前世ラスボスの陰陽師は正体を隠したい ~元大妖怪、陰陽寮に仕官する~

蘆屋炭治郎

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1章 旅立ち

7話 陰陽師、前世の夢を見る

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 清士郎せいしろうは――夢を、見ていた。

 それは、前世の夢。
 玉藻たまも叡明えいめいに討たれたあのときの夢だ。



 人とモノノ怪の激戦で倒壊した城郭の中心。
 天守閣の周辺で、玉藻は陰陽師たちと三日三晩死闘を繰り広げていた。

 玉藻の力は強大だった。

 モノノ怪は討伐難度で九の等級に分類される。
 玉藻はその中でも、最上位の一等級。それは一国を滅ぼしたモノノ怪、あるいは滅ぼしうる力を持つと判断されたモノノ怪という証左だ。

 実際、玉藻はその戦で多くの陰陽師を退けた。

 陰陽師たちも歴戦の猛者だったにもかかわらず、一時はこのまま全滅させてしまうのではと思うぐらいにまで陰陽師たちを追いつめた。

 だが戦はそれで終わらなかった。
 陰陽師――安倍叡明がそこに現れたからだ。

 激闘の末、玉藻は叡明に敗れた。
 叡明との激闘の前に他の陰陽師たちとの戦いで消耗していたこと、叡明が力を増幅させる神器を所有していたことなど、原因はいろいろあるだろう。

 とにかく玉藻は敗北したのだ。

 巨大な九尾狐の姿で致命傷を負わされ、玉藻はついに地をなめた。

『よくも……よくもこのバケモノ!』
『卑怯者……仲間たちの仇!』
『ざまあみろ、死ね死ね死ねええええ!』

 そんな玉藻に群がり、憎しみにまかせて術の嵐を浴びせる陰陽師たち。

 玉藻はそのすべてをその身に受けた。
 この世のあらゆる憎しみをその身に受けるかのように、術を受けつづけた。その苦痛は、人が考えうる拷問という拷問の苦痛を遥かに超えていた。

 しかも玉藻の苦痛はそこで終わらなかった。


「裏切りの代償を……人の怒りを知れ」


 冷めきった――軽蔑した眼差しで玉藻を見つめ、叡明は印を結んだ。

 叡明の《灼蒼しゃくそう》の蒼炎にその身を灼かれ、これまでまともに声も出さず耐えていた玉藻もついに堪えきれず、その想像を絶する激痛に悲鳴をあげた。


「ぐ……あぁああぁあああああああああああああ」


 悶え苦しみながら、痛ましい絶叫とともに地面を無様にのたうち回る。

 並のモノノ怪ならば一瞬で灼きつくす蒼炎。

 だが玉藻は並のモノノ怪ではない。圧倒的霊力が鎧となって身を守っており、激戦の末にここまで弱ってなお、じわじわとしか灼くことができない。

 皮肉にもその強大な力のせいで玉藻は楽には逝けず、蒼炎によって死をも生温いと思えるほどの地獄の苦痛を味わいつづけることとなったのだった。

 熱い。
 熱い。
 熱い。
 熱い。
 熱い。

 痛い。
 痛い。
 痛い。
 痛い。
 痛い。
 痛い。

 苦しい。
 苦しい。
 苦しい。
 苦しい。
 苦しい。
 苦しい。
 苦しい。


 永遠にも思える苦痛の中、そんな感情が玉藻の脳裏を埋めつくす。



 頼む。




 頼むから。





 頼むから早く――







 僕を、











 僕を、殺してくれ。







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