神獣ヤクザ ~もふもふ神獣に転生した世話焼きヤクザと純粋お嬢の異世界のんびり旅~

和成ソウイチ

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77話 修行の成果

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 マッチョはともかく、イティスの夢業とやらが本当に修行になっていたかは気になる。
 提案を拒否されてちょっと拗ねていた半人前舎弟に聞く。

「お前が見ていた夢は、夢業と呼ばれる大図書館特有の修行方法のようだ。改めて聞くぞイティス。何か身体に変化は感じられるか? 動きが軽かったり、力が漲ってきたり」
「うーん」

 イティスはぐるぐる腕を回したり、その場でジャンプしたりした。そしてむつかしげに首を傾げる。
 手応えはあっても言語化は難しいのだろう。
 ならば、やることはひとつだ。

「試してみるしかねぇな。夢業が有効かどうかで、今後の方針はだいぶ違う」
「わかった。でもどうやって確かめるの、兄貴様?」
「そりゃあ、実力を確認するとなれば組み手だろう」

 そう言って、俺はイティスを促して部屋を出る。

「お前らもついてこい。シーカ、ブロンテン」
『へ?』

 きょとんとする変態オタクどもも、有無を言わさず引っ張った。
 お嬢やファンマ、メミポラ3幽霊たちも何をするのかとついてくる。

 やってきたのは、お嬢がライブを開いたあの中庭。俺の【カシワブラッド】のおかげで、緑豊かな場所になっている。
 ここなら広さは十分だろう。

「ブロンテン。そこに立て」
『え。何だか嫌な予感がするんだけど』
「立てや」
『承知』

 開けた場所にブロンテンを立たせた俺は、【カシワブラッド】を発動させた。
 周辺の植物たちが、ツタや葉を伸ばしてくる。
 俺はそれらを操作して、ブロンテンに巻き付けた。何だか元館長がわーわー言っていたが、気にしない。
 俺の中では、ブロンテンの安全より舎弟のお披露目会の方が重要である。
 ブロンテンの顔だけを残し、奴の四肢に植物で作った即席の外部装甲をまとわせる。
 あっという間に、二足歩行の機械兵もどきが誕生した。色は気になるが、フォルムは我ながらなかなか良い感じである。

「おお! 兄貴様すごい! 格好いい!」
「だろう。そうだろう」
「あ、わかった。これをオークに見立てて倒せばいいんだね」
「うむ。さすがにここまで俺を見てきただけはある。よく気付いた。褒めてやろう」
「えへへ」
『ちょっとおふたりさん?』

 ブロンテンが抗議の声を上げたが気にしない。さっきも言ったが優先順位はすでに決まったのだ。

 俺はシーカに向き直った。

「イティスの武器はお前だ、シーカ。もう勝手はわかってるだろ? しっかり務めを果たせ」
『わっかりました! 気合い十分です。どんなものでも一刀両断にしますから、思う存分アタシを振るってくださいね、イティス嬢!』
『おいちょっと!?』

 再度の抗議をポン刀聖女も無視した。こちらの意図をよく分かっている。

『ええい。こうなったらヤケだ。来るならこーい! うおーっ!』

 ヤケクソになった装甲ブロンテンが両手を広げて雄叫びを上げる。
 聖剣モードになったシーカをしっかりと握ったイティスは、表情を引き締めて装甲ブロンテンに相対する。

 そして、地面を蹴った。

 聖剣を一閃させる。

 ――勝負は、あっけなくついた。
 イティスの剣は、あっという間にブロンテンの装甲をズタズタに引き裂いたのだ。今、奴は大の字になって伸びている。
 ったく。もっと気合い入れろ、気合い。

 だが、収穫はあった。

 イティスの動きは確かに向上していたのだ。でなければ、いかに聖剣を振るったといっても、幾重にも束ねられた植物をああも容易く両断することはできないだろう。

 イティスもまた納得の表情で振り返る。

「うん。動く。動ける。夢の中で頑張ったとおりだよ、兄貴様!」
「よし。少しずつ修行の形が見えてきたな」

 満足そうに頷く俺の傍らで、大の字になったブロンテンが呟く。

『尊い犠牲に今少し配慮を……』
「そうだな。植物たちには悪いことをした」

 にべもなく俺が言うと、ブロンテンはがっくりと力を抜いた。
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