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サンタさん、魔術師になる
91 魔術師資格試験
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懐かしい王都エイバルに戻ったのは、私の誕生日の前日だった。
先ずは教会近くのホッパー商会に寄って、私たちの到着を待っているホッパーさんに会う。
遠いガリア教会本部まで、お菓子の材料とか空間拡張バッグの素材となる地底生物の革を送ってくれたので、お礼とお土産を渡しに行くのだ。
ホッパー商会に到着すると、なんと客を装ったアレス君の父親ホロル様と、何故かエルドラ王子までが一緒に待っていた。
……なんか見覚えのある王宮騎士団の騎士さんが居るな~って思ったら、王子が居るからかい!
「只今戻りました、エルドラ王子、ホロル様、ホッパーさん」と私は挨拶をする。
「只今戻りました父上、エルドラ王子、ホッパーさん」
アレス君は、4年振りに再会したホロル様の顔を見て、嬉しそうに挨拶する。
すっかり元気になったみたいで良かった。いや、本当に良かったよねアレス君。
「お帰りなさいませ。1週間前に魔術師試験の受験申し込みをしておきました。試験は例年より10日も早いようで、明後日の午後が試験です。間に合って本当に良かったです」
「いつもありがとうございますホッパーさん」と、アレス君がお礼を言う。
「本当にありがとうございます。これ、私たち2人からのお土産です。
教会調査団に同行して討伐した、地底生物の牙や尻尾の皮などです。
多分、古代都市ロルツには生息していない生物だと思います」
私もお礼を言って、ホッパーさんにお土産の素材を渡すため、買い取り窓口の素材置き場に、空間拡張リュックから取り出して置く。
「また非常識な・・・親父殿が言っていた絶対に欲しいバッグってこれか!」
ホロル様が、私のリュックを見て驚きと呆れの混じった声で言う。
「サンタさん、アレス君、あれから頑張って、もう4センチの魔核に魔力充填できるようになったよ。もう少しで僕もお揃いのウエストポーチが貰えるね」
エルドラ王子は嬉しそうに報告しながら、お土産に出した素材を興味津々で物色し始める。
「エルドラ王子にもお土産を用意してあります。4センチの魔核充填ができるようになったら使える、空間拡張ウエストポーチです。お揃いですよ」
私はそう言いながら、自分が装着しているウエストポーチを見せて、エルドラ王子に黒革のウエストポーチを渡す。
アレス君も自分のウエストポーチを見せて「同じですよ」と嬉しそうに言う。
「本当に? やったー!」
大喜びしているエルドラ王子に、早速仕上げの魔力充填をしてもらう。
私と同時に魔力を流せば完成するはず。
アレス君が使い方を教えている間、私はホッパーさんから受験票を受け取った。
ホッパーさんはエルドラ王子のリクエストに応えて、店に置いてある古代都市から採掘された素材や商品の説明をするようだ。
私とアレス君は、アロー公爵家の様子を聞くため、ホロル様と一緒に店の奥の客室に通された。
手紙のやり取りはしていたけど、用心のためヒバド伯爵関連のことには一切触れてこなかった。
それでも、第3期調査隊にホロル様が加わっていたから、安全度が上がったのだろうと、私とアレス君は推察していた。
「魔力学会後ヒバド伯爵は、例の毒入り茶を我が屋敷で数回飲み、1年前から寝込み始めた。
呪術師と思わる執事と次男のナックルが8か月前に訪れ、ヒバド伯爵の命を救うため、どうか力を貸して欲しいという立て前で、私が回復した秘密を探りにきた」
ホロル様は出されたお茶を優雅に飲みながら、余裕の表情でヒバド伯爵や呪術師の動きを教えてくれる。
「それではヒバド伯爵も呪術師も、まだ生きているのですね?」
アレス君は不本意そうに、父親であるホロル様に確認する。
「まあヒバド伯爵は外出もできないようだが、強引に屋敷に泊り回復の秘密を探ろうとした呪術師は、夜中にサンタさんが仕掛けた魔法陣が発動し、2階のベランダから転落し足と腕の骨を折った」
「それで呪術師を捕らえたのですか父上?」
ちょっと弾んだ声でアレス君が問う。
「いや、医者を呼びに行っている隙に逃げられた。その後ヒバド伯爵の屋敷に戻った様子もなく、探させてはいるが行方は分かっていない。
父も私も、雇い主であるヒバド伯爵を見限ったのではないかと考えている。
不審者を同伴した次男ナックルは、現在屋敷への立ち入りを禁じている。
だからアンタレスは、アロー公爵家で生活しても大丈夫だ」
……ああ、ホロル様がわざわざホッパー商会で待っていたのは、王都の屋敷にアレス君を迎えるためかぁ・・・
……魔術師学校にはうちの家から通うって思ってたから、ちょっと寂しいなぁ。
「そうですか、でも、呪術師の反撃を考えると、これからもサンタさんと一緒に居た方が安全だと思います。
奥様や、側室様も、その方がいいと思います。私はこのままでも構いません」
どこか寂しそうだけど、ガリア教会本部に居た時も、アロー公爵屋敷で暮らしたくないと言ってたもんなぁ・・・
まあ、異母兄姉だって歓迎してくれるかどうか分からないし、気を使いながら暮らすより、うちの方が楽だよね。兄さまとも仲がいいし。
結局ホロル様は、魔術師資格試験が終わったら、家族に紹介したいから屋敷に来るようアレス君に言って、私にも、男爵の爵位授与と馬車を贈るから、一緒に来るよう指示を出して、エルドラ王子と勤務先の王宮に戻られた。
我が家に戻った私とアレス君は、久し振りに家族とたくさんの話をした。
明日は私の誕生会をすると母様とメイドのメリーさんが張り切っているので、私とアレス君は、鍛えたお菓子作りの腕を披露することにした。
楽しかった誕生日会の翌日、私とアレス君は王都の魔術師学校で、下位・魔術師の国家資格を取得する試験を受け、あっさり、ぶっちぎりの成績で合格した。
もちろん、魔法じゃなくて魔術を使ったよ。
下位・魔術師を勧誘しようとするハンターをスルーして、アレス君と一緒に魔術師学校の入学手続きをした。
本来であれば、6月の試験で合格できなかった者や、職業選別で下位・魔術師を授かった者が入学する学校だから、中位・魔術師受験を目指す者が入学するのは稀らしい。
中位・魔術師資格取得試験は、年に1度、8月に魔術師協会で行われる。
先ずは教会近くのホッパー商会に寄って、私たちの到着を待っているホッパーさんに会う。
遠いガリア教会本部まで、お菓子の材料とか空間拡張バッグの素材となる地底生物の革を送ってくれたので、お礼とお土産を渡しに行くのだ。
ホッパー商会に到着すると、なんと客を装ったアレス君の父親ホロル様と、何故かエルドラ王子までが一緒に待っていた。
……なんか見覚えのある王宮騎士団の騎士さんが居るな~って思ったら、王子が居るからかい!
「只今戻りました、エルドラ王子、ホロル様、ホッパーさん」と私は挨拶をする。
「只今戻りました父上、エルドラ王子、ホッパーさん」
アレス君は、4年振りに再会したホロル様の顔を見て、嬉しそうに挨拶する。
すっかり元気になったみたいで良かった。いや、本当に良かったよねアレス君。
「お帰りなさいませ。1週間前に魔術師試験の受験申し込みをしておきました。試験は例年より10日も早いようで、明後日の午後が試験です。間に合って本当に良かったです」
「いつもありがとうございますホッパーさん」と、アレス君がお礼を言う。
「本当にありがとうございます。これ、私たち2人からのお土産です。
教会調査団に同行して討伐した、地底生物の牙や尻尾の皮などです。
多分、古代都市ロルツには生息していない生物だと思います」
私もお礼を言って、ホッパーさんにお土産の素材を渡すため、買い取り窓口の素材置き場に、空間拡張リュックから取り出して置く。
「また非常識な・・・親父殿が言っていた絶対に欲しいバッグってこれか!」
ホロル様が、私のリュックを見て驚きと呆れの混じった声で言う。
「サンタさん、アレス君、あれから頑張って、もう4センチの魔核に魔力充填できるようになったよ。もう少しで僕もお揃いのウエストポーチが貰えるね」
エルドラ王子は嬉しそうに報告しながら、お土産に出した素材を興味津々で物色し始める。
「エルドラ王子にもお土産を用意してあります。4センチの魔核充填ができるようになったら使える、空間拡張ウエストポーチです。お揃いですよ」
私はそう言いながら、自分が装着しているウエストポーチを見せて、エルドラ王子に黒革のウエストポーチを渡す。
アレス君も自分のウエストポーチを見せて「同じですよ」と嬉しそうに言う。
「本当に? やったー!」
大喜びしているエルドラ王子に、早速仕上げの魔力充填をしてもらう。
私と同時に魔力を流せば完成するはず。
アレス君が使い方を教えている間、私はホッパーさんから受験票を受け取った。
ホッパーさんはエルドラ王子のリクエストに応えて、店に置いてある古代都市から採掘された素材や商品の説明をするようだ。
私とアレス君は、アロー公爵家の様子を聞くため、ホロル様と一緒に店の奥の客室に通された。
手紙のやり取りはしていたけど、用心のためヒバド伯爵関連のことには一切触れてこなかった。
それでも、第3期調査隊にホロル様が加わっていたから、安全度が上がったのだろうと、私とアレス君は推察していた。
「魔力学会後ヒバド伯爵は、例の毒入り茶を我が屋敷で数回飲み、1年前から寝込み始めた。
呪術師と思わる執事と次男のナックルが8か月前に訪れ、ヒバド伯爵の命を救うため、どうか力を貸して欲しいという立て前で、私が回復した秘密を探りにきた」
ホロル様は出されたお茶を優雅に飲みながら、余裕の表情でヒバド伯爵や呪術師の動きを教えてくれる。
「それではヒバド伯爵も呪術師も、まだ生きているのですね?」
アレス君は不本意そうに、父親であるホロル様に確認する。
「まあヒバド伯爵は外出もできないようだが、強引に屋敷に泊り回復の秘密を探ろうとした呪術師は、夜中にサンタさんが仕掛けた魔法陣が発動し、2階のベランダから転落し足と腕の骨を折った」
「それで呪術師を捕らえたのですか父上?」
ちょっと弾んだ声でアレス君が問う。
「いや、医者を呼びに行っている隙に逃げられた。その後ヒバド伯爵の屋敷に戻った様子もなく、探させてはいるが行方は分かっていない。
父も私も、雇い主であるヒバド伯爵を見限ったのではないかと考えている。
不審者を同伴した次男ナックルは、現在屋敷への立ち入りを禁じている。
だからアンタレスは、アロー公爵家で生活しても大丈夫だ」
……ああ、ホロル様がわざわざホッパー商会で待っていたのは、王都の屋敷にアレス君を迎えるためかぁ・・・
……魔術師学校にはうちの家から通うって思ってたから、ちょっと寂しいなぁ。
「そうですか、でも、呪術師の反撃を考えると、これからもサンタさんと一緒に居た方が安全だと思います。
奥様や、側室様も、その方がいいと思います。私はこのままでも構いません」
どこか寂しそうだけど、ガリア教会本部に居た時も、アロー公爵屋敷で暮らしたくないと言ってたもんなぁ・・・
まあ、異母兄姉だって歓迎してくれるかどうか分からないし、気を使いながら暮らすより、うちの方が楽だよね。兄さまとも仲がいいし。
結局ホロル様は、魔術師資格試験が終わったら、家族に紹介したいから屋敷に来るようアレス君に言って、私にも、男爵の爵位授与と馬車を贈るから、一緒に来るよう指示を出して、エルドラ王子と勤務先の王宮に戻られた。
我が家に戻った私とアレス君は、久し振りに家族とたくさんの話をした。
明日は私の誕生会をすると母様とメイドのメリーさんが張り切っているので、私とアレス君は、鍛えたお菓子作りの腕を披露することにした。
楽しかった誕生日会の翌日、私とアレス君は王都の魔術師学校で、下位・魔術師の国家資格を取得する試験を受け、あっさり、ぶっちぎりの成績で合格した。
もちろん、魔法じゃなくて魔術を使ったよ。
下位・魔術師を勧誘しようとするハンターをスルーして、アレス君と一緒に魔術師学校の入学手続きをした。
本来であれば、6月の試験で合格できなかった者や、職業選別で下位・魔術師を授かった者が入学する学校だから、中位・魔術師受験を目指す者が入学するのは稀らしい。
中位・魔術師資格取得試験は、年に1度、8月に魔術師協会で行われる。
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