僕はもふもふ家族院の院長先生!!

和成ソウイチ

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8章 星望むミオと眠れない夜

第59話 階段下のから騒ぎ

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 ひととおり話し終わったユウキとミオは、一緒に部屋を出た。そろそろ夕食の時間である。

「じゃ、今後の授業方針とスケジュールは、また改めて決めましょう」
「はい。わかりましたミオ先生」
「……なんかわざとらしいわね」
「そう? でもミオも、また満更でもなさそうな顔してるよ」
「なっ……!?」

 慌てて眼鏡を取り、顔を触るミオ。ユウキは笑った。
 ふたりで階段を降りようとすると、階下からじーっと見上げる仲間たちと目が合った。
 ユウキは何気なく言った。

「ごめんね、遅くなっちゃった。ミオとのお話が盛り上がっちゃって――皆? どうかした?」
「いや、どうかしたって、お前……」

 まるでお化けかなにかが出たように目を丸くするレン。その視線は、ユウキとミオ、ふたり交互に注がれた。

「ホントにすげぇな、お前って」
「……?」
「レン。それはどういう意味かしら? 堅物な厄介者が良いように扱われて爽快……とでも言いたいの?」
「そこまで言ってねえだろっ!?」
「ということは、少しはその気持ちがあるのね。まったく、呆れた」
「おおーい、ユウキ! お前、本当にミオと話をして平気だったんだろうな? おい!?」

 ユウキは首を傾げっぱなしだった。レンがなにを心配しているのかわからない。
 ソラが落ち着かせるようにレンを連れていく。去り際、「お疲れさま」と口の動きで伝えてきた。

 彼らの代わりにヒナタとサキが前に出てくる。

「さすがユウキだねっ。すっかりミオとも仲良しになってるなんて!」
「真面目に話を聞いただけだよ。そしたら色々大事なことを教えてくれてさ。ね、ミオ先生」
「ミオ先生?」
「うん。ミオは家族院で一番物知りだし、部屋にはたくさん本があったから。これから先、ミオからこの世界のことを教わることにしたんだ。もふもふ家族院の院長として知っておかないといけないこと、たくさんありそうだし。でしょ、先生?」

 話を振ると、なぜかミオは顔を逸らした。長い髪の毛の先をいじっている。
 するとヒナタがにかーっと笑った。すごく嬉しそうな表情になって、ミオに横から抱きつく。

「あははっ。ミオが照れてる! 珍しー!」
「ちょ、ヒナタ。やめてよ、暑苦しい。それに照れてなんてない」
「うんうん。そっかそっか。わたしは今みたいなミオを見れて嬉しいよーっ」
「話を聞きなさいってば。この子は」

 ふたりのじゃれ合いを微笑ましく見ていたユウキは、ふと袖を引かれた。サキに階段下のスペースまで連れていかれる。

「ユウキ院長君よ」
「なに、サキ」
「ぜひ伺いたいのだが、かの部屋にはやはり存在したのだろうか。その……『至高の書』が」
「至高の……? ゲームの話?」

 お互い意味がわからずきょとんと顔を見合わせる。ちょっと間の抜けた時間。

「ええっとだな。ミオのところにはたくさん本があるじゃないか。その中に、珍しい魔法について取り扱ったものがあると思うのだが」
「ああ……確かにそんな本があったね」
「おお! 本当かね!? で、では折り入って頼みがあるのだが、今度ミオと授業とやらで部屋に入ったときには、こっそりその本を――」
「サァーキィー……?」

 ぴょ!? とサキの寝癖髪が跳ねた。寝癖ってさらに跳ねるんだとユウキは感心した。
 冷や汗を滝のように流しながら、サキが視線を上げる。階段の中程から、手すりに手を置いたミオが見下ろしていた。実に冷たい視線である。

「今さっき、よからぬ企みを聞いた気がするのだけれど……?」
「きき、気のせいだよ気のせいあはははっ!? やだなあミオ君は。耳が鋭くていけないよあははは!?」
「本当、懲りないのね。あなたは」

 眼鏡の奥、ミオの視線が少し和らいだ。
 ゆっくり階段を降りる。いつぞやアオイに怒られたときのように怯えるサキの頭を、ミオは軽く小突いた。

「いつも言ってるでしょう。魔法は使い道を誤ると危険極まりないもの。あなたの探究心は特筆すべきレベルだけれど、限度というものがあるわ。ましてや、私に黙って、しかもユウキに本を取ってこさせようなんて。やり方が小賢しい」
「うう……面目ない」
「……ま、いいわ。いつものことだし、ユウキが勝手に人の物を持っていくことはないでしょうし」

 よほどひどく怒られると思っていたのだろう。サキが涙目になりながら、感動したように両手を合わせた。

「ミオ君が……ミオ君がいつもより優しい……! こんな日が来るなんて」
「あのね。私は無駄な手間を家族に取らせたくないの」
「む? それはどういう意味かな?」
「昼間の騒ぎ、聞こえてたわよ。あなた、晩はアオイから説教を受ける予定なんでしょ?」
「………………あ」
「二度手間はしない主義なの」
「にぎゃああああっそうだったあああああっ!?」

 頭を抱えてしゃがみこむサキ。折良く――それとも折悪おりあしく、だろうか――アオイがやってきた。
 笑顔である。

「サキちゃーん? 大きな声を出して、なにかあったのかなあー?」
「ぴぃえ……ナンデモ、アリマセン……」
「ご飯だよー?」
「ハイ、イキマス……」

 すごすごと、アオイとともにダイニングに向かうサキ。ヒナタも軽快に後を追う。
 残ったユウキとサキは、互いに顔を見合わせた。

「皆といると退屈しないね、ミオ」
「ふっ。まあ、ね」

 ふたりは小さく笑い合った。

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