神獣ヤクザ ~もふもふ神獣に転生した世話焼きヤクザと純粋お嬢の異世界のんびり旅~

和成ソウイチ

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71話 不遜な奴らの本音

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 俺が『物語った』ことで、本から光が溢れ出す。
 それは無表情のままだった3人組へ、はらはらと降り注いだ。

 すると、3人娘の表情に変化が訪れる。
 ぼんやりして焦点の合わなかった瞳に、少しだけ意志の光が戻ってきたのだ。
 やはり思った通り。
 しかし、まだ弱い。

 3人は俺たちを見ると、『げっ』とばかり表情を歪めた。
 ……ほお。感情が戻った途端にソレか。へぇ。

『あなたたち、今の態度は何ですかぁ? さっきの態度は! ええ!?』
『君ら、あんなすっばらしい歌声を聞いて何も思わないのかな!? ん!? あまつさえケルアお嬢ちゃんを小馬鹿にする態度を取ったよね? ねえ取ったよね!? どういうことか、おじさんたちに説明してもらえるかなぁ!?』

 これ見よがしに再びガン詰めするポン刀聖女と変態前館長。鼻先がくっつきかねないほどに迫ってくるこいつらに、今度は3人娘も反応した。青くなってドン引きである。

 お嬢が無言のままシーカとブロンテンを引っ張った。割と強めだったので、すぐにふたりは大人しくなる。
 ついでに俺も睨まれた。はい申し訳ありません。

 お嬢は深呼吸すると、3人娘に言った。

「よかったら、もう一度聞いて貰えないかな。あなたたちにも届けたいんだ」
『うっひょおケルアお嬢ちゃんの天使ボイスがもう一度聞け――もが』
「さすがに自重しろ変態紳士」

 堂々と横槍を入れようとするブロンテンを、シーカと一緒になって引き剥がす。

 顔を見合わせる3人娘に、お嬢は微笑みかける。
 そして、再びゆっくりと歌い出した。
 今度は囁くように、丁寧に、寄り添うように。
 デカすぎる優しさが感じられる歌声だ。その懐は富士山よりデカく、駿河湾より深い。そう確信した。
 お嬢の声は虹の光を生む。俺の手元にあった本だけでなく、ファンマが周囲に浮遊させている本もほのかに輝き始める。
 それは俺なんかよりもずっと強い。

 癒やしの光に当てられたように、3人娘は心地よさそうに目を閉じた。ふん、そんな表情ができるなら、最初からお嬢に拍手喝采していろってんだ。

 心なしか、3人娘の顔に血色が戻っているような気がした。

 お嬢の歌が終わる。
 目を開けた3人娘に、お嬢が手を差し伸べた。

「歌を聴いてくれて、ありがとう。私はそれだけで嬉しい」
『あ……』

 3人娘はおずおずとお嬢の手を取る。3人が3人とも寄ってくるものだから、大渋滞だ。だが、お嬢は嫌がることなくそれを受け入れる。むしろ満足そうですらある。
 さすがお嬢。その慈悲、マリアナ海溝よりも深い。
 ふと、3人娘のひとりが俯いた。嗚咽が小さく聞こえる。泣いているのだ。まさか、ここまで激しく感情が揺さぶられるとは。

『ごめんなさい』
『あなたの歌で、思い出してしまったの』
『私たち、昔聖女を目指して、それが叶わなかったの。だから、あなたのように歌えるのが妬ましくて』

 3人娘はぽつりぽつりと告白する。
 なるほど。
 こいつらは元聖女候補だったのか。
 そして夢破れて、大図書館の司書となって今に至る、と。
 聖女としての力を見せつけたお嬢が、眩しかったということだろう。

 なるほどなるほど。
 お嬢を眩しく思う気持ち、わからんでもない。
 が、それはそれ。これはこれ。
 お嬢への不遜な態度は断じて許されるべきでは――。

「ヒスキさん?」
「しゃあねえ。許してやっか」
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