公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

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24話 神罰を受けた護衛騎士(1)

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ライルの過去編です(4話程度の予定)

 △

 鋭い一閃が1本の剣を弾き飛ばした。

「勝者ライル・グローツ!」

 試合終了が告げられると、観客席から地鳴りのような歓声が上がる。
 大陸最強の騎士が誕生した瞬間であった。
 勝者は剣を高く掲げ、敗者は踵を返して去っていく。

「静粛に!」

 未だ興奮冷めやらぬ中、宰相が声を張り上げた。

「これより授与式を執り行う。ライル・グローツ此処へ」
「はっ!」

 ライルは貴賓席まで進み出ると、国王の前で片膝を着いて頭を垂れる。

「今回の働き、まことに見事であった。大陸覇者の栄誉を我が国の騎士に授けられる事、余は大変嬉しく思う」
「勿体ないお言葉でございます」

 各国の筆頭騎士が大陸中から集い、祖国の威信を賭けて競い合うのが大陸覇者闘技会だ。

 誉れ高き今年の優勝者は、若干18歳にして開催国の代表に選ばれたライル・グローツ子爵令息であった。

 ライルが授かった天啓は、あらゆる剣技を使いこなせる《剣技超越者ソードマスター》。これは過去の英雄達ですら縁のなかった代物だ。

「褒賞をここへ」

 国王の一言で、手のひら大の小箱が盆に載せられて運ばれてくる。

「面を上げよ。パンドラの箱を受け取るがよい」
「謹んで頂戴いたします」

 ライルは豪華な装飾が施された小箱を手に取り、ゆっくりと上蓋に手を掛けた。

 パンドラの箱は、異世界から次元を渡ってきたとされる奇妙な小箱だ。最も強き者だけが開ける事を許され、箱の底には希望の光があると言い伝えられている。

 だが真偽の程は定かではない。箱が出現してから既に500年にも及んでいるが、未だ開けられた前例がないからだ。

 ゆえに「パンドラの箱を開けるに相応しい者を選定する」という大会の開催名目も、今では半ば有名無実化していた。

『今年も箱は開かないだろう』

 誰もがそう予想していた。しかし、

『おおおおおお!』

 会場は狂騒に包まれた。
 観衆の予想に反して、箱が静かに開いていったからだ。

『きゃぁああああああ!』
『うああああああああ!』

 突如として膨大な量の霧が噴き出した。黒い霧は会場どころか王都全体を瞬く間に覆ってしまう。

 呪われると騒ぐ者、我先に逃げ出そうとする者、恐怖に顔を歪める者など、その様相は様々だった。

 しかしそんな観衆をあざ笑うかの如く、黒い霧は段々と薄まっていく。そしてしばらく後、何事もなかったかのように忽然と消えてしまった。

 △

 王城の大ホールでは、祝賀会が開催されている。

「箱まで開けてしまうとはな。お前は我がグローツ子爵家の誉れだ」

 上機嫌でライルに話し掛けているのは、父親であるグローツ子爵だ。グローツ子爵は、数年前まで王国近衛騎士団の団長を務めていた。身体にある無数の傷が、歴戦の猛者である事を物語る。

「本当に素晴らしい御子息をお持ちだ」
「貴家は安泰でしょうなぁ」
「羨ましい限りです」

 グラスを片手に貴族達がこぞって祝辞を述べると、グローツ子爵は満足気な笑みを浮かべる。

「いやしかし、あの黒い霧が出てきた時は焦りましたな」
「全くです」
「まあ良くも悪くも、それ以外は何も起こらず拍子抜けしましたがね」
「いいじゃないですか。酒の肴になったのですから」
「ははははは」

 和やかな雰囲気で談笑しつつ、グローツ子爵はライルへと顔を向けた。

「ライル。あとは好きにしろ」

 王族や貴族達への挨拶回りを終えたライルは、優勝者としての義務を粗方終えていた。

「では父上。少し夜風にあたってきます」
「ああ」

 了承を得て歩き出す。見目麗しいライルは何度も呼び止められるが、当たり障りがないように、令嬢達の誘いを上手くかわしていった。

(ティリア様は来ておられないのか)

 会場内に何度も目を走らせるが、ティリア・フローレンス公爵令嬢の姿を見つける事は出来なかった。

 ライルの生家であるグローツ子爵家は、フローレンス公爵家との結び付きが強い騎士の家系だ。

 文武両道を旨とし、若い時分は主君と定めた者を守護する使命を帯びている。そしてライルが仕えるのは、2歳年下のティリア・フローレンス公爵令嬢であった。

「ティリア様はお忙しい御方だからな……」

 溜息を吐いて中庭で星を眺めていると、半刻程してから侍従の男が現れる。

「ライル様。グローツ子爵がお呼びです」
「分かった。すぐに行く」

 ライルはグローツ子爵の元へと向かった。
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