公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

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20話 魔法剣士ライル

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 メイン会場として使われているだけあって、街の大広場はかなりの広さだ。闘いを期待する観衆は、少しずつ後退して中心部にスペースを開けていく。

「ちょっと待ったライル! やる前にこれ着けな!」

 観衆を掻き分けてやってきたヴェイナーは、金色の腕輪をライルの左腕に通した。

「これで全力出しても大丈夫よ」
「これは、一体何の魔導具でしょうか?」

「魔力を外に出せなくなる・・・・・・・・腕輪よ。アンタが本気出したら相手が死ぬからさ」
「ヴェイナーさん。お心遣い感謝します」

 ライルの不穏な言葉に、冒険者達が若干動揺する。

「ブチのめしてきなさい」
「はい」

 大広場中央に向かって歩きながら、ライルは悠然と詠唱した。

「《印詠省略ロジックカット》」

 たったそれだけで、魔法使いらしき者達がざわついた。
 分かる者には分かる超高難度の古代魔法だからだ。

「では、どなたからでもどうぞ」
「じゃあ俺からやらせてもらおうか」

 威風堂々と出てきたのは金髪30代の大男ビルダーだった。
 鍛え上げられた身体から放たれる膂力は計り知れない。

『おおおおおお!』

 冒険者達が一斉に盛り上がる。

『ではお二人とも、準備はいいですか?』
「はい」
「ああ」
『それでは試合を始めてください!』

 だがビルダーは大剣を腰に差したまま、戦う素振りを見せない。

「お前は一体なんだ?」
「俺ですか? 俺は《鷹の眼ホークアイ》所属のライルと言います。今日からBランクになった冒険者です」

「俺はSランクの戦士でビルダーって者だ。この国ではそこそこ名が知られてる」
「ビルダー! 名前はガッツリ知られてるぞ!」

 ビルダーの同門らしき男から声が飛ぶ。

「ワイバーンを殲滅させたらしいが、どんな手品だ?」
「魔法です」

「魔法なわけねぇだろうが! 魔導トラップを大量に使ったってもっぱらの噂だぞ?」
「そんな高価な物は使ってませんよ。俺が使ったのは魔法だけです」

「魔法は誰に師事したんだ? この国には、あんな馬鹿げた事が出来る魔法使いなんていねーんだぜ?」

「師はおりません。強いて言うなら『はじめよう家庭の魔法』の著者の方でしょうか?」

 至極真面目に答えるが、ビルダーのこめかみがピクピクと動く。

「はっ。茶化して誤魔化そうってか? なあ、お前は回復魔法は使えるか?」
「おそらくですが、使えます」

(俺の力ではなく、ティリア様の御力ですが)

「じゃあ大丈夫だな?」
「何がでしょうか?」
「ヤバイと思ったら、自分に回復魔法を使えって事だっ!」

 ビルダーは大剣を構える。

「痛い目に遭いたくなきゃ『嘘でした』って言え! 最後まで言わないつもりなら、怪我しても文句言うなよ!」

 すると外野から、ライルに向かって声が飛ぶ。

「謝っとけって。下手すりゃ死ぬぞぉ!」
「ビルダーさんはSだからなぁ。怒らせたらマジでヤバイし」

 ライルは酔っ払い達の声を無視する。そして腰に差した剣を抜いて、しっかりと正眼に構えた。

魔法使いが・・・・・剣を使うだと? とことん舐めてくれるじゃねぇかよ!」

 だがライルは動じない。

(これが俺の進む道だ)

 ソードスキルの力に頼り過ぎたライルは、ソードスキルを失って無力となった。魔法の力だけを極めていけば、それを失った時にまた無力となってしまいかねない。

(同じ轍を踏む訳にはいかない)

 だからこそライルは、剣と魔法で生きて行こうと決めた。もしどちらかの力を失っても、ティリアを守っていけるように。

『始めてください!』

 頃合いを見計らい、進行役の男が戦闘を促す。
 ライルは剣を両手で握り締めると、魔法を唱えた。

「《身体能力強化フィジカルブースト》」
「はぁあああああ! 《速撃連斬オーバークイック!》」

 ビルダーが放つソードスキルは高速の2連撃だ。

(見える!)

 軌道を見切ってビルダーの初撃を弾き飛ばす。ライルの足が半歩分だけ後ろに押されたが、続く2撃目の斬撃は、その場で完全に受け切った。

「なんだとっ!?」

(ははっ)

 ライルは薄く笑っていた。驚きを隠せないビルダーの顔とは対照的だ。

(ソードスキルが使えなくても十分やれる)

 ビルダーの速さと膂力は、ライルの父や兄に勝るとも劣らない。仮に父に殺された当時のライルであれば、ビルダーの攻撃を受け切る事など出来なかっただろう。

 だがライルは真っ向から受け止めた。それはつまり《身体能力強化フィジカルブースト》の魔法を使った状態であれば、一流の剣士として戦えるという事に他ならない。

(俺の剣は通用する)

 ライルは幼い頃から剣の修練を続けてきた。弱いままではティリアを守れないと知っていたから、努力を続けてきたのだ。

 倒れるまで素振りをした事もあれば、余りの過酷さに立ったまま気絶した事もある。そしてその習慣は今でも変わっていない。例え血反吐を吐こうとも、剣の修練だけは止めなかった。

 その地道な努力が実った形だ。今のライルは《身体能力強化フィジカルブースト》の魔法を使えば、ソードスキルに頼らなくとも剣を思った通りに操れる。

 パリイのソードスキルを使えた頃のライルは、相手の剣を半自動で弾いていた。だが今のライルはソードスキルを使わずとも、同じような技を繰り出せている。パリイが使えないのであれば、自力で相手の剣を弾けばいいだけだからだ。

「ライルと言ったな……お前は何だ? 剣士なのか? 魔法使いなのか?」
「俺は魔導超越者マジックマスターの剣士です」

 この日、異色とも言える魔法剣士が誕生した。
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