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能力についての誤認
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「能力を誤解していた?」
セイとレミは、怪訝な顔付きでスレイを見た。しかし見られたスレイの方も、よくわからないという顔付きをしている。
「うん。最初、血をかけた部分が燃えたから、血をかけた部分に干渉するものだと思ったんだよ」
「うん」
それがわかったのは、たまたまだった。化け物のように変質した被験者に襲われて、その時に「燃えてしまえばいいのに」と思ったら、血のとんだところが燃え上がったのが最初だ。それでスレイは、「血をかけたところを燃やす」能力だと思われ、実は爆破もできる事を秘密にしていたが、とにかく、「自分の血の付いた所」をどうにかするものだと思って来た。
しかし、サンの言う事によると、違うらしい。
「触れた所の、電子に干渉?分子構造を、変える?」
スレイの前世の知識の中にあったものからサンが導き出した事だが、残念ながらスレイにはそれがわからないので、サンが何を言っているのかさっぱりだった。
サンの方も、そんな知識はサンの世界にも無かったため、地球の知識はつぎはぎで、理解するには不完全だと不満そうに言っている。
「要するに、よくわからないけど、何か違ってたんだな」
セイが理解する事を諦めてそうまとめた。
「そうだな」
スレイも諦めて、肩を竦めた。レミはとうに理解する事を放棄している。
「じゃあ、いちいち斬らなくていいんだね。貧血も無しだよね」
「まあ、触る必要があるからな。触れない時には、やっぱり斬る事になるんじゃないかな」
スレイは首を傾けてそう答えた。
「ま、無事で良かったぜ」
そう言って欠伸をして、3人は歩き出した。
徹夜明けで、朝食も摂っていないので、次の町で早目の昼食を摂っていた3人は、その男を見てゾクリと背を震わせた。
背が高く、がっしりとしていて、冷たい感じがする。着ている制服は近衛兵のものだ。
尤も、彼――エランを見て何となくギョッとしたのはその場にいた大半の者が同じで、食堂は話し声が途絶え、シンとした。
エランは周囲をゆっくりと見廻し、3人組のスレイ、セイ、レミのところで視線を止めたが、髪の色が違うと思って目を逸らせた。
「なんでしょうか」
店主が話しかけるのに、エランが、
「人を探している。こんな3人組を見かけなかったか」
と言って、手配書を見せた。
「さあ。いたかも知れませんが、これじゃあ」
店主が委縮しながら言うのに、
「見付けたらすぐに知らせてくれ」
と言って、手配書をポケットにしまい、もう一度食堂の中をグルリと眺めまわして出て行った。
スレイもセイもレミも、詰めていた息を吐いた。
隣のテーブルに着いていた職人風のグループも同様で、息を吐いて、改めてスプーンを取った。
「何か物騒な野郎だったな」
「全くだ。あれ、近衛兵の制服だろう?何でこんな田舎に来てやがるんだ?」
「さあ。人探しみたいだったけどよ」
「いや、探すのは近衛の仕事じゃねえだろ」
「知るかよ」
それで食堂内はわいわいと喧騒を取り戻したが、スレイ達はフードを被って店を出た。
セイとレミは、怪訝な顔付きでスレイを見た。しかし見られたスレイの方も、よくわからないという顔付きをしている。
「うん。最初、血をかけた部分が燃えたから、血をかけた部分に干渉するものだと思ったんだよ」
「うん」
それがわかったのは、たまたまだった。化け物のように変質した被験者に襲われて、その時に「燃えてしまえばいいのに」と思ったら、血のとんだところが燃え上がったのが最初だ。それでスレイは、「血をかけたところを燃やす」能力だと思われ、実は爆破もできる事を秘密にしていたが、とにかく、「自分の血の付いた所」をどうにかするものだと思って来た。
しかし、サンの言う事によると、違うらしい。
「触れた所の、電子に干渉?分子構造を、変える?」
スレイの前世の知識の中にあったものからサンが導き出した事だが、残念ながらスレイにはそれがわからないので、サンが何を言っているのかさっぱりだった。
サンの方も、そんな知識はサンの世界にも無かったため、地球の知識はつぎはぎで、理解するには不完全だと不満そうに言っている。
「要するに、よくわからないけど、何か違ってたんだな」
セイが理解する事を諦めてそうまとめた。
「そうだな」
スレイも諦めて、肩を竦めた。レミはとうに理解する事を放棄している。
「じゃあ、いちいち斬らなくていいんだね。貧血も無しだよね」
「まあ、触る必要があるからな。触れない時には、やっぱり斬る事になるんじゃないかな」
スレイは首を傾けてそう答えた。
「ま、無事で良かったぜ」
そう言って欠伸をして、3人は歩き出した。
徹夜明けで、朝食も摂っていないので、次の町で早目の昼食を摂っていた3人は、その男を見てゾクリと背を震わせた。
背が高く、がっしりとしていて、冷たい感じがする。着ている制服は近衛兵のものだ。
尤も、彼――エランを見て何となくギョッとしたのはその場にいた大半の者が同じで、食堂は話し声が途絶え、シンとした。
エランは周囲をゆっくりと見廻し、3人組のスレイ、セイ、レミのところで視線を止めたが、髪の色が違うと思って目を逸らせた。
「なんでしょうか」
店主が話しかけるのに、エランが、
「人を探している。こんな3人組を見かけなかったか」
と言って、手配書を見せた。
「さあ。いたかも知れませんが、これじゃあ」
店主が委縮しながら言うのに、
「見付けたらすぐに知らせてくれ」
と言って、手配書をポケットにしまい、もう一度食堂の中をグルリと眺めまわして出て行った。
スレイもセイもレミも、詰めていた息を吐いた。
隣のテーブルに着いていた職人風のグループも同様で、息を吐いて、改めてスプーンを取った。
「何か物騒な野郎だったな」
「全くだ。あれ、近衛兵の制服だろう?何でこんな田舎に来てやがるんだ?」
「さあ。人探しみたいだったけどよ」
「いや、探すのは近衛の仕事じゃねえだろ」
「知るかよ」
それで食堂内はわいわいと喧騒を取り戻したが、スレイ達はフードを被って店を出た。
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