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6章 やんちゃ少年レンといたずらスライム
第34話 怒りっぽい少年
しおりを挟む池のほとりに近づくと、より声がはっきり聞こえてきた。
「やい! 隠れてないで、さっさと出てきやがれ! そしてオレと勝負しろ!」
……いきなり穏やかでない会話であった。
声を荒げているのは赤髪ツンツン頭の少年レンだ。彼はどういうわけか、静かな池の水面に向かって怒鳴っている。
ヒナタが呆れた声で呼びかけた。
「ちょっとレン。そんな乱暴なこと言って、なにがあったのよ」
「ああん? なにってヒナタ、おまえ――」
言いかけ、レンが口を閉ざす。
振り返った彼の視線が、ユウキに釘付けになった。
「てめえ、誰だよ?」
半眼で睨まれた。
これまでユウキが接してきた子どもたちの中で、最も凄みのある声と表情である。
目つきが悪く、姿勢もちょっと猫背気味。あちこち走り回っているせいか、手足だけでなく頬にもちょっと土汚れが付いている。
だがユウキは気圧されなかった。むしろ、これまで出逢ったことのないタイプの子に興奮した様子だった。
手を差し出す。
「はじめまして。ユウキです。今日からもふもふ家族院の院長先生になりました。よろしくね」
「院長先生だぁ? ……ああ、そういや天使様がそんなこと言ってたらしいな」
ぼそりと付け加えるレン少年。ユウキはその一言で、レンが悪い子ではないと直感した。
ニコニコ顔で差し出した手。それをレンは振り払う。
「はっ。いきなり出てきて、はいそうですかってすぐに仲良くできるもんか」
「ちょっとレン!」
ヒナタが眉を逆立てる。レン少年は鼻の頭をかいた。
「ああもう、うるさいなあ。こっちはそれどころじゃないってのに」
「なにがあったの?」
「新入りにはすぐに教えてやるもんか」
ユウキの問いかけにそっぽを向きながら答える少年。ユウキは目をぱちくりさせた。
「テレビで見たことあったけど、本当に言ってる子、初めて見た」
「ああん!? なんだよ『てれび』って!」
「それはね――」
レンの隣に肩を寄せ、身振り手振りでテレビの形や機能を説明するユウキ。他の子たちも興味深そうに近寄ってきた。
「――っていうのがテレビだよ」
「へーえ。お前の住んでた余所の世界にはそんなモンがあったんだなあ――って! オレは騙されねえぞ!」
「騙してなんかないのに。レンみたいな台詞をテレビで見たってだけで。ちょうど、このぐらいの小っちゃい子が同じ台詞を言ってた」
「オレは小っちゃくねえ!」
地団駄を踏むレン。ユウキは自分の胸元あたりに手を掲げたまま、不思議そうに首を傾げた。
ヒナタが耳打ちする。
「レンはね。家族の中で一番背がちっちゃいから、気にしてるの」
「そうなんだ。それは悪いことをしたね」
ユウキは頭を下げた。
「ごめんね、レン」
「謝んなよはずかしい!」
握りこぶしを作って語気を強めるレン少年。ちょっと言葉遣いが悪いだけで、根っこは皆と一緒で良い子なんだなあとユウキは思った。ちゃんと話は聞いてくれるし、話題に乗っかってくれるし。
新しい院長先生がまったく動じていない様子に、レンは疲れたように肩を落とした。
「もう、まったく……なんなんだよコイツ。いきなりやってきて、わけわかんねえ」
「レンが誰彼構わず噛みつくからでしょ。ユウキは最初っからこんな子だよ」
「ああもう、ちくしょう! めんどくせえ!」
「すーぐかんしゃく起こす」
ヒナタが呆れた。ユウキはうなずく。
「レンがちょっと怒りっぽいってのは、よくわかったよ」
「おい!」
「それで、さっきはなんで怒ってたの?」
池の水面を見る。ユウキたちが来る前、確か彼は水面に向かって怒鳴っていた。
川の上流にあたるこの場所も、透明度が高い。ほとりから観察する限り、なにか気になるものは見当たらなかった。
レンは眉根を寄せたままだ。
「だーから、アイツが引っ込んだまま出てこねぇから怒ってんじゃねえか」
「あいつ?」
ユウキとヒナタは顔を見合わせ、そろって首を傾げる。
怒りがぶり返してきたのか、レンは詳しく説明する間もなく、再び池に向かって大きな声を上げ始めた。
彼を落ち着かせようとしたとき、ユウキに話しかけてくる声があった。
「あの。ボクから説明、してもいいかな? 院長先生」
そう言って遠慮がちに前に出てきたのは、レンと一緒にいた銀髪の男の子ソラだった。
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