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帰国後
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各国が「旨味の無い迷宮だから不要」と言って塞いでいた迷宮を解放し、ユリウス達が山の頂上を確認し、魔道具を止めた。そして、改めてドルトイも含めた各国が集まって、今後の為の話し合いと友好のための話し合いをし、ドルトイとアラデルは友好国として調印を行った。
アラデルはドルトイの植物や魔物が、ドルトイはアラデルの物資が欲しいからだ。
そして、ユリウスは、
「やっぱり危ない事をした!」
とアデリアに少し怒られ、貴族としての地位を与えられた上で正式にアデリアとの婚約を発表した。
エミリは念願のクーラーをユリウスから受け取ったが、これまでのわがままと贅沢に批判が集中し、クーラーを使う間もなく教会で修行と奉仕に明け暮れる事になりそうだ。
皇太子とその取り巻き達にも批判が集まり、しかも各々が元の婚約者に復縁を迫って泣きついた事でそれは大きくなり、改めて冷たく彼女達に振られた挙句、各々が親から厳しく鍛え直される事になった。
ベルルギウスは、やはりフライングで聖女を召喚した事が各国から批判され、勝手に使った魔石の充当などを迫られているし、呼んだ聖女が魔力タンクとしてしか機能しなかったことでは、赤恥をかいたような形だ。
実家ヒースウッド家は、「聖女のために」と資金を使い過ぎて赤字で首が回らないほか、ツケや魔道具職人への給与未払いなどで訴えられ、大変な状態になっている。
「まあ、一件落着かな。これで段々と瘴気も消えて魔も収まって行くし、天候不順も戻って行くだろうし」
ユリウスは言いながら、おもちゃの飛行機に魔式を刻み、遠隔でコントロールするような魔道具を作りながら呑気に言った。
「そうだね。聖女はこれから苦労しそうだけどね」
セルジュはそう言って肩を竦めた。
「で、それは何?おもちゃ?」
「これ?そうだね。おもちゃにもなるけど、手紙を運ぶ事ができないかと思ってね。
ほら、今回思ったんだよ。向こうからこっちに連絡できれば、すぐに迷宮の入り口を解放してくれって言えただろ?」
「確かにねえ」
しみじみと頷き、「時間のロスだった」と言い合っていると、アデリアが手を叩いた。
「もっと素敵な使い方もあるじゃない。離れた所にいても、すぐに連絡が取れるのよ?」
それに、皆、頷いた。
「なるほど」
王、セルジュは軍事的な場面を想像し、ユリウスは災害などを知らせるのにいいと思った。そしてアデリアは、
「危ない事をしそうになったら、すぐに知らせてもらって、ダメって言います!」
と宣言する。
「うひゃあ。ごめんってば。でも、必要な事だったんだよ」
「ぶう」
「あはは。でも、そうだね。魔道具は、楽しい事に使いたいよね。
できた!」
魔式を刻みつけた飛行機を翳す。
「どうやって使うんだ?」
「こっちに送りたい相手の魔力を入力、こっちには自分の魔力を入力。それで、手紙をここに入れて、飛ばすだけ。向こうはただ飛ばすだけで、こっちに帰って来るはずなんだけど。
やってみようか」
わいわいと言いながら、テストだと、送り主のところにユリウスは自分の魔力を入力した。相手の所には、アデリアが率先して魔力を入力する。
「じゃあ、ちょっと離れた所から送るね」
ユリウスとセルジュは、城の敷地の端へと走って行った。
そこでユリウスは、手紙を入れる胴体部分に、指輪を入れた。
「届くかな。失敗したら、泣くかも」
「大丈夫だって。行け!」
「うん!」
飛行機を青い空へ向けて、放つ。それは高く飛んで、見る見る見えなくなった。
それを見送っていたユリウスとセルジュは、ソワソワとして空を見上げたまま待った。
「行ったかな」
「大丈夫だろ。お前が失敗するもんか」
「大丈夫かな、セルジュ」
「だから――」
「いや、指輪のセンスが。僕、よくわからないからなあ」
「ああ……まあ、取り敢えずアデリアはユリウスからの指輪ってだけで喜ぶから大丈夫だ。
あ、帰って来たぞ」
「え!?」
飛行機が青空を飛んで来る。
それに遅れて、アデリアが笑顔で走って来た。
「アデリア!走って来たら、飛ばす意味がないじゃないか」
笑いながらも、ユリウスも飛行機をつかみ取り、走り出した。
「まったく」
セルジュも笑って、ユリウスを追いかけた。
アラデルはドルトイの植物や魔物が、ドルトイはアラデルの物資が欲しいからだ。
そして、ユリウスは、
「やっぱり危ない事をした!」
とアデリアに少し怒られ、貴族としての地位を与えられた上で正式にアデリアとの婚約を発表した。
エミリは念願のクーラーをユリウスから受け取ったが、これまでのわがままと贅沢に批判が集中し、クーラーを使う間もなく教会で修行と奉仕に明け暮れる事になりそうだ。
皇太子とその取り巻き達にも批判が集まり、しかも各々が元の婚約者に復縁を迫って泣きついた事でそれは大きくなり、改めて冷たく彼女達に振られた挙句、各々が親から厳しく鍛え直される事になった。
ベルルギウスは、やはりフライングで聖女を召喚した事が各国から批判され、勝手に使った魔石の充当などを迫られているし、呼んだ聖女が魔力タンクとしてしか機能しなかったことでは、赤恥をかいたような形だ。
実家ヒースウッド家は、「聖女のために」と資金を使い過ぎて赤字で首が回らないほか、ツケや魔道具職人への給与未払いなどで訴えられ、大変な状態になっている。
「まあ、一件落着かな。これで段々と瘴気も消えて魔も収まって行くし、天候不順も戻って行くだろうし」
ユリウスは言いながら、おもちゃの飛行機に魔式を刻み、遠隔でコントロールするような魔道具を作りながら呑気に言った。
「そうだね。聖女はこれから苦労しそうだけどね」
セルジュはそう言って肩を竦めた。
「で、それは何?おもちゃ?」
「これ?そうだね。おもちゃにもなるけど、手紙を運ぶ事ができないかと思ってね。
ほら、今回思ったんだよ。向こうからこっちに連絡できれば、すぐに迷宮の入り口を解放してくれって言えただろ?」
「確かにねえ」
しみじみと頷き、「時間のロスだった」と言い合っていると、アデリアが手を叩いた。
「もっと素敵な使い方もあるじゃない。離れた所にいても、すぐに連絡が取れるのよ?」
それに、皆、頷いた。
「なるほど」
王、セルジュは軍事的な場面を想像し、ユリウスは災害などを知らせるのにいいと思った。そしてアデリアは、
「危ない事をしそうになったら、すぐに知らせてもらって、ダメって言います!」
と宣言する。
「うひゃあ。ごめんってば。でも、必要な事だったんだよ」
「ぶう」
「あはは。でも、そうだね。魔道具は、楽しい事に使いたいよね。
できた!」
魔式を刻みつけた飛行機を翳す。
「どうやって使うんだ?」
「こっちに送りたい相手の魔力を入力、こっちには自分の魔力を入力。それで、手紙をここに入れて、飛ばすだけ。向こうはただ飛ばすだけで、こっちに帰って来るはずなんだけど。
やってみようか」
わいわいと言いながら、テストだと、送り主のところにユリウスは自分の魔力を入力した。相手の所には、アデリアが率先して魔力を入力する。
「じゃあ、ちょっと離れた所から送るね」
ユリウスとセルジュは、城の敷地の端へと走って行った。
そこでユリウスは、手紙を入れる胴体部分に、指輪を入れた。
「届くかな。失敗したら、泣くかも」
「大丈夫だって。行け!」
「うん!」
飛行機を青い空へ向けて、放つ。それは高く飛んで、見る見る見えなくなった。
それを見送っていたユリウスとセルジュは、ソワソワとして空を見上げたまま待った。
「行ったかな」
「大丈夫だろ。お前が失敗するもんか」
「大丈夫かな、セルジュ」
「だから――」
「いや、指輪のセンスが。僕、よくわからないからなあ」
「ああ……まあ、取り敢えずアデリアはユリウスからの指輪ってだけで喜ぶから大丈夫だ。
あ、帰って来たぞ」
「え!?」
飛行機が青空を飛んで来る。
それに遅れて、アデリアが笑顔で走って来た。
「アデリア!走って来たら、飛ばす意味がないじゃないか」
笑いながらも、ユリウスも飛行機をつかみ取り、走り出した。
「まったく」
セルジュも笑って、ユリウスを追いかけた。
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