女王アリの思考が流れて来る!
「嫌がってるな!」
 女王アリは下着を身につけて仁王立ちの様な格好でジッと立ち尽くしている。
『やめろ!やめろ!』
 女王アリの下着の様な部分に「入口ココ↑」と書かれた文字を一行が眺めていると、丁度、女王アリの股間の辺りがジンワリと何かの分泌物でも滲み出た様に濡れて来た。
『ああ!やっ…やめて…』
 女王アリの思考がなんかエロい…
「!!!」
「入って…みるか…」
「いや先生!罠かも?」
「月斗!アレを見ろ!準備は出来ている…男なら穴があったら入りたい!だ!」

 月斗の言葉を遮る様に堂島 海里が叫んだ!
 (途方も無くそれでいてこの上なく恥ずかしい穴に
 だが……この穴は入るものでは無く……いや、穴があったら入りたい!だ!)
「ええい!」月斗げっと達はその「入口」と書かれている女王アリのに飛び込んだ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2巻決定しました! 【書籍版 大ヒット御礼!オリコン18位&続刊決定!】 皆様の熱狂的な応援のおかげで、書籍版『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』が、オリコン週間ライトノベルランキング18位、そしてアルファポリス様の書店売上ランキングでトップ10入りを記録しました! 本当に、本当にありがとうございます! 皆様の応援が、最高の形で「続刊(2巻)」へと繋がりました。 市丸きすけ先生による、素晴らしい書影も必見です! 【作品紹介】 欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。 だが、その儀式に巻き込まれたのは、どこにでもいる普通のサラリーマン――白河小次郎、45歳。 彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。 【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc. その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。 欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。 気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる! 【書誌情報】 タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』 著者: よっしぃ イラスト: 市丸きすけ 先生 出版社: アルファポリス ご購入はこちらから: Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/ 楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/ 【作者より、感謝を込めて】 この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。 そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。 本当に、ありがとうございます。 【これまでの主な実績】 アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得 小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得 アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞 第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過 復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞 ファミ通文庫大賞 一次選考通過

おばさんは、ひっそり暮らしたい

波間柏
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。 たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。 さて、生きるには働かなければならない。 「仕方がない、ご飯屋にするか」 栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。 「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」 意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。 騎士サイド追加しました。2023/05/23 番外編を不定期ですが始めました。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる

あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。 でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。 でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。 その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。 そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

処理中です...