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1章 ユウキ少年、転生してもふもふ家族院の院長先生になる
第5話 もふもふ家族院の院長先生
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天使マリアが立ち上がる。
『では、そろそろ行きましょうか。ユウキ』
「どこにですか?」
『あなたがこれから住むところです。さすがに、こんな森の中に放り投げることはありませんよ』
手を差し伸べられたので、ユウキは彼女の手を握った。
木々の一角、わずかに踏み固められた小道を進む。
『本当なら、目が覚めたときに家族院のベッドに寝かせてあげたかったのですが……そうすると、なかなか私が気軽に話しかけにくくなってしまうので』
「家族院?」
『そう。この森は特別な聖なる結界に護られた土地。そして、ここに暮らす子どもたちが寝食を共にする場所があるのです』
「他にも僕みたいな子がいるの!?」
『ええ。さすがに他の子たちは転生者でないのですが、皆、あなたと同い年。これからあなたは、その子たちと一緒に暮らすのですよ』
ユウキは頬を紅潮させた。
同い年の子どもたちと、一緒に生活する。それは、生前のユウキが一生かけても叶わなかった夢だった。
「ドキドキしてきた……!」
『ふふ。ユウキなら大丈夫ですよ。すぐ、皆と打ち解けることができるでしょう』
「僕、勉強は教えてもらったことあるけど、学校には行ったことない……でも、そっか。天使さまがそう言うなら、きっと大丈夫だよね」
生きているだけで幸せ――そんな強靱なメンタルを持つユウキは、未知の不安感もあっさりと乗り越えていく。
彼は天使マリアを見上げた。
「じゃあ、先生は天使さま? それとも、誰か大人の人がいるの?」
『人間は、子どもたちだけです。皆で力を合わせて、困難を乗り越えていくのですよ。安心なさい。この聖域はあなたたちの味方。日々の暮らしに不自由はありません』
「そうなんだ。えっと、家族院?」
『正式な名は、ずばり――【もふもふ家族院】です!』
もふもふ、とユウキはつぶやいた。満面の笑みで言う。
「かわいいですね!」
『ええ、本当に』
明後日の方向を見ながら力強くうなずく天使。
「でも、天使さまも大人のひともいないのなら、誰が院長先生なんだろう?」
『そのことですが、ユウキ』
ふと、天使マリアが歩みを止め、ユウキと目線を合わせた。
『もふもふ家族院の院長先生は、あなたに勤めてもらいたいと思っています。実はすでに、家族院の皆にもそう伝えているのですよ』
「え!? 僕!?」
『はい。私はあなたが適任だと考えます。複数の魂を秘めた転生者であること、私と直接話ができる立場にあること……他にも理由はありますが、一番は、ユウキがとても健気で、責任感が強い子だと思ったからです』
亡くなるそのときまで、誰かの役に立ちたいと考える人間はとても少ない――と天使マリアは言った。
『確かにあなたはまだ子どもですが、院長先生になれる素質は十分にあります。私のため、そしてこれから家族となる子どもたちのため。院長先生の仕事、引き受けてくださいますか?』
「天使さま……」
ユウキは目を大きく見開いた。
彼の心は大きく動いていた。感動に震えたと言ってもいい。
まさか、自分の夢に、追い求めていた姿に、こんなにも早く追いつけるなんて。
誰かの役に立ちたい。
もふもふ家族院の院長先生として頑張ることは、きっと皆のためになる。天使さまも、院長になることを望んでくれている。
ならば、ユウキの答えはひとつだった。
「うん。わかったよ、天使さま。僕、もふもふ家族院の院長先生、頑張ります!!」
そう力強く口にした瞬間、ユウキの胸の中がほわっと温かくなった。
まるで、彼の心の中にいる転生者たちの魂が、ユウキを応援してくれるように。
ユウキは両手を握りしめた。なにも怖くない――そんな力強さと、将来への希望とで瞳をキラキラと輝かせる。
――その純粋さを真正面から浴びた天使マリアは、本当ならもう少し説明しようと思っていた事柄の大部分を頭からすっ飛ばし、ただただ無限の微笑みを浮かべ、この小さな院長先生を見つめていた。
『では、そろそろ行きましょうか。ユウキ』
「どこにですか?」
『あなたがこれから住むところです。さすがに、こんな森の中に放り投げることはありませんよ』
手を差し伸べられたので、ユウキは彼女の手を握った。
木々の一角、わずかに踏み固められた小道を進む。
『本当なら、目が覚めたときに家族院のベッドに寝かせてあげたかったのですが……そうすると、なかなか私が気軽に話しかけにくくなってしまうので』
「家族院?」
『そう。この森は特別な聖なる結界に護られた土地。そして、ここに暮らす子どもたちが寝食を共にする場所があるのです』
「他にも僕みたいな子がいるの!?」
『ええ。さすがに他の子たちは転生者でないのですが、皆、あなたと同い年。これからあなたは、その子たちと一緒に暮らすのですよ』
ユウキは頬を紅潮させた。
同い年の子どもたちと、一緒に生活する。それは、生前のユウキが一生かけても叶わなかった夢だった。
「ドキドキしてきた……!」
『ふふ。ユウキなら大丈夫ですよ。すぐ、皆と打ち解けることができるでしょう』
「僕、勉強は教えてもらったことあるけど、学校には行ったことない……でも、そっか。天使さまがそう言うなら、きっと大丈夫だよね」
生きているだけで幸せ――そんな強靱なメンタルを持つユウキは、未知の不安感もあっさりと乗り越えていく。
彼は天使マリアを見上げた。
「じゃあ、先生は天使さま? それとも、誰か大人の人がいるの?」
『人間は、子どもたちだけです。皆で力を合わせて、困難を乗り越えていくのですよ。安心なさい。この聖域はあなたたちの味方。日々の暮らしに不自由はありません』
「そうなんだ。えっと、家族院?」
『正式な名は、ずばり――【もふもふ家族院】です!』
もふもふ、とユウキはつぶやいた。満面の笑みで言う。
「かわいいですね!」
『ええ、本当に』
明後日の方向を見ながら力強くうなずく天使。
「でも、天使さまも大人のひともいないのなら、誰が院長先生なんだろう?」
『そのことですが、ユウキ』
ふと、天使マリアが歩みを止め、ユウキと目線を合わせた。
『もふもふ家族院の院長先生は、あなたに勤めてもらいたいと思っています。実はすでに、家族院の皆にもそう伝えているのですよ』
「え!? 僕!?」
『はい。私はあなたが適任だと考えます。複数の魂を秘めた転生者であること、私と直接話ができる立場にあること……他にも理由はありますが、一番は、ユウキがとても健気で、責任感が強い子だと思ったからです』
亡くなるそのときまで、誰かの役に立ちたいと考える人間はとても少ない――と天使マリアは言った。
『確かにあなたはまだ子どもですが、院長先生になれる素質は十分にあります。私のため、そしてこれから家族となる子どもたちのため。院長先生の仕事、引き受けてくださいますか?』
「天使さま……」
ユウキは目を大きく見開いた。
彼の心は大きく動いていた。感動に震えたと言ってもいい。
まさか、自分の夢に、追い求めていた姿に、こんなにも早く追いつけるなんて。
誰かの役に立ちたい。
もふもふ家族院の院長先生として頑張ることは、きっと皆のためになる。天使さまも、院長になることを望んでくれている。
ならば、ユウキの答えはひとつだった。
「うん。わかったよ、天使さま。僕、もふもふ家族院の院長先生、頑張ります!!」
そう力強く口にした瞬間、ユウキの胸の中がほわっと温かくなった。
まるで、彼の心の中にいる転生者たちの魂が、ユウキを応援してくれるように。
ユウキは両手を握りしめた。なにも怖くない――そんな力強さと、将来への希望とで瞳をキラキラと輝かせる。
――その純粋さを真正面から浴びた天使マリアは、本当ならもう少し説明しようと思っていた事柄の大部分を頭からすっ飛ばし、ただただ無限の微笑みを浮かべ、この小さな院長先生を見つめていた。
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