ぼくらの異世界演奏旅行(ビータ)

JUN

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ペルシャの市場にて(3)米、偉大なり

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 大きい街だけあって、市場も規模が大きかった。海の物、山の物、魔物の肉から野菜まで、幅広く揃っている。
勿論、米もあった。飼料扱いで。
 そして、いそいそとそれを持ち帰り、炊く。実はここで、ひと騒動あった。水加減だ。電気炊飯器と付属の計量カップしか知らないので、した事がない以上に、アドバイスができない。キャンプの時の記憶を捻り出して、半ばカンでやってみたのだ。少し固め、丼には最適だった。
 鶏卵のような扱いの卵はこちらにもあり、値段も安い。ただ、生食はトビーに止められたので、卵かけご飯はだめらしい。理生はこれで、ガックリとした。
 梅干しを探したのだが、どうも無さそうだと判明。これで、ミハイルが肩を落とした。
 明太子は無いのかと訊いたら、あった。ただし、値段が高いので、今回は見送った。これで、貴音がションボリした。
「何なんだよ、お前ら」
 トビーは白ご飯を前に、呆れたように嘆息する。
「ご飯の友というのは、無数の選択肢があって、無限の可能性と未知との感動を秘めた、人生をかけて追及するべき大命題なのだ」
 ミハイルが重々しく言うのに、慣れたのか、トビーは
「はいはい。塩いる?」
と軽く流した。
 まずは一口、塩で。
「んん?ん。意外といけるかな」
 トビーの反応に、3人はニタリとした。
「では、用意した具を少しずつ試そう」
 昆布はあるがかつお節はなく、ナンプラーはあるが醤油はない。ただ、とある果実を絞った果汁にとある草の絞り汁を足すと、醤油になる事を発見した。
 卵を使った玉丼。角犬のカツどん。豚に似たオークで豚丼。こちらにもいた牛で牛丼。刺身を乗せて海鮮丼。
「美味い。よく食べた事も無いのに作れたな、トビー」
「何か、慣れたよ。どんどんカンが良くなる気がする」
「さて次は、炊き込みごはんだな」
 鮭としめじと人参で。
「筍とかもいいんだけどなあ」
「鶏肉のやつも好きだな」
「寿司もいいんじゃないかな、ちらし寿司とか稲荷寿司とか」
「シンプルにおにぎりは・・・流石にシンプルすぎるか」
「カレーライスも捨てがたいぞ」
 3人でワイワイと言い合っていたが、あまりにもトビーが静かなのでそちらを見ると、トビーはかつて無いほどの食欲を見せて、黙々と平らげていた。
「美味しいだろ?」
「美味い!」
「これをエサと呼んでたんだぞ?」
「う・・・ニホンのお百姓さん、ごめんなさい!」
 それからしばし、目的を忘れて、ただただ食べまくった4人だった。

 満腹になってしばらく休憩し、ようやく、目的を思い出した。
「そうだった。コンテストだった。
 何を出しても、米という時点で、一応かなり画期的と言っていいと思うよ」
 トビーが米にOKを出す。
「海鮮丼は、きざみのりはともかく、わさびはいるだろうな」
 理生が、メモの海鮮丼の所をトントンとシャーペンで突きながら言った。
「それに刺身の種類がたくさんいるのが、意外と不経済かもね」
「でも、見た目は鮮やかで点数はいいんじゃないか?」
 ミハイルと貴音も真剣そのもので唸る。
「保留として、次。親子。
 というより、ここはまず、こっちの人間であるトビーの意見を聞いたらどうだろう」
「そうだな。理生の言うとおりだ。どうだ、トビー」
「オレ、親子丼好きだな。卵をとろとろにってのが、難しかったけど、上手く行ったら最高に美味かった」
 トビーの反応は上々だ。
「後、カツどん。油で揚げるってどういう事かと思ったけど。満足感、満腹感。良かったね」
 うんうんと、頷く一同。理生はせっせと、メモに感想も書き込む。
「牛丼も上手いけど、親子の肉と卵っていうのがいいなあ。優しさを感じる?」
「そうそう」
「それなら、オムライスなんて好きなんじゃないかな」
 貴音が言うのに、理生とミハイルが「おお」と同意し、しっかり卵を焼く派か、とろとろ派か、更に中からソースが流れ出る派かで言い合いを始め、米に目覚めたトビーが食いついて、結局、オムライスを作る事になった。
 メニューが決まるのは、まだまだ先のようである。










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