公爵令嬢を溺愛する護衛騎士は、禁忌の箱を開けて最強の魔力を手に入れる

アスライム

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27話 神罰を受けた護衛騎士(4)

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 王城内には王国騎士団の修練場がある。

 神罰で呪われたとされる護衛騎士ライル・グローツと、元近衛騎士団長でありライルの父親でもあるグローツ子爵の試合が、今まさに始まらんとしていた。

「始め!」
「はぁあっ!」

 グローツ子爵が一気に間合いを詰める。渾身の力で剣を振り下ろすと、ライルが肩上に構えた剣は、驚く程アッサリと折れた。

 恐るべき膂力で振り下ろされた剣は、金属鎧を紙のように切り裂いて肩口からめり込んでいく。

 致命傷となる一撃だった。スローモーションのように意識が朦朧としていく中、死を悟ったライルが最期に願うのは1つだけ。

(ティリア様。どうか……お幸せに)

 ライルの周囲に血溜りが広がっていく。死を決定付ける凄惨な光景だった。

「ライルッ!」

 ティリアは走るが、フラフラとした足取りで足元がおぼつかない。息を呑む騎士達を押し分けながら駆け寄ると、事切れようとしているライルを無我夢中で抱き締めた。

「ライル! ライル! いや……嫌ぁあああああああああああああ!」

 暗くなっていく意識の中で、ライルは幸せな日々の始まりを思い出す。6歳になったばかりの、忘れもしない春の日の出来事を。

 △

 綺麗な花が咲いたフローレンス公爵邸の庭では、ガーデンパーティーが開かれていた。テーブル上には高級な茶器や色とりどりのスイーツが並べられている。

「こちらが、お前が将来仕えるべき御方だ。挨拶しろライル」

 グローツ子爵がライルの背を押すと、侍女の後ろに隠れている愛らしい少女がビクリと震えた。

「僕はライル・グローツだよ。君の名前を教えてくれる?」
「ティリア・フローレンス……です」

 白銀の髪でアメジストの瞳をしたティリアは、侍女の背からおずおずと顔を出す。ライルが笑い掛けると、ティリアも安心したように微笑んだ。その可憐な姿に、ライルの目は驚きに見開かれる。

「もしかして君は妖精なの?」
「えっ?」

 ティリアは小首を傾げて不思議そうにしている。

「ライル!」

 グローツ子爵はライルを叱責した。

「二度言わせるな。ティリア様は『お前が将来仕えるべき御方』だ。分をわきまえろ」
「は、はい父上。申し訳ありません」

 ギロリと睨まれたライルは、背筋を伸ばしてティリアに向き直る。

「ティリア様。僕はライル・グローツです。よろしくお願いします」
「不肖の息子ですが、いずれはコレが貴女様の護衛騎士となります。どうぞよしなに」
「……」

 ライルの雰囲気が目に見えて固くなった事で、ティリアは再度侍女の背に隠れてしまった。
 それを見たグローツ子爵とライルは、ティリアに一礼してから場を離れる。

 ティリアは警戒心が強く引っ込み思案だが、それも仕方のない事だ。家族からの愛情が一切与えれておらず、むしろ疎まれていたのだから。

 フローレンス公爵家には、先妻の子である4歳のティリアと、異母妹で年子のミリーナがいる。

 先妻がティリアを生んで儚くなった時、公爵はこれ幸いと、自身の子を身籠っていた愛人を後妻として招き入れた。

 ゆえに公爵夫妻の愛情はミリーナに注がれている。望まれない子であるティリアが、今後も冷遇されていくのはグローツ子爵の目にも明らかだった。

 だからこそ「天啓なし」と判定された落ちこぼれのライルが、ティリア付きの護衛騎士としてあてがわれたのだ。

「ふん。ティリア様に感謝しろ」
「父上?」
「そうでなければ天啓なしのお前なぞ、平民落ちの未来しかなかったのだからな」

 心無い発言だったが、ライルは気にならなかった。ティリアの護衛騎士となれる事を、心から嬉しく思っていたからだ。

 △

 ライルが一命をとりとめた翌日。

 フローレンス公爵邸の応接間では、侍女が机上に茶器を並べている。給仕が終わると、後ろに下がって護衛と共に退出していった。
 扉が閉まったのを確認すると、2人の当主は話し出す。

「忌々しい男だ」
「ええ。腹立たしい限りです」

 フローレンス公爵とグローツ子爵は、向かい合って渋い顔をしている。2人の心境は似ていた。

 大陸覇者闘技会を制したライル。蘇生魔法を使ったティリア。しかし双方共にその素晴らしき力は失われ、もう二度と見る事が叶わない。

「ティリアとは縁を切る。当主の命に従わん娘など不要だ」
「ティリア様は魔力を失いましたからな。貴族に嫁ぐにしろ妾になるにしろ、多少なりとも魔力は必要ですし。魔力全喪失では縁切りが妥当でしょう」

 フローレンス公爵はフッと鼻で笑う。

「ライルの処遇はどうするつもりだ?」
「捨てますよ。グローツ子爵家に無能者は要りません」

「情は沸かんのか?」
「いいえ全く。そういうフローレンス公爵はどうなんですか?」

「ふん。この程度で揺らぐなら公爵家の当主などやっとらんよ」
「綺麗事で家は継げませんからな」

「お互い苦労するな」
「全くです」

 ライルとティリアの廃籍が決まった瞬間だった。
 こうして、2人は隣国を目指す事となる。
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