41 / 42
狩りと罠
しおりを挟む
カークは謹慎処分を受け、閉じこもっているらしい。
そしてサリは、追及をのらりくらりとはぐらかしていたが、レイ、カーク、アルの証言から取り調べを受ける事になり、逃亡したと、レイに聞かされた。
無線でやり取りしているのだ。
「逃亡してどうする気だろうな」
「クーデター?」
「おお、ありそうだな」
食後のイチゴ味噌汁抹茶を今日も美味しく啜りながら、俺達は話していた。
と、警報が鳴り、俺達は携帯端末でヒデから操艦室へ戻れと言われた。
行くと、空気がピンと張り詰められていた。
「来たか。
サリが現れた。まだ遠いが、監視カメラに引っかかってな」
レーダーで捕捉できる限界くらいの遠くにいた。そして、時々止まったり蛇行したりしながら、フラフラしている。
「何してるんだ、こいつ。酔っ払いか?」
明彦が眉を顰めた。
「もしかして、探してる?」
真理が言った。
「何を?」
「えっと、八つ当たりの相手・・・つまり、ボクら」
「・・・」
改めて、見る。
「・・・そう見えて来た」
ユウが嫌そうに言った。
それが、だんだんこちらに来る。
「あいつは空間眺望の能力らしいで」
見つかる確率は、高いかも知れない。
「あ」
イラついたのか、大型の大砲みたいな銃を撃つ。すると、前方にあった岩を貫通して、穴が開いた。
「・・・あの岩、何十メートルもあったよな」
「トンネル開通?トンネル工事にいいな」
冗談を言いながらも、嫌な予感は止まらない。
「見つかったらやばいよな、砌」
「ああ。この基地に、一瞬でトンネルが開通するぞ」
「という事は・・・」
「ほぼ全員死ぬな。特に民間区画は」
隊長はラドさんと顔を見合わせた。
「見つかる前に、出ましょう」
「そうするしかありませんね。いずれ、見付かる」
あすかは、こっそりと基地を出るとこになった。
静かに、素早く基地を出て、大回りをしてサリの索敵範囲に接近する。
「お、見つけたみたいだぞ」
サリが追って来るのを、全速力で逃げる。
『凄い威力のレーザーだな!!』
「かすめたらアウトですね」
俺とヒデがパトロール中に見つかった感じで、逃げる。それを、後ろから追いかけて来ている。
「あれは多分、この先にあすかがいると気付いていますね」
『なら、追って来るな』
「心配はいりませんね」
デブリ帯に突っ込み、高速で避けながら逃げる。
その向こうに、あすかがいる。
『見つけた。死ね』
足を止めて、サリが銃を構え、撃つ。
強いレーザー光線が、真っすぐにあすかに向かって走った。
それが急にスピードを緩め、拡散し、弱くなったレーザーは、あすかの船体にコーティングされた吸収剤によって吸収され、エネルギーに変換される。
「いよっし!!」
操艦室でドキドキしながらその時を待っていた皆は、知らず、ガッツポーズをしていた。
『何で!?』
驚愕して棒のように動きを止めたサリの機体を、デブリの中でエンジンを止めて待っていたユウと真理が2方向から狙撃し、反転したヒデと俺が、両手を奪って抵抗を封じる。そして、タカと明彦が近付いて来て、完全にサリの機体を拘束し、俺達は、あすかに戻った。
降りた俺を、コクピットから降ろされて拘束されたサリが睨む。
「何でだ・・・」
「レーザーってのは、要するに、真っすぐに進むようにまとめられた光だろ。空気と距離によってその威力は減衰される。真空でのみ効果が高まる兵器だ。
俺とヒデがあそこで反撃のそぶりを見せた事と、あすかの爆発に巻き込まれない距離とを考えて、お前はあの辺りで止まる筈だと読んだ。だから、あそこからあすかまでの間に、空気の詰まった風船を置いたんだよ。レーザーをかく乱する金属片を混ぜて」
「そんなもの、見えなかったーー!」
「そりゃあ、デブリに紛れてたからな。空間眺望っていっても、全てを鮮明に捉えるわけじゃない。人の気配というか、意識で捉えてるだろ。だから、空気なんて、わかるわけがない」
俺が種明かしをするのをサリは悔しそうに聞いていたが、ふと、周りの人間に訊いた。
「怖くなかったのか?空気を置いても、どのくらい減衰できるかわからないだろ?」
それに答えたのは明彦だった。
「何で?砌が言ったから大丈夫に決まってるだろ?」
明彦、決まってない。
「オレとタカのコーティングがあって、あすかもコーティングがある。大丈夫に決まってるだろ」
わははは、と笑い出した。大物だな、お前。俺は怖かったぞ、もしダメだったら、と思うと・・・。
震えを誤魔化す為に、俺はずっと、腕を組んでそばのカートに寄りかかっているというのに。
「まあ、そういうわけだ」
サリは力なく俯いて、連行されて行った。
俺は溜め息をついて、明彦に言った。
「度胸あるな」
「え?サンキュ!」
「あくまでも計算で、俺は、万が一を考えたら、もう、何でこんな事を言い出したんだろうと・・・」
「あはは!ばかだなあ。砌って意外と心配性だったか?」
「慎重はボクの担当だよねえ」
「慎重が真理か。明彦は?」
「突撃だぜ!」
「砌は?」
「中途半端!」
「でも頼れるリーダーだよねえ」
俺達は、
「懐かしいな、そのフレーズ」
とか言いながら、更衣室に向かった。
そして、改めて会談が再設定された。
そしてサリは、追及をのらりくらりとはぐらかしていたが、レイ、カーク、アルの証言から取り調べを受ける事になり、逃亡したと、レイに聞かされた。
無線でやり取りしているのだ。
「逃亡してどうする気だろうな」
「クーデター?」
「おお、ありそうだな」
食後のイチゴ味噌汁抹茶を今日も美味しく啜りながら、俺達は話していた。
と、警報が鳴り、俺達は携帯端末でヒデから操艦室へ戻れと言われた。
行くと、空気がピンと張り詰められていた。
「来たか。
サリが現れた。まだ遠いが、監視カメラに引っかかってな」
レーダーで捕捉できる限界くらいの遠くにいた。そして、時々止まったり蛇行したりしながら、フラフラしている。
「何してるんだ、こいつ。酔っ払いか?」
明彦が眉を顰めた。
「もしかして、探してる?」
真理が言った。
「何を?」
「えっと、八つ当たりの相手・・・つまり、ボクら」
「・・・」
改めて、見る。
「・・・そう見えて来た」
ユウが嫌そうに言った。
それが、だんだんこちらに来る。
「あいつは空間眺望の能力らしいで」
見つかる確率は、高いかも知れない。
「あ」
イラついたのか、大型の大砲みたいな銃を撃つ。すると、前方にあった岩を貫通して、穴が開いた。
「・・・あの岩、何十メートルもあったよな」
「トンネル開通?トンネル工事にいいな」
冗談を言いながらも、嫌な予感は止まらない。
「見つかったらやばいよな、砌」
「ああ。この基地に、一瞬でトンネルが開通するぞ」
「という事は・・・」
「ほぼ全員死ぬな。特に民間区画は」
隊長はラドさんと顔を見合わせた。
「見つかる前に、出ましょう」
「そうするしかありませんね。いずれ、見付かる」
あすかは、こっそりと基地を出るとこになった。
静かに、素早く基地を出て、大回りをしてサリの索敵範囲に接近する。
「お、見つけたみたいだぞ」
サリが追って来るのを、全速力で逃げる。
『凄い威力のレーザーだな!!』
「かすめたらアウトですね」
俺とヒデがパトロール中に見つかった感じで、逃げる。それを、後ろから追いかけて来ている。
「あれは多分、この先にあすかがいると気付いていますね」
『なら、追って来るな』
「心配はいりませんね」
デブリ帯に突っ込み、高速で避けながら逃げる。
その向こうに、あすかがいる。
『見つけた。死ね』
足を止めて、サリが銃を構え、撃つ。
強いレーザー光線が、真っすぐにあすかに向かって走った。
それが急にスピードを緩め、拡散し、弱くなったレーザーは、あすかの船体にコーティングされた吸収剤によって吸収され、エネルギーに変換される。
「いよっし!!」
操艦室でドキドキしながらその時を待っていた皆は、知らず、ガッツポーズをしていた。
『何で!?』
驚愕して棒のように動きを止めたサリの機体を、デブリの中でエンジンを止めて待っていたユウと真理が2方向から狙撃し、反転したヒデと俺が、両手を奪って抵抗を封じる。そして、タカと明彦が近付いて来て、完全にサリの機体を拘束し、俺達は、あすかに戻った。
降りた俺を、コクピットから降ろされて拘束されたサリが睨む。
「何でだ・・・」
「レーザーってのは、要するに、真っすぐに進むようにまとめられた光だろ。空気と距離によってその威力は減衰される。真空でのみ効果が高まる兵器だ。
俺とヒデがあそこで反撃のそぶりを見せた事と、あすかの爆発に巻き込まれない距離とを考えて、お前はあの辺りで止まる筈だと読んだ。だから、あそこからあすかまでの間に、空気の詰まった風船を置いたんだよ。レーザーをかく乱する金属片を混ぜて」
「そんなもの、見えなかったーー!」
「そりゃあ、デブリに紛れてたからな。空間眺望っていっても、全てを鮮明に捉えるわけじゃない。人の気配というか、意識で捉えてるだろ。だから、空気なんて、わかるわけがない」
俺が種明かしをするのをサリは悔しそうに聞いていたが、ふと、周りの人間に訊いた。
「怖くなかったのか?空気を置いても、どのくらい減衰できるかわからないだろ?」
それに答えたのは明彦だった。
「何で?砌が言ったから大丈夫に決まってるだろ?」
明彦、決まってない。
「オレとタカのコーティングがあって、あすかもコーティングがある。大丈夫に決まってるだろ」
わははは、と笑い出した。大物だな、お前。俺は怖かったぞ、もしダメだったら、と思うと・・・。
震えを誤魔化す為に、俺はずっと、腕を組んでそばのカートに寄りかかっているというのに。
「まあ、そういうわけだ」
サリは力なく俯いて、連行されて行った。
俺は溜め息をついて、明彦に言った。
「度胸あるな」
「え?サンキュ!」
「あくまでも計算で、俺は、万が一を考えたら、もう、何でこんな事を言い出したんだろうと・・・」
「あはは!ばかだなあ。砌って意外と心配性だったか?」
「慎重はボクの担当だよねえ」
「慎重が真理か。明彦は?」
「突撃だぜ!」
「砌は?」
「中途半端!」
「でも頼れるリーダーだよねえ」
俺達は、
「懐かしいな、そのフレーズ」
とか言いながら、更衣室に向かった。
そして、改めて会談が再設定された。
0
あなたにおすすめの小説
ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!
クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。
ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。
しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。
ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。
そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。
国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。
樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス最底辺の俺、ステータス成長で資産も身長も筋力も伸びて逆転無双
四郎
ファンタジー
クラスで最底辺――。
「笑いもの」として過ごしてきた佐久間陽斗の人生は、ただの屈辱の連続だった。
教室では見下され、存在するだけで嘲笑の対象。
友達もなく、未来への希望もない。
そんな彼が、ある日を境にすべてを変えていく。
突如として芽生えた“成長システム”。
努力を積み重ねるたびに、陽斗のステータスは確実に伸びていく。
筋力、耐久、知力、魅力――そして、普通ならあり得ない「資産」までも。
昨日まで最底辺だったはずの少年が、今日には同級生を超え、やがて街でさえ無視できない存在へと変貌していく。
「なんであいつが……?」
「昨日まで笑いものだったはずだろ!」
周囲の態度は一変し、軽蔑から驚愕へ、やがて羨望と畏怖へ。
陽斗は努力と成長で、己の居場所を切り拓き、誰も予想できなかった逆転劇を現実にしていく。
だが、これはただのサクセスストーリーではない。
嫉妬、裏切り、友情、そして恋愛――。
陽斗の成長は、同級生や教師たちの思惑をも巻き込み、やがて学校という小さな舞台を飛び越え、社会そのものに波紋を広げていく。
「笑われ続けた俺が、全てを変える番だ。」
かつて底辺だった少年が掴むのは、力か、富か、それとも――。
最底辺から始まる、資産も未来も手にする逆転無双ストーリー。
物語は、まだ始まったばかりだ。
死んだはずの貴族、内政スキルでひっくり返す〜辺境村から始める復讐譚〜
のらねこ吟醸
ファンタジー
帝国の粛清で家族を失い、“死んだことにされた”名門貴族の青年は、
偽りの名を与えられ、最果ての辺境村へと送り込まれた。
水も農具も未来もない、限界集落で彼が手にしたのは――
古代遺跡の力と、“俺にだけ見える内政スキル”。
村を立て直し、仲間と絆を築きながら、
やがて帝国の陰謀に迫り、家を滅ぼした仇と対峙する。
辺境から始まる、ちょっぴりほのぼの(?)な村興しと、
静かに進む策略と復讐の物語。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる