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【69】楽しいのか?
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――あれから一週間が経過した。
無事に――無事に?――浄化素材を採取し終えた私たちはお城へ帰還。
その日のうちに、アムルちゃんたちは素材の一部を持ってレギエーラに戻っていった。
一週間。そうあれからもう一週間だ。
でも私は、いまだにあのときを引きずっている。
朝。
寝室に新たに加わった立派なベッドから身体を起こす。
あくびとともに背伸びをしていると声をかけられる。
『おはようございます聖女様』
「うん……おはよー」
『お着替えをお持ちしました。御髪を整えますね』
「いや、自分でできるから大丈夫だよ。ありがとう『スカーレット』ちゃん」
失礼いたしました、と深々と腰を折るメイド服姿の『私』。
もとい、元枯れ木人形ちゃん。
丁寧に着替えをテーブルの上に置くと、にこりと微笑む。そして再度、見事なおじぎ。
大きな赤色のリボンで結い上げた金髪を揺らし、『スカーレット』ちゃんは部屋を後にした。
ねえ、あれってさ。
私より聖女っぽくない?
淑やかでさ、仕草も女性らしくてさ、思いやりと優しさに溢れてさ。
そりゃあもう、めっっっちゃ引きずってますよ私。
私よりあの子『たち』の方がカナディア様っぽいってね! へこむわ!!
――説明します。
幻の毒沼を浄化した私とアムルちゃんの魔力は、そこにいた枯れ木人形ちゃんたちにも大きな影響を与えた。
それが『人化』。私と瓜二つの姿に変身したのだ。
どうやら、もともと枯れ木人形たちには何かに擬態する能力が備わっていたらしい。それが私やアムルちゃんの強い聖魔力を受けて、いわば『聖女カナデの姿をコピーする力』に昇華したようだ。
ディル君とアムルちゃんお父様の弁である。
枯れ木人形たちは私の姿になったことをあっさり受け入れた。それどころか涙を流しそうなくらいに感激して、『ぜひ仕えさせて欲しい』と懇願してきた。
さすがにこれほど大勢は無理だよ――と答えると、彼らはすぐさまメンバーを選抜し、城までやってきた。
その数、十二名。
みんな、見た目がまったく同じで、言動もほぼ一緒だったため、区別がつかない。
悩んだ私は、彼女らに大きなリボンを手渡し、その色で見分けることにしたのだ。個体名も、色にちなんで付けている。
十二色のメイドたち――彼女らを『カラーズ』と呼ぶ。
ちなみに、他の枯れ木人形たちは本来の姿に戻り、今も幻の毒沼で暮らしている。彼らが言うには、『いつお呼び出しがかかっても良いように待機している』とのこと。
――身だしなみを整えた私は、ため息をつきながら寝室の扉を開ける。
ディル君が嬉しそうに言っていたな。
二千人の影武者ができましたね、って。うるさいわ。やめて。
鬱々とした表情のまま廊下に出る。
弟わんこが立っていた。
ガスマスク装備中だった。
「しゅこここ!」
「………………」
それ付けて笑うの気に入ったんだね。
楽しいか? 楽しいのか? ん?
無事に――無事に?――浄化素材を採取し終えた私たちはお城へ帰還。
その日のうちに、アムルちゃんたちは素材の一部を持ってレギエーラに戻っていった。
一週間。そうあれからもう一週間だ。
でも私は、いまだにあのときを引きずっている。
朝。
寝室に新たに加わった立派なベッドから身体を起こす。
あくびとともに背伸びをしていると声をかけられる。
『おはようございます聖女様』
「うん……おはよー」
『お着替えをお持ちしました。御髪を整えますね』
「いや、自分でできるから大丈夫だよ。ありがとう『スカーレット』ちゃん」
失礼いたしました、と深々と腰を折るメイド服姿の『私』。
もとい、元枯れ木人形ちゃん。
丁寧に着替えをテーブルの上に置くと、にこりと微笑む。そして再度、見事なおじぎ。
大きな赤色のリボンで結い上げた金髪を揺らし、『スカーレット』ちゃんは部屋を後にした。
ねえ、あれってさ。
私より聖女っぽくない?
淑やかでさ、仕草も女性らしくてさ、思いやりと優しさに溢れてさ。
そりゃあもう、めっっっちゃ引きずってますよ私。
私よりあの子『たち』の方がカナディア様っぽいってね! へこむわ!!
――説明します。
幻の毒沼を浄化した私とアムルちゃんの魔力は、そこにいた枯れ木人形ちゃんたちにも大きな影響を与えた。
それが『人化』。私と瓜二つの姿に変身したのだ。
どうやら、もともと枯れ木人形たちには何かに擬態する能力が備わっていたらしい。それが私やアムルちゃんの強い聖魔力を受けて、いわば『聖女カナデの姿をコピーする力』に昇華したようだ。
ディル君とアムルちゃんお父様の弁である。
枯れ木人形たちは私の姿になったことをあっさり受け入れた。それどころか涙を流しそうなくらいに感激して、『ぜひ仕えさせて欲しい』と懇願してきた。
さすがにこれほど大勢は無理だよ――と答えると、彼らはすぐさまメンバーを選抜し、城までやってきた。
その数、十二名。
みんな、見た目がまったく同じで、言動もほぼ一緒だったため、区別がつかない。
悩んだ私は、彼女らに大きなリボンを手渡し、その色で見分けることにしたのだ。個体名も、色にちなんで付けている。
十二色のメイドたち――彼女らを『カラーズ』と呼ぶ。
ちなみに、他の枯れ木人形たちは本来の姿に戻り、今も幻の毒沼で暮らしている。彼らが言うには、『いつお呼び出しがかかっても良いように待機している』とのこと。
――身だしなみを整えた私は、ため息をつきながら寝室の扉を開ける。
ディル君が嬉しそうに言っていたな。
二千人の影武者ができましたね、って。うるさいわ。やめて。
鬱々とした表情のまま廊下に出る。
弟わんこが立っていた。
ガスマスク装備中だった。
「しゅこここ!」
「………………」
それ付けて笑うの気に入ったんだね。
楽しいか? 楽しいのか? ん?
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