踏んだり蹴ったり殴ったり

JUN

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お宝発掘調査

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 読経の声を目覚まし代わりに目を覚ますのにも慣れ始めた。ノーメイクにも、楽な服装にも、隠居のような生活にも、鍵をかけない事にも。
 うろを確認するが、本日も異常無し。そう日誌に書き込む。
 が、この日誌を、誰か読んでいるのだろうかとそう思った。
「まあ、いいわ。
 芽が出始めたわね。よしよし。えんどう豆は豆ごはんにして、ナスは焼きナスと中華炒めとお浸しにして、きゅうりはサラダと酢の物と和え物と。
 万願寺唐辛子とかもいいわね。今度苗を買って来ようかしら」
 すっかりと、独り言のクセもついた。1人だと独り言を言ってしまうのはなぜなんだろう。
 小東さんの所へ行って買い物をし、少々雑談をしてから菅井さんの所へ行く。そして、お供え用と自分のおやつ用の饅頭を買って、雑談をして店を出た。
 そして支社へ戻り、足を止めた。
 支社の裏から、ぞろぞろと人が歩いて来たのだ。
「ちょっと!」
 畑の新芽を踏んでいる彼らに声をかける。
「は?」
「私有地なんですけど?それと、畑を踏み荒らさないでください」
 つかつかと近寄って言うと、彼らは足元を見、それから私を見た。頭の先から足の先まで。
「すみません」
 そう思っていないような表情と声で中の数人が言った。
 彼らは5人組で、20代半ばだろうか。男3人、女2人だ。
「畑?これ雑草でしょ?」
 案の定、悪いとは思っていないらしい1人がそう言って笑う。
「野菜です。それと、私有地なので勝手に入らないでください。ブロックで囲ってあるでしょう」
「通るくらいいいじゃない。ケチでうるさいオバサンね」
「ダサイし」
 小声で女2人が言って笑い合い、ほかの男達もニヤニヤする。
 カチンとした。が、出て行くならこれ以上はと我慢し、彼らが出て行ったのを見て中へ入った。
「はああ」
 買って来た物をしまう。
 彼らは村の人間ではないし、ここはピクニックに来るような場所でもない。
「ああ。伝説とやらか」
 伝説について調べに来たり、お宝を探しに来たりする者が時々現れるそうだ。たぶんそういう連中だろう。
「天狗、ねえ」
 存在するのだろうか?
 懐疑的に考えながらふと振り返ったら、窓の外から中を覗き込んでいるさっきの彼らがいたので驚いた。
「キャアア!!何してるんですか!?」
「あ、中、どうなってるのかなって思って」
 悪びれる事がない。
「私有地って言ったでしょ!?」
 言って玄関に向かうと、玄関先で彼らはペットボトルの飲み物を飲んだり、勝手に写真を撮ったりしていた。
「おばさんを覗いてるわけじゃないから。自意識過剰?」
 女の子が言ってクスクス笑い、食べていたお菓子の包み紙をポイとポストの下に放った。
「ゴミ、持って帰りなさい」
 聞こえないふりなのか、そのまま行こうとする。だからそのゴミを拾い、女の子に渡そうと突き出した。
 が、それにほかのメンバーが過剰反応する。
「何するんだよ、おばさん」
「なに。殴ろうとしたの?」
「いい加減にしなさいよ。人の家に勝手に入り込んで、ゴミを捨てていくとか非常識でしょう」
「うるせえよ、ばばあ」
「常識がわからないなら、確かにあなた達は子供以下みたいね」
「なんだとくそばばあ」
 ランクアップした。
「謝れよ」
「調子乗ってんじゃないの」
 そして彼らは、完全に怒っているらしい。怒っているのは私の方だというのに。
 だが、数でも力でも私が不利だ。内心でどうしようかと思っていると、声がかかった。
「何をしているんですか」
 一斉に振り返る。
「駐在さん!」
 そこにいたのは、駐在所の宮本さんと徳田さんの奥さんと永世君だった。
「げ」
「いえ、別に」
 ゴニョゴニョと言って歩きかけた彼らにムッとして口を開きかけた時、永世君が言った。
「私有地に入って、中を覗き込んで、ゴミをポイ捨てしようとしたのを咎められて、暴言を吐いて脅してた所だよな」
 私も彼らも、ギョッとして永世君を見た。
「見てたの!?」
「庭で掃除してたの」
 奥さんがおっとりとしながらもはっきりと言う。
「詳しく聴こうかな」
 駐在さんは彼らを連れて駐在所へ行った。
 それを見ながら、永世君が言う。
「あんまり噛みつくと危ないですよ」
「でも」
「言ってることは片山さんは間違ってないけどね。誰か呼べばいいのに」
「……どうせ私は、可愛げがないわよ」
「そういう意味じゃない。ケガするのはバカらしいでしょう?
 すべてを自分で片付けなくても、何もかもを頼らなくても、別にいいんだから。危ない時には頼る。俺もそうする。
 だからその時はよろしく」
 私と永世君はクスリと笑い、それで肩の力が抜けるのを感じた。





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