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21話 伝説の始まり(別視点)
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戦いが今にも始まろうとしていた頃。
「ビルダーの相手をさせられるとか、あの子かわいそう」
「虚偽申告をする奴が悪い。ちょっと痛い目にでもあえば、改心するだろうさ」
高ランクの冒険者達は、離れた場所で雑談に興じている。
ビルダーは大陸で三本の指に入ると言われる冒険者だ。ライルが勝つと思っているのは、ギルド《鷹の眼》の者達だけだろう。
「『騙してすみませんでした』とか言って、泣いて謝るんじゃない?」
「俺は、謝る前に気を失って倒れると思うなぁ。ビルダーって強過ぎるし」
「大番狂わせで嘘吐き君が勝ったりして?」
「それはないだろ。逃げ出す可能性ならありそうだけど」
「だよねー。でも彼って美形だから、泣きながら逃げる姿も絵になりそう」
冒険者達は好き勝手に言っていたが、試合が始まると黙らざるを得なくなる。
「受け止めたのか? あのビルダーのソードスキルを?」
言葉を発したのは、ビルダーの強さを最もよく知る冒険者の男だった。男は、目の前で起こっている出来事に釘付けとなっている。
「どうしたんだろ? 今日のビルダーって本調子じゃないの?」
「そんなはずはない。ビルダーの技には一片の曇りもなかった。体調に問題はないはずだ」
男は息を呑む。軽い雰囲気だった冒険者達の空気は、いつの間にか全く違ったものとなっていた。
「もし、もしよ? 申告通りに、彼が魔法でワイバーンを倒していたとしたら?」
「魔法を使われたら、ビルダーに勝ち目はないだろうな」
手練れの冒険者であれば、ワイバーンを1,2体は倒せるかもしれない。だがそれが千体ともなれば次元が違う。
「魔法を使われなかったとしても、ビルダーが勝てるかどうかは分からんようだがな」
「ビルダーは剣の天才なんだぞ。それが、あんな訳の分からない奴に負けるってのか? 魔法の片手間で剣士の真似事やってるような奴を相手に?」
ビルダーは大陸で三本の指に入る。ライルを除けば、ここにいる冒険者達の中で最も強い実力を持っていた。
「なあ、アイツって、もしかして大陸最強騎士とか言われてたライル・グローツじゃねぇか?」
「違うんじゃない? だってライル・グローツは、魔法を使わないって話だもの」
ここはライルの祖国ではない為、正確な情報を知る者は少ない。
「ん? 何か喋ってるけど、よく聞こえないな。アイツは何て言ってるんだ?」
「『俺は《魔導超越者》の剣士だ』みたいな事を言ってる」
「はぁ? マジックマスターって、何だそれは?」
「知らん。俺は口の動きを読んだだけだからな」
「それより俺は、アイツの妙な余裕が気になるよ。ビルダーは全力でやってるみたいなのにさ」
ライルがとてつもない実力者である事は、冒険者達にも伝わった。ビルダーと互角に渡り合い、尚且つライルだけが平然としているからだ。
「まさかビルダーが負けるなんて……ないよな?」
「そんなの知るかよ」
息を呑む外野の気持ちなど露知らず、ライルとビルダーは再度打ち合いを開始した。
△
冒険者達の顔は真剣なものとなっている。僅かな動きすら見逃すまいと、食い入るように両者の戦いを見つめていた。
(これが、ビルダーが本気を出した剣技なのか)
ライバルの全力を見れた事に、男は喜ぶと同時に悔しく思った。自分ではビルダーを本気にさせる事など出来なかったからだ。
男は決して弱くない。それどころかSランク冒険者としても名が知られており、十分な実績を残している。ただ、ビルダーがいる領域には届かなかっただけだ。
昔からそうだった。男がどんなに努力をしようと、ビルダーはそれを軽々と超えていく。
ビルダーが才能に胡坐をかく男なら良かったが、残念ながら天賦の才を持つビルダーは努力家だ。男は追いつく事を諦めるしかなかった。それなのに――。
「……凄まじい奴だ」
自分でも意図しない内に、ライルを称賛する言葉が漏れた。
ライルはビルダーの動きを読んで剣を弾き、ビルダーの全力の剣を真正面から受け止める。
それだけに留まらず、目の覚める反撃までも次々と繰り出していった。
それもビルダー相手にまるで怯まない。むしろ剣を扱えるのが嬉しいとでも言うかのように、楽し気に華麗な技を繰り出している。
そしてそのライルの剣捌きは、男の目から見て異常なものだった。
「なんという正確無比な剣だ」
男はビルダーには及ばないにしろ、冒険者として一流の剣の使い手だ。だからこそ、ライルの動きが膨大な努力によって裏打ちされているのが分かる。剣筋が寸分たりとも狂わず、一切の揺らぎがないからだ。
(どれだけの修練を積めば、あれだけ正確に剣を扱えるのか)
男は尊敬と共に畏怖を感じた。ライルの動きを目で追う程に、男との地力の差を嫌でも実感してしまうからだ。
男は剣の為なら努力を惜しまなかった。だがライルの努力は、その遥か上を行くものだ。
「アイツが《身体能力強化》の魔法を使っているから、ビルダーさんは劣勢なんだろ? それって卑怯じゃないか?」
すると男は、無粋な発言を諫めようと口を開く。
「魔法を使える人間が魔法を使ったら卑怯なのか? じゃあお前は、火を吐く魔物と戦う時に『火を吐く奴は卑怯だ』とでも言うつもりか?」
「……」
反論は出なかった。
(ライルと言ったか。いずれ伝説になるかもな)
数分後、ビルダーが膝を着く形で勝敗が決着した。
「ビルダーの相手をさせられるとか、あの子かわいそう」
「虚偽申告をする奴が悪い。ちょっと痛い目にでもあえば、改心するだろうさ」
高ランクの冒険者達は、離れた場所で雑談に興じている。
ビルダーは大陸で三本の指に入ると言われる冒険者だ。ライルが勝つと思っているのは、ギルド《鷹の眼》の者達だけだろう。
「『騙してすみませんでした』とか言って、泣いて謝るんじゃない?」
「俺は、謝る前に気を失って倒れると思うなぁ。ビルダーって強過ぎるし」
「大番狂わせで嘘吐き君が勝ったりして?」
「それはないだろ。逃げ出す可能性ならありそうだけど」
「だよねー。でも彼って美形だから、泣きながら逃げる姿も絵になりそう」
冒険者達は好き勝手に言っていたが、試合が始まると黙らざるを得なくなる。
「受け止めたのか? あのビルダーのソードスキルを?」
言葉を発したのは、ビルダーの強さを最もよく知る冒険者の男だった。男は、目の前で起こっている出来事に釘付けとなっている。
「どうしたんだろ? 今日のビルダーって本調子じゃないの?」
「そんなはずはない。ビルダーの技には一片の曇りもなかった。体調に問題はないはずだ」
男は息を呑む。軽い雰囲気だった冒険者達の空気は、いつの間にか全く違ったものとなっていた。
「もし、もしよ? 申告通りに、彼が魔法でワイバーンを倒していたとしたら?」
「魔法を使われたら、ビルダーに勝ち目はないだろうな」
手練れの冒険者であれば、ワイバーンを1,2体は倒せるかもしれない。だがそれが千体ともなれば次元が違う。
「魔法を使われなかったとしても、ビルダーが勝てるかどうかは分からんようだがな」
「ビルダーは剣の天才なんだぞ。それが、あんな訳の分からない奴に負けるってのか? 魔法の片手間で剣士の真似事やってるような奴を相手に?」
ビルダーは大陸で三本の指に入る。ライルを除けば、ここにいる冒険者達の中で最も強い実力を持っていた。
「なあ、アイツって、もしかして大陸最強騎士とか言われてたライル・グローツじゃねぇか?」
「違うんじゃない? だってライル・グローツは、魔法を使わないって話だもの」
ここはライルの祖国ではない為、正確な情報を知る者は少ない。
「ん? 何か喋ってるけど、よく聞こえないな。アイツは何て言ってるんだ?」
「『俺は《魔導超越者》の剣士だ』みたいな事を言ってる」
「はぁ? マジックマスターって、何だそれは?」
「知らん。俺は口の動きを読んだだけだからな」
「それより俺は、アイツの妙な余裕が気になるよ。ビルダーは全力でやってるみたいなのにさ」
ライルがとてつもない実力者である事は、冒険者達にも伝わった。ビルダーと互角に渡り合い、尚且つライルだけが平然としているからだ。
「まさかビルダーが負けるなんて……ないよな?」
「そんなの知るかよ」
息を呑む外野の気持ちなど露知らず、ライルとビルダーは再度打ち合いを開始した。
△
冒険者達の顔は真剣なものとなっている。僅かな動きすら見逃すまいと、食い入るように両者の戦いを見つめていた。
(これが、ビルダーが本気を出した剣技なのか)
ライバルの全力を見れた事に、男は喜ぶと同時に悔しく思った。自分ではビルダーを本気にさせる事など出来なかったからだ。
男は決して弱くない。それどころかSランク冒険者としても名が知られており、十分な実績を残している。ただ、ビルダーがいる領域には届かなかっただけだ。
昔からそうだった。男がどんなに努力をしようと、ビルダーはそれを軽々と超えていく。
ビルダーが才能に胡坐をかく男なら良かったが、残念ながら天賦の才を持つビルダーは努力家だ。男は追いつく事を諦めるしかなかった。それなのに――。
「……凄まじい奴だ」
自分でも意図しない内に、ライルを称賛する言葉が漏れた。
ライルはビルダーの動きを読んで剣を弾き、ビルダーの全力の剣を真正面から受け止める。
それだけに留まらず、目の覚める反撃までも次々と繰り出していった。
それもビルダー相手にまるで怯まない。むしろ剣を扱えるのが嬉しいとでも言うかのように、楽し気に華麗な技を繰り出している。
そしてそのライルの剣捌きは、男の目から見て異常なものだった。
「なんという正確無比な剣だ」
男はビルダーには及ばないにしろ、冒険者として一流の剣の使い手だ。だからこそ、ライルの動きが膨大な努力によって裏打ちされているのが分かる。剣筋が寸分たりとも狂わず、一切の揺らぎがないからだ。
(どれだけの修練を積めば、あれだけ正確に剣を扱えるのか)
男は尊敬と共に畏怖を感じた。ライルの動きを目で追う程に、男との地力の差を嫌でも実感してしまうからだ。
男は剣の為なら努力を惜しまなかった。だがライルの努力は、その遥か上を行くものだ。
「アイツが《身体能力強化》の魔法を使っているから、ビルダーさんは劣勢なんだろ? それって卑怯じゃないか?」
すると男は、無粋な発言を諫めようと口を開く。
「魔法を使える人間が魔法を使ったら卑怯なのか? じゃあお前は、火を吐く魔物と戦う時に『火を吐く奴は卑怯だ』とでも言うつもりか?」
「……」
反論は出なかった。
(ライルと言ったか。いずれ伝説になるかもな)
数分後、ビルダーが膝を着く形で勝敗が決着した。
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