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1章 ユウキ少年、転生してもふもふ家族院の院長先生になる
第2話 目覚めて思ったこと
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――ユウキは、青空の下で目を覚ました。仰向けに寝転がって、空を見上げている。
最初、ユウキ少年は自分に見ているモノが何なのか、よくわかっていなかった。
「天井……きれいな青色に塗ってくれたのかな……」
ぼんやりとつぶやく。
天宮ユウキは、生まれてからこの方、青空を真下から見上げたことがなかったのである。
千切れ雲がゆっくりと青空を泳いでいる。風の感触や梢の音が心地良い。空を見上げたままうとうとしてきたユウキは、そのままもう一度目を閉じた。
――そして、すぐに飛び起きる。
「あれ? あれ? 僕は、どうして」
確か、死んでしまったはず。
これは夢?
「でも、死んじゃったときのことは覚え……てる……し……」
独り言をつぶやきながら、口元に両手をやる。
そして今度は喉へ。
さらに両腕やお腹、足を触る。
呼吸器を付けてない。
点滴もない。
血が滞らないように足に付けていた器具もない。
服は入院着ではなく、温かい長袖の服に長ズボン。これまで数回しか身につけたことのない、普通の衣服だ。
ユウキは手のひらを見た。骨と皮ばかりの細く真っ白だった手が、年相応にふっくらと肉が付いて、健康そのものの血色を取り戻していた。何度か握って、開く。自分の思い通りに動いた。
ドキドキしながら、自分の頬をつまむ。ぐいっと力を入れると、緩やかな痛みが広がった。
薬の痛みや手術後の痛みとはぜんぜん違う、涙が出るほど優しい痛み。
「夢、じゃないんだ」
ユウキはごくりと唾を飲み込んだ。
膝に手を突き、ゆっくりと立ち上がる。
ふらつくことは一切なかった。両脚は、力強く身体を支えてくれる。
二本の足でしっかりと立ち上がった瞬間、少し強めの風がぶわっと吹き抜けた。殺菌された空気とはぜんぜん違う、濃い緑の匂いを含んだ空気を胸一杯に吸い込む。
そしてもう一度、空を見上げた。
優しげな目を細める。柔らかい黒髪を風にたなびかせる。10歳らしい可愛さと同時に、男の子の凜々しさも兼ね備えた顔に、微笑みが浮かぶ。
自由に呼吸する。自由に喋る。自由に立ち上がり、自由に笑う。
これまでできなかったことができるようになった感動で、ユウキはブルブルと震えた。
「夢じゃ、ないんだー!」
両手を突き上げて喜んだ。
そうしてしばらく辺りを駆け回っていたユウキは、ふと、我に返った。
でも、だとしたら……ここはどこ?
改めて、辺りを見回す。
周囲には森が広がっていた。ユウキがいるのは、そこにぽっかりとあいた広場の真ん中だ。
もちろん、病院周辺とはまったく違う。
人の気配はない。
ここがどこか、どこに行けばいいのかもわからない。
ユウキは、自分の頬に右手を当てた。手のひらの温かさで、血が通っているのがわかる。
「うん」
ひとつうなずく。
「なんかなるよ。生きてるだけで、もうじゅうぶんだし」
心の底から言う。
ユウキ少年にとって、生前はあまりにもつらすぎた。それがかえって、彼に普通の10歳児にはない鋼のメンタルをもたらしていたのだ。
つまり――『生きているだけで儲けもの』である。
もうちょっと探検しようかなと、むしろワクワクしながら辺りを見回すユウキ。
そこへ――。
『ああっ、良かった。目が覚めたのですね』
これまで聞いたことのないような綺麗な声で、ユウキは呼びかけられた。
最初、ユウキ少年は自分に見ているモノが何なのか、よくわかっていなかった。
「天井……きれいな青色に塗ってくれたのかな……」
ぼんやりとつぶやく。
天宮ユウキは、生まれてからこの方、青空を真下から見上げたことがなかったのである。
千切れ雲がゆっくりと青空を泳いでいる。風の感触や梢の音が心地良い。空を見上げたままうとうとしてきたユウキは、そのままもう一度目を閉じた。
――そして、すぐに飛び起きる。
「あれ? あれ? 僕は、どうして」
確か、死んでしまったはず。
これは夢?
「でも、死んじゃったときのことは覚え……てる……し……」
独り言をつぶやきながら、口元に両手をやる。
そして今度は喉へ。
さらに両腕やお腹、足を触る。
呼吸器を付けてない。
点滴もない。
血が滞らないように足に付けていた器具もない。
服は入院着ではなく、温かい長袖の服に長ズボン。これまで数回しか身につけたことのない、普通の衣服だ。
ユウキは手のひらを見た。骨と皮ばかりの細く真っ白だった手が、年相応にふっくらと肉が付いて、健康そのものの血色を取り戻していた。何度か握って、開く。自分の思い通りに動いた。
ドキドキしながら、自分の頬をつまむ。ぐいっと力を入れると、緩やかな痛みが広がった。
薬の痛みや手術後の痛みとはぜんぜん違う、涙が出るほど優しい痛み。
「夢、じゃないんだ」
ユウキはごくりと唾を飲み込んだ。
膝に手を突き、ゆっくりと立ち上がる。
ふらつくことは一切なかった。両脚は、力強く身体を支えてくれる。
二本の足でしっかりと立ち上がった瞬間、少し強めの風がぶわっと吹き抜けた。殺菌された空気とはぜんぜん違う、濃い緑の匂いを含んだ空気を胸一杯に吸い込む。
そしてもう一度、空を見上げた。
優しげな目を細める。柔らかい黒髪を風にたなびかせる。10歳らしい可愛さと同時に、男の子の凜々しさも兼ね備えた顔に、微笑みが浮かぶ。
自由に呼吸する。自由に喋る。自由に立ち上がり、自由に笑う。
これまでできなかったことができるようになった感動で、ユウキはブルブルと震えた。
「夢じゃ、ないんだー!」
両手を突き上げて喜んだ。
そうしてしばらく辺りを駆け回っていたユウキは、ふと、我に返った。
でも、だとしたら……ここはどこ?
改めて、辺りを見回す。
周囲には森が広がっていた。ユウキがいるのは、そこにぽっかりとあいた広場の真ん中だ。
もちろん、病院周辺とはまったく違う。
人の気配はない。
ここがどこか、どこに行けばいいのかもわからない。
ユウキは、自分の頬に右手を当てた。手のひらの温かさで、血が通っているのがわかる。
「うん」
ひとつうなずく。
「なんかなるよ。生きてるだけで、もうじゅうぶんだし」
心の底から言う。
ユウキ少年にとって、生前はあまりにもつらすぎた。それがかえって、彼に普通の10歳児にはない鋼のメンタルをもたらしていたのだ。
つまり――『生きているだけで儲けもの』である。
もうちょっと探検しようかなと、むしろワクワクしながら辺りを見回すユウキ。
そこへ――。
『ああっ、良かった。目が覚めたのですね』
これまで聞いたことのないような綺麗な声で、ユウキは呼びかけられた。
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