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突然の非日常の始まり

第五話 いざ街へ…

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しばらく石造りの壁を眺めた後、俺達は門の前にある列に並んでいた。

列は数十人なのでそこまで時間はかからなさそうだと推測する。

「これなら街にすぐに入れそうだな」


「そうですね、数分で入れると思いますよ…」


シュースは俺の問いに少し暗い様子で答える。それを見て少し気になるので話しかけてみる。


「どうかしたか?」


「いやぁ、紅夜さんが私の凄さを分かってくれないので落ち込んでるんですよ」


「そりゃ、あんなにお菓子を食べ散らかして寝てたら威厳も無いな」


「ぐふっ!」


威厳が無いと言われ、精神的にKOされたシュースは、暗いオーラを出しながら何か落ち込みながら呟きだした。


「そうですよね、あんな地面に寝転がって寝てたら威厳も何も無いですよね、そもそもロリ体系だからどうしようと威厳なんて無いでしょう、私なんてどうせただの幼女ですよ、これくらいの世界なら先輩の女神様にとったら普通に幾らでも作れるでしょうね、私にとったら自信作だったのにつまり私はその程度の女神って事ですよね…」


うわぁ…すげえネガティブになってらっしゃる。
あれか?俺が威厳が無いって言ったからか?それだけで心折れるってメンタル柔らかすぎじゃないか?


「どうせ、私なんてただの一般女神なんですよ…」


このままだと面倒くさいしなんとかしなければ…


「おい、シュースよく聞け」


「…紅夜さん、こんなただの一般女神にまだ何か用ですか?」


「えーとだな、お前は確かにあまり凄くないとは思っているがな…」


「やっぱりそうですよねぇ…」


「最後までよく聞け、それでも俺にはこの世界は綺麗だしいい世界だと思うぞ、俺から見たら凄くないがこの世界の人から見ればお前は十分凄いだろう」


「……」


「だから…この世界では胸張っとけ、じゃないとこっちの世界でも威厳がなくなるぜ?」


歩きながら横目でシュース見てニヤリと笑い頭を軽く撫でてやる。
白く綺麗な髪は、撫でると手が透き通る様に髪の間を通り抜けた。

シュースはそんな俺を数秒ぽけーっと見つめた後に口を開いた。


「まさか紅夜さんに慰められるとは思いませんでした」


「俺が慰めて悪いか」


「そりゃ、私の心をへし折った張本人ですからね…まあ、悪い気はしなかったです」


「それなら良かった良かった、あのままだと面倒くさいからな」


「…だろうと思いましたよ」


ジト目でこちらを見てくるが知らんぷりをしておく。

そして、そんな事をしている内に前に並んでいた人達は減っていき、ついに俺たちの番になった。
すると門番をしているであろう衛兵らしき人物が話しかけてくる。


「この街には何をしに?」


「観光だな」


「ふむ、身分を証明できる物はあるか?」


「うーむ、シュースは持ってるか?」


「いえ、持ってないですね」


「なるほど、じゃあこの滞在札を渡すから二人合わせて2銀貨払ってくれ」


「分かりました」


シュースは虚空に腕を振る、するとその空間の部分に真っ黒な穴が開いた。シュースはその中におもむろに手を突っ込むと、少しゴソゴソとしてから腕を取り出す、するとその手には銀色のコインらしき物が二枚握られていた。

それを見ていた衛兵はとても驚いた顔で喋り出した。


「嬢ちゃん、まさかその歳で亜空間持ちとはな、久し振りに驚いたぜ」


「え、えぇ、取り敢えず銀貨二枚です、どうぞ」


シュースは当たり前の様に使っていたモノに予想外の反応をされ、少し戸惑っていたが恐らくこの世界では貴重な力なんだろうな。
というか貴重な物とか把握しとけよ、自分の世界なのにさ…


「ほれ、滞在札だ。身分証を作るまでの間は街に滞在するのに必要だから無くすなよ」

衛兵が差し出してきた札を見ると、それは5センチほどの正方形の形をした薄い鉄で出来ており、魔法陣の様な模様と文字らしき物が書かれていた。

「これが滞在札か、取り敢えずポケットにでも入れて置くか」


「これでもう街に入っても問題無いな。それじゃあ、この豊穣の街メルリアで良い思い出を作れる事を願う」


衛兵に道を開けられ門に足を踏み入れる。
そして、門をくぐりぬけるとそこには人が多く、活気の溢れる光景が広がっていた。
人はザワザワと子供連れの親や、鎧や武器を装備している者など様々だ。
たまに顔が獣だったり獣耳がついていたりする者も見かけた。恐らく獣人のようなものだろう。


「さて、取り敢えず冒険者ギルドに行くか」


「そうですね」


そうして俺達は歩きだ……さなかった。


「…なあ、ギルドの場所知ってるか?」


「……知りません」


街に入っていきなり出鼻挫かれたんだが。

その後、片っ端から親切そうな人達にギルドの場所を聞いて行き、数十分後、なんとか冒険者ギルドへ辿り着く事が出来た。
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