一時間の約束【完結】

moa

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第五章

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誕生日の日。



僕は少し早めに公園へ行った。



四時から五時。



たった一時間。



でも今日は特別だ。



ポケットの中の小さな箱を確かめる。



青いリボン。



りんが、青が好きだって言ってたから。



四時。



ブランコが風で揺れる。



入口を見る。



まだ来ない。



まあ、いつもぎりぎりだし。



ベンチに座る。



足をぶらつかせながら。



りんが来たら、最初になんて言おうか考える。



「おめでとう」か、「遅い」か。



四時を少し過ぎた。



入口を何度も見て。



走ってくる姿を探す。



四時半を過ぎるころ、胸の奥が少しだけ落ち着かなくなる。



今日はりんの誕生日だ。



あんなに楽しみにしてたのに。



一時間でいいって言ってたのに。



その一時間を、絶対一緒にって。



ブランコが鳴る。



僕は立ち上がって、公園の入口まで行った。



道路の向こうを見ても来てない。



戻って、ポケットの箱を握るとリボンが少しよれていた。



綺麗に直して、またポケットの中に入れる。



五時が近づく。



空はきれいに晴れている。



「……早く来いよ。」



僕は小さくつぶやいた。



五時。



時計の音が遠くで鳴る。



僕は入口を見たまま、しばらく動かなかった。



もしかしたら、今来るかもしれない。



約束は、五時までだ。



少しくらい遅れても、いい。



りんのいない公園は静かだった。



僕はゆっくりベンチに座って箱を取り出す。



開けずにまたしまった。



喉の奥が少しだけ痛い。



怒ってるだけだ。



そう思う。



六時。



立ち上がる。



最後にもう一度、入口を見る。



誰もいない。



僕は目をそらして、歩き出した。



「……明日、文句言ってやるからな。」



強がるみたいに、でも本気で。



振り返らないまま、公園を出た。



約束した一時間は、ちゃんと過ぎた。
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