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信仰の街
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その街は、昔の聖人が生まれた家がある為、教会は大きく、信者も熱心だった。
これまで教会やその関係者とはなるべく接触しないようにしてきたスレイ達だが、どうしてもそこへ行く必要があった。そう。石があったからだ。
漂泊者は山や海で獲物を狩り、旅をする人々だ。宿にも泊まるが、教会にもよく泊まる。自然の恵みに感謝し、神に捧げるというのが理由だし、教会の方も、供物を得る事ができるし、漂泊者は自分達とは違う方法で修行をする者達という受け止め方をしているせいだ。
なのでスレイ達が漂泊者としてその教会を訪れても、何も不自然に映る事はなかった。
男3人と見られるのをいいことに、スレイ達は3人共男だと称している。なので、通された部屋も1室だった。
宿でも野宿でもどうせいつも一緒なので、不都合はない。むしろ、これから動く事を考えれば好都合である。
レミは複雑な心境だったが……。
「しかし広いな」
セイが改めて言う。
夜中を待ち、皆が寝静まった頃を見計らってそっと部屋を出たスレイ達は、石を探して歩き出した。
この教会の地下からうめき声がするという怪談のような話があったのだ。
その話をしたのは、この教会の補強工事を最近したという職人だった。地下を補強してもらいたいという依頼を受けて教会へ行き、工事をしたが、少し経ってから不具合はないかと確認するために訪れたのだそうだ。
すると、唸り声が地下から聞こえたという。
しかし教会側は
「気のせいでしょう」
「何も聞こえませんよ」
「不具合はありません。ありがとうございました」
と言って、早々に追い出されたのだった。
「あれは何かあるぜ。地下墓地で、ゾンビでも出たのかも知れん。それで、出て来ないように工事をして頑丈にしたに違いない」
彼はそう言ったが、聞いていたスレイ達は、嫌な予感がした。それで、確認しに来たのである。
廊下に人の気配はなく、足音を立てないように気を付けながら歩いて行く。
うめき声がしたというのは、この建物とは別の、聖堂の地下だ。暗闇の中をヒタヒタと歩き、聖堂へ近付く。
入り口には鍵がない。いつでも神は拒まない、という意味らしい。なのでスレイ達は何の苦労もなく、聖堂へ足を踏み入れた。
荘厳な雰囲気の広いホールで、ズラリと長いテーブルと椅子が並んでいる。そして正面には説教のための演台があり、その後ろには神々の石膏像が並んでいる。そして周囲の天井にはたくさんの神々の絵が描かれ、ホールの人間達を見下ろしていた。
最早神など信じてはいない3人は、気にする事無く、神々の像の中に踏み入った。
そこには扉があり、地下には昔の共同墓地と、ここ出身の聖人の遺体のミイラがあるはずだった。
そして、うめき声はここから聞こえて来たと聞いている。
ドアノブを掴んで引く。
「んん?レミ、どう?」
普通の耳のスレイとセイには聞こえず、セイはレミにそう言ってレミを見た。
「最初は唸り声が聞こえたけど、ピタッと聞こえなくなったよ」
「気付かれたのかな」
スレイは言って、各々、ナイフや金属の棒を握りしめた。
そして、足音を殺して、中に入って行った。
これまで教会やその関係者とはなるべく接触しないようにしてきたスレイ達だが、どうしてもそこへ行く必要があった。そう。石があったからだ。
漂泊者は山や海で獲物を狩り、旅をする人々だ。宿にも泊まるが、教会にもよく泊まる。自然の恵みに感謝し、神に捧げるというのが理由だし、教会の方も、供物を得る事ができるし、漂泊者は自分達とは違う方法で修行をする者達という受け止め方をしているせいだ。
なのでスレイ達が漂泊者としてその教会を訪れても、何も不自然に映る事はなかった。
男3人と見られるのをいいことに、スレイ達は3人共男だと称している。なので、通された部屋も1室だった。
宿でも野宿でもどうせいつも一緒なので、不都合はない。むしろ、これから動く事を考えれば好都合である。
レミは複雑な心境だったが……。
「しかし広いな」
セイが改めて言う。
夜中を待ち、皆が寝静まった頃を見計らってそっと部屋を出たスレイ達は、石を探して歩き出した。
この教会の地下からうめき声がするという怪談のような話があったのだ。
その話をしたのは、この教会の補強工事を最近したという職人だった。地下を補強してもらいたいという依頼を受けて教会へ行き、工事をしたが、少し経ってから不具合はないかと確認するために訪れたのだそうだ。
すると、唸り声が地下から聞こえたという。
しかし教会側は
「気のせいでしょう」
「何も聞こえませんよ」
「不具合はありません。ありがとうございました」
と言って、早々に追い出されたのだった。
「あれは何かあるぜ。地下墓地で、ゾンビでも出たのかも知れん。それで、出て来ないように工事をして頑丈にしたに違いない」
彼はそう言ったが、聞いていたスレイ達は、嫌な予感がした。それで、確認しに来たのである。
廊下に人の気配はなく、足音を立てないように気を付けながら歩いて行く。
うめき声がしたというのは、この建物とは別の、聖堂の地下だ。暗闇の中をヒタヒタと歩き、聖堂へ近付く。
入り口には鍵がない。いつでも神は拒まない、という意味らしい。なのでスレイ達は何の苦労もなく、聖堂へ足を踏み入れた。
荘厳な雰囲気の広いホールで、ズラリと長いテーブルと椅子が並んでいる。そして正面には説教のための演台があり、その後ろには神々の石膏像が並んでいる。そして周囲の天井にはたくさんの神々の絵が描かれ、ホールの人間達を見下ろしていた。
最早神など信じてはいない3人は、気にする事無く、神々の像の中に踏み入った。
そこには扉があり、地下には昔の共同墓地と、ここ出身の聖人の遺体のミイラがあるはずだった。
そして、うめき声はここから聞こえて来たと聞いている。
ドアノブを掴んで引く。
「んん?レミ、どう?」
普通の耳のスレイとセイには聞こえず、セイはレミにそう言ってレミを見た。
「最初は唸り声が聞こえたけど、ピタッと聞こえなくなったよ」
「気付かれたのかな」
スレイは言って、各々、ナイフや金属の棒を握りしめた。
そして、足音を殺して、中に入って行った。
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