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2章 Queen ANT (アリの女王編)
27.Death Frag (死亡フラグ)
しおりを挟む「どうやら潜入に成功した様だな!」
堂島 海里が鏡の様なサングラスを、クイッとさせて自信満々に言う。
「潜入!!!!!?っていうか、何だかまんまと罠にはまった様な気分ですが…」
得意げな堂島に対し月斗が意見する。
「なぁーに気にすんなって!奥へ進むしか無いんだからよ!」と堂島が明るく答える。
月斗達一行は、アリの衛兵たちから逃れる為に道修 空太の見つけた「入口ココ↑」と書かれた女王アリのある部分から侵入を果たした。
中は真っ暗で強い酸味がかった匂いが充満している。
月斗達、一行がいる場所は横幅が約1間1.8メートルに満たないほどの大きさで壁は天井までぎっしりと細かい石を積み重ねたトンネル状をしていて丸みがある。
照明がわりに月斗が掌に炎を出して松明の様に照らしながら入り口付近からゆっくりと奥へと進んでいった。
「月斗!それって熱くないのか?」本庄 陸がその炎を見て月斗に尋ねた。
「あぁ、ホラ!」そう言って月斗は陸に炎を近づける。
「アツツツツツ!ーって、熱っ!」
「えっ!ゴメン!俺は何とも無いのになぁー」
「なるほど、どうやら自分の魔法に対する属性に耐性が備わるのかも知れんな!」
顧問の堂島は魔法をアニマと呼ぶのが気に入ってるらしい。
「後で俺の魔法も試してみるか。」そう言って堂島は自身の手を眺めた。
その間もずっと女王アリの
『やめろぉ~やめろォ~!中へ入るなぁ~!』という思考が月斗達一行に伝わって来ている。
「かなり嫌がってる様だ!このまま一気に奥まで進むぞ!」
堂島はそう言うと生徒たちと共に奥へと進んでいく。
「確かに体内!ていうか胎内に潜り込んでいればアリの衛兵達から攻撃される事もないでしょうし、それに体内から炎の魔法で攻撃すれば女王アリも倒せるかも知れませんね!」
1年の梶 大作がそう言うと
『!!!!!!いいぞ!いいぞ!そうしろ!』
体内に侵入される事を拒んでいたアリの女王の思考が月斗達一行の脳裏に伝わって来る。
「??喜んでる!罠か?体内からの攻撃を誘っているのか?」
「どういう事でしょう?」
「なるほどな月斗!ちょっと壁に炎を撃ってみろ!」
「えっ?いいんですか?大丈夫ですかね?こんな狭いとこで爆破なんてしたら…酸素が無くなったり、煙 が充満したりしてまずく無いですか?」
躊躇しながらも月斗は生き物?の体内というよりも古い坑道の様な石積みのトンネルといった壁に炎を近づける。
『ああああァ~いいぞ!いいぞ!』
「ヤバイ!喜んでるぞ!」
「………」
「そういう癖の人?って言うかアリなのかも…」
月斗はそうポツリと呟いた。
「ああ、中に進まれるのは嫌がってるのでこの先に何か弱点があるのかも知れんな!こりゃ何とかなりそうだ!」
「どうします?もう少し中へ進みますか?てかさっき壁に炎を近づけたら、壁にも矢印が書いてあるんですけど…」月斗が壁に炎を近づける。
「ホントだな…」
一行は炎に照らし出された石積みの壁に白いペンキで描かれた様な矢印をまぢまぢと眺めた。
「矢印だよな…」
「矢印です…よね…なんか、嫌がってる割にはご丁寧に誘導してるような…」
「あぁ!だが後には衛兵たちも待ち構えてるし先に進むぞ!女王アリの弱点があるはずだ!」
一行はお互いの顔を見回し、覚悟を決め、恐る恐る一歩ずつ辺りを照らす炎の光を頼りに奥へと足を進めた。
掌に炎をランタン代わりにする日向 月斗を先頭に幼馴染の本庄 陸が続く。
その後ろをハンドボール部の顧問である堂島 海里と1年の梶 大作、そして、2年の淡路 駿と道修 空太が続いて歩く。
足元は不揃いなレンガ敷きといった様な雰囲気で炎に揺られながら一行は歩きにくい道をゆっくりと進んだ。
その間も、女王アリの
『やめろぉ~、やめろぉ~』という思考は途切れる事は無かった。
時間にして10分ほど歩くと行き止まりになった。
「どうやら行き止まりの様です。」
月斗は立ち止まって振り返り皆にそう伝えた。
壁に記された矢印を元に奥へと進んだ結果、途中に分かれ道なども無かった。
堂島が炎に照らされた壁を調べると中央辺りに直径1メートル弱ほどの穴があるのを見つけた。
「よし!ここから中に入れそうだな!」
堂島は穴の周りを、手で探ってみた。
「痛っ!」
堂島が痛みを感じて手を引っ込める。
「!!!?」
「先生⁉︎大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫!かすり傷だ!」
堂島がそう言うと
『そこはやめろぉ~!やめろぉ~!』
女王アリの今まで以上に焦った様子が皆の脳裏に伝わって来た。
「決まりだ!ここから中へ入るぞ!」堂島は鏡の様なサングラスをクイッとさせながらそう言った。
「では、行ってくる!30分経っても俺が戻らなかった場合、月斗!後の事は任せた。」
「はい、でも先生!中は暗いのでそのサングラス外した方が良くないですか?」
「ふっ、そうだな!ならコレはお前が預かっておいてくれ!あと、コレもな。それは俺にとって大事な物なんだ。俺が戻るまで大事に預かっててくれよな!」
と言って堂島 海里は、サングラスと手にした竹刀を月斗に手渡した。
サングラスの下から長い睫毛と綺麗な二重の大きな目をした爽やかイケメンの表情をあらわした。
それにしても私服が残念だ。
「………」
「すみません。先生、俺が余計な事言ったばっかりに!何かフラグっぽくなってしまって!」
「心配するな!大丈夫だ!絶対に戻って来る!」
結局、全員が一度に入って奥が行き止まりだった場合、完全にアウトという判断で満場一致で言い出しっぺの堂島がトライする事となった。
狭い入り口に両腕を突っ込んだ形で堂島が穴の中へと入って行く。
月斗たちはそれを静かに見守った。
両腕を穴の入り口に入れ身体を中へと押し込んでいきゆっくりと堂島はそのアナへ侵入することに成功した。
入り口同様、中は狭く人が1人通れるかという様な穴に匍匐前進で両肘に力を入れて身体を前へと引き寄せながら進んだ。
それを何度も何度も繰り返していく。
幾分目が慣れて来た頃に堂島は少しその場で休憩をし独り言を言った。
「絶対、俺がこの世界からアイツらを元の世界に連れて帰ってやるからな…」そう呟いた後、尚も奥へと進んだ。
すると目が慣れた訳でも無く明らかに目の前が明るくなって来たのがわかった。
「やった!出口だ!」堂島(どうじま)は安堵のため息を漏らしながら、疲れた身体を突き動かし匍匐前進(ほふくぜんしん)で出口へと向かった。
「待ってろよ!みんな!」
そう言うと勢い良く狭い通路から抜けだした。
「!!!!」
堂島の頭上から何かの液体の様な物が垂れてきた。
恐る恐る額に手をやる。
ひんやりと冷たい。
額と手にはドロリとした液体が付着している。
「ん?何だ?この液体は?」
――――――――――――――――――――――――
堂島 海里が穴の中に入ってから、間もなく30分が経とうとしていた。
「なぁ、堂島先生って、あんな風に語尾に、「よな!」とか、「なぁーに」とか言う人だったっけ…?それに、やたらと先生のセリフに傍点が付いてた様な…」
月斗はそう言いながら、堂島が入っていった穴を見つめる。
「…………」
そこに残された生徒たち全員が喉の乾きを強く感じていた。
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