ギルティ・スノウ

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呪われた史跡部

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 砂を噛んでいるよう。そういう言い回しを小説で読む。こういう状態なんだろうか。
 何を食べても味がしないで、がまんして食べても、空腹が満たされないし、後で戻す事になる。仕方が無いと、あれ以来、サプリメントで栄養を摂っている。
 別府先輩と翔子の遺体は見つからず、行方不明扱いのままだ。おかげで史跡部は呪われた部とか言われ、腫物扱いだった。
 そして僕達生還した3人は、相変わらず部室で顔を合わせていた。どこかに行っても身の置きどころがないというか、居心地が悪い。それに昼休みは、お弁当を食べるクラスメイトと一緒にいたくない。
 先輩達も同じなのか、本を読んだり、勉強をしたりで、成績が上がったのは皮肉な結果だ。
「新入部員、ゼロかあ」
「まあ、いいけどな。どうせ、史跡めぐりなんてこじつけの、暇つぶしの部活だしな」
「よく入ったなあ、山代」
「先輩がいいますか、それ」
「違いない」
 バカ話をして笑ってはいても、どこか上滑りで、続かない。
 ああ、そうだ。この部に入ったのは、緩くて楽で、面白そうじゃないって、翔子が誘って来たからだ。
「あ、そろそろ予鈴だ。行くか」
「おう」
 先輩達が立ち上がり、僕も立ちあがる。
 この渇き、この飢えを、どうしたら癒せるのだろう。
 もう、一生このままなのだろうか。それは、別府先輩と翔子の、呪いなのだろうか。
 溜め息をついて、僕は午後の授業に向かった。

 部室のドアに手をかける。
 と、何やら中で音がした。一気にドアを開けて、それを見る。
 黒川先輩がカナヅチを、草津先輩が大振りなナイフを持って、もつれ合っていた。
「先輩。何をしてるんですか」
 意外と冷静な声が出た。
「ああ、山代。何かこの頃、食った気がしなくてな」
 黒川先輩が涼しい顔で言う。
「俺もだよ。味気ないんだよな」
 草津先輩も眉を寄せて苦笑した。
「お前もか」
「え」
「ナタ。違うのか?」
 黒川先輩が顎をしゃくって、僕の右手を指す。
「考える事は皆一緒か」
 草津先輩が笑い、僕も笑った。
 そして、ナタを振り上げた。
 これなら味がするはずだ。先輩達も、そう思っていたんだな。

 しかし、僕達はそのまま凍り付いた。
 いきなりドアが開き、別府先輩と翔子が現れたからだ。
「翔子……?」
「ホームルームが長引いちゃって。
 どうしたの?」
「え、いや……」
 僕達はぎこちなく、カナヅチ、ナイフ、ナタを下ろした。
「そんなものでふざけてちゃ危ないでしょ。全く男子は。大人しい山代君までこんなバカな先輩に染まっちゃうなんて。はああ」
 大きく別府先輩は嘆息して、僕達は気まずいような思いと混乱を押し隠した。
「いや、これは、まあ……そうだな」
 黒川先輩が言葉に困るなんて、滅多に見られない光景だろう。
 でも、言えるわけもない。別府先輩と翔子を食べて以来、何も味がしなくなったから、人なら味がするのか確認しようとしていた、だなんて。
 これは、「バカな事はやめろ」と別府先輩と翔子が見せた幻か何かに違いない。僕はそう思いながら、ひっそりと笑った。
「健太、何泣いてるの?」
「え!私?私が泣かしたの?」
 うろたえる別府先輩と翔子の声が、今は嬉しかった。




 

 
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