聖女の死後は引き受けた ~転生した私、新米女神の生前の身体でこっそり生きる~

和成ソウイチ

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【61】特別な素材

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 すべてを諦めかけていた私だが、ふと気付く。
 そもそも、お酒の材料ってなに?
 そんな武装しないと採取できないモノなの?
 それとも……まさか。

「まさか、今から皆でどこかの有名な酒蔵を襲撃しよう、なんて言うんじゃないでしょうね」
「…………」

 みんなしてドン引きしないで。
 え、またこれ、私が悪い流れなの?

「お姉様。ご安心ください。わたくしたち、そんな非道なことは行いません」
「そうだね。非道だよね。安心したよ私。……ぐす」

 目尻を拭い、改めてたずねる。

「素朴な疑問なんだけど、私の名前を冠するお酒って、どうやって作るの? そもそも私、お酒の造り方なんて詳しくないんだけど……」

 日本酒だったら麹から、ワインだったらぶどうを発酵させたものから――ってくらいの知識しかない。

 私が材料? いや、まさか。

「まさか、私の身体を材料にして作る、なんて言うんじゃないでしょうね。その……汗とか、血とか」
「…………」

 二度目のドン引き。
 あ、いや違う。

「お姉様の……お姉様の、汗……くふふ」
「あの、アムルちゃん?」
「聖女様の体液入りの御神酒……これは、何という破壊力だ」
「お父様?」
「ハァハァ……ハァハァ……」
「お、お母……様?」

 皆、その光景を想像して悦に入っている。
 ディル君が上機嫌で言った。

「素晴らしい感性の持ち主たちですね。人間にしておくのは勿体ない逸材です。そう思いませんか、主様」
「同意できかねる」

 もう私、ここでヒビキとふて寝してていいですか?

 ――それから。
 皆の中で一番最初に冷静さを取り戻したのはお父様だった。
 いつの間にか持ち出していた本を開く。たぶんあれが、酒造りの本とやらだろう。

「聖女カナデ様。今回の御神酒造りには、特別な素材を使います。この書物によると、その素材を手に入れるには、カナデ様のご協力が欠かせません」
「そりゃあ協力できることならしますけど……その、特別な素材とは?」

 お父様の瞳がキラリと光る。

「幻の……毒沼です」
「まさかの猛毒」
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