踏んだり蹴ったり殴ったり

JUN

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家出とクマ

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 夏子が帰ると、また、平穏な日々に戻った。
 正直、曜日の感覚もない。テレビを見て、
「あ、今日は月曜日かぁ」
などと思う日々だ。
 休日はないが、ほぼ毎日、仕事などあってないようなものなので、文句はない。
「ああ。暇……」
 何か趣味でも始めようか。でも、趣味を始めるとは言え、習いに行く必要があるものは難しいし、用具が必要なものも松園からお金が戻って来るまでは無理だ。
 ヨガなどは苦手だし、スポーツは相手が必要なものはできない。
 本を読むか、畑の世話かしかしていない。
「そうだわ。内職はどうかしら」
 少しやる気になった時、菅井さんがやって来た。
「あ、うちの子見なかった?」
 いつもは人の良さそうなニコニコした人だが、切羽詰まっているような、そんな顔をしていた。
「いいえ?どうかしたんですか?」
 菅井さんの家の子というのは、高校2年生の男の子だ。大人しそうな子に見えた。
「うん。何て言うか、家出、しちゃったのよ」
 菅井さんは苦笑しながら言って、嘆息した。
「まさか、昨日からですか」
「そうなの。帰って来なかったの。友達の家にも電話してみたんだけど行ってないって。困ったわ。
 この極楽山にいるのなら、出て来ないと危ないじゃない?クマも出るし」
「クマ!?」
 初耳だ。
 クマにやられて死んで極楽に行くとかいう意味での命名?まさか。
「ごめんなさいねえ。もし見かけたら引き留めてくれない?」
「は、はい!やってみます!」
 それで菅井さんは他へ歩き出したが、私は居ても立っても居られなかった。すぐにジョギングシューズを履いて外へ出た。
 頂上のうろの中を見たが、いなかった。
 周りの茂みにも隠れていない。
「まさかもう、クマのお腹の中なんじゃ……」
 嫌な予感に震えあがった。
 しかし、どこかにいるかも知れないと、人が隠れられそうな所を見て回る。
「ああ。こんな時普通は駅前のネットカフェとかに行くんだろうけど、この辺には無いからなあ」
 いいような気がしたが、こういう時には、あった方が良かったような気がする。
 探しながら歩いていると、寺の端、墓地に着いた。
「拝んでおこうっと」
 創業者の墓の前で手を合わせ、
「どうか守ってあげてください。クマに会いませんように」
とブツブツ祈る。
 と、背後で何やら音がした。
「ん?」
 振り返ると、本堂の縁の下に何かいるのが見えた。
 よくは見えないが、影の大きさからすると、犬とかアライグマではない。そう、クマくらいはありそうな……。
「クマ!?りょ、猟友会!?」
「え!クマ!?どこ!?」
 私が慌てて墓石を盾にすると、その影もわたわたと縁の下から出て来た。
「え。菅井君?」
「クマが出たのか!?」
 永世君が庫裏から飛び出して来て、私と菅井君が困ったような顔付きで向かい合うのを見て、首を傾げた。




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