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隠された罪(1)調査依頼
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部屋の中に異常が無い事を確認し、警護対象者を中へ入れる。
「何かあればすぐに声をかけて下さい。ドアの前にいますので」
そう言いおいて、廊下へ出た。
その2時間後。警護対象者の父親の方がその部屋の前に来て、ドアをノックした。
「礼子」
しかし、返事はない。
父親も、警護していた警備員も、嫌な予感がした。
「礼子、礼子」
ドンドンとドアを叩く父親を脇へやり、
「失礼します」
と言いながらドアを素早く開ける。
ベッド、机、クローゼット。高価そうな物が並ぶ部屋のどこにも、警護対象者の姿はなかった。
「礼子!?」
警備員達は慌てたが、手分けして広い庭や家の中の捜索に向かい、また、会社へ連絡を入れる。
父親はオロオロとしていたが、突然激昂すると、警備員の1人の胸倉を掴んだ。
「お前だろう!? 父親の事でお前は私を恨んでいた!」
「落ち着いて下さい」
「落ち着けるか! お前が! 礼子を!」
そこまで話して、錦織はコーヒーを一口飲んだ。
「というのが事件のあらましです」
ある自動車メーカーの社長に「罪を認めろ。犯した罪は自分であがなえ」という手紙が毎日届き、身の危険を感じた社長は、自分と娘の警護を柳内警備保障に依頼して来たそうだ。
しかしある日、娘が忽然と自宅から消え、父親が逆上した。
警備についていた社員の1人の父親が、この会社から理不尽に辞職を迫られてノイローゼになって退職した経緯があり、彼が復讐のために娘を誘拐したのだと主張しているのだ。
勿論その社員は否定している。
そこで、警察とは別に、柳内警備保障でも事件を調査する事となったのだ。
そしてその調査を命じられたのが、秘書課別室だった。
「警察に任せた方がいいんじゃないですか」
湊が即言う。
「そう言わずに、社員が関与したのかどうか、それを調査してくださいよ」
「社員が関与していたとすれば、警備会社としてはマイナスですね」
心配そうに涼真が言うのに、錦織は、にこにこしながらもきっぱりと言った。
「それをもみ消したら最悪です。その時はその時。事実を社長に報告するまでですよ」
それで別室は、その業務に取り掛かる事になった。
まず依頼者である畠中正男は、大手自動車メーカーの社長だ。2年前に妻と死別している。仕事には厳しいという評判だが、嘘のように、娘は大事にしているという。
娘の畠中礼子は、女子大に通う20歳。大人しいが、頑固な一面もあるらしい。
警護メンバーに入っていた、松本太郎。真面目で曲がった事が嫌いな男だ。父親がその自動車工場に勤めていたが、リストラ対象に入り、嫌がらせの末に辞職に追い込まれたらしい。だが、その時にはノイローゼになって、自殺未遂を起こしている。その時、警察に相談したが取り合ってもらえず、それで、警察官を志望していたのをやめ、柳内警備保障に入社した。
「松本さんのいるのとは違う班が受ければよかったのに」
悠花が口を尖らせる。
「他の班は別の仕事にかかってたらしいわよ」
雅美が言う。
「運が悪かったですね」
涼真が嘆息するのに、湊が言う。
「それでも、こういう因縁があるのなら、先に言うべきだったな。せめて直接関係のない係にまわるとかやりようがあっただろう」
「仕事に私情は持ちこまない、という姿勢だったから、言う程でもないと思ったんだろ」
「だからこうして、トラブルになっている」
涼真は言い返す言葉が見つからないという風に、眉をひそめた。
「皆さんも、報告、連絡、相談。お願いしますね」
錦織がにこにことして、しめた。
「何かあればすぐに声をかけて下さい。ドアの前にいますので」
そう言いおいて、廊下へ出た。
その2時間後。警護対象者の父親の方がその部屋の前に来て、ドアをノックした。
「礼子」
しかし、返事はない。
父親も、警護していた警備員も、嫌な予感がした。
「礼子、礼子」
ドンドンとドアを叩く父親を脇へやり、
「失礼します」
と言いながらドアを素早く開ける。
ベッド、机、クローゼット。高価そうな物が並ぶ部屋のどこにも、警護対象者の姿はなかった。
「礼子!?」
警備員達は慌てたが、手分けして広い庭や家の中の捜索に向かい、また、会社へ連絡を入れる。
父親はオロオロとしていたが、突然激昂すると、警備員の1人の胸倉を掴んだ。
「お前だろう!? 父親の事でお前は私を恨んでいた!」
「落ち着いて下さい」
「落ち着けるか! お前が! 礼子を!」
そこまで話して、錦織はコーヒーを一口飲んだ。
「というのが事件のあらましです」
ある自動車メーカーの社長に「罪を認めろ。犯した罪は自分であがなえ」という手紙が毎日届き、身の危険を感じた社長は、自分と娘の警護を柳内警備保障に依頼して来たそうだ。
しかしある日、娘が忽然と自宅から消え、父親が逆上した。
警備についていた社員の1人の父親が、この会社から理不尽に辞職を迫られてノイローゼになって退職した経緯があり、彼が復讐のために娘を誘拐したのだと主張しているのだ。
勿論その社員は否定している。
そこで、警察とは別に、柳内警備保障でも事件を調査する事となったのだ。
そしてその調査を命じられたのが、秘書課別室だった。
「警察に任せた方がいいんじゃないですか」
湊が即言う。
「そう言わずに、社員が関与したのかどうか、それを調査してくださいよ」
「社員が関与していたとすれば、警備会社としてはマイナスですね」
心配そうに涼真が言うのに、錦織は、にこにこしながらもきっぱりと言った。
「それをもみ消したら最悪です。その時はその時。事実を社長に報告するまでですよ」
それで別室は、その業務に取り掛かる事になった。
まず依頼者である畠中正男は、大手自動車メーカーの社長だ。2年前に妻と死別している。仕事には厳しいという評判だが、嘘のように、娘は大事にしているという。
娘の畠中礼子は、女子大に通う20歳。大人しいが、頑固な一面もあるらしい。
警護メンバーに入っていた、松本太郎。真面目で曲がった事が嫌いな男だ。父親がその自動車工場に勤めていたが、リストラ対象に入り、嫌がらせの末に辞職に追い込まれたらしい。だが、その時にはノイローゼになって、自殺未遂を起こしている。その時、警察に相談したが取り合ってもらえず、それで、警察官を志望していたのをやめ、柳内警備保障に入社した。
「松本さんのいるのとは違う班が受ければよかったのに」
悠花が口を尖らせる。
「他の班は別の仕事にかかってたらしいわよ」
雅美が言う。
「運が悪かったですね」
涼真が嘆息するのに、湊が言う。
「それでも、こういう因縁があるのなら、先に言うべきだったな。せめて直接関係のない係にまわるとかやりようがあっただろう」
「仕事に私情は持ちこまない、という姿勢だったから、言う程でもないと思ったんだろ」
「だからこうして、トラブルになっている」
涼真は言い返す言葉が見つからないという風に、眉をひそめた。
「皆さんも、報告、連絡、相談。お願いしますね」
錦織がにこにことして、しめた。
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