一時間の約束【完結】

moa

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第八章

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四時。



僕は、また公園にいた。



昨日と同じベンチ。



昨日と同じブランコ。



違うのは、ポケットの中の封筒だけだ。



“れおへ”



約束の時間。



四時から五時。



りんが、一時間でいいって言った時間。



僕は、ゆっくりと封を開けた。



中には、便せんが一枚。
  


小さな字で、たくさん書いてあった。







『れおへ



病院にいること、ずっと言えなくてごめんね。



わたし、心臓がわるいんだ。



ほんとは、みんなと遊んじゃだめなんだって言われてたんだ。



だから病院のまどからずっと見てたんだ。



れおが走ってるのを。



でも、どうしてもいっしょに遊びたくて。



どうやったら公園まで行けるかなって思ってたら、四時から五時の間だけ、ろうかに人が少なくなるのに気付いたの。



だから、その時間だけこっそり抜け出して遊びに来てたんだ。



見つかったら、もう二度と外に出られなくなるかもしれなかったから。



その一時間が、わたしの全部だったの。



れおが笑うと、わたしも元気になれた。



れおと遊ぶのもすごく楽しかった。



れおとすごした時間はわたしの宝物だよ。



誕生日、いっしょに過ごしたかったな。



プレゼント、あるって言ってくれたの、すごくうれしかったよ。
  


ありがとう。



れおに出会えて、本当によかった。



れおは、これからもたくさん走って、遊んで、笑ってね。



わたしのぶんまで、生きてほしい。



れおが幸せでいてくれたら、わたしもうれしいよ。



れおのこと、だいすきでした。



じゃあね。



れおのこと、ずっと忘れないよ。』








読み終わっても、手紙を閉じられなかった。



ポケットの中の小さな箱が、指先に触れる。



青いリボンが、少しだけしわになっていた。



……渡せなかったな。



喉の奥が熱くなる。



それでも。



僕は箱を握りしめて、立ち上がった。



四時から五時。



その一時間は、もう戻らない。



でも。



「ちゃんと、走るからな。」



小さくつぶやいた。



誰もいないブランコが、風で揺れる。



僕はその音を背中で聞きながら、公園をあとにした。

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