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お騒がせ
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積み上がった殲滅アリを片っ端から素材剥ぎをしていく。そしていらない部分をまとめ、巣穴に押し込んで今度は高温で焼いて処分し、山を押しつぶして埋める。後は、囲い込んだ壁を崩してしまえば終了だ。
「ふう、終わった。後処理が大変だよな」
「ギ酸袋が破れないようにするのが面倒臭いぜ」
「アリを食べる地域もあるけど、ちょっとねえ。これで美味しかったらありがたいんだけど」
ユーリ、カイ、ジンは言いながら、取った素材をカバンにしまい込んだ。
そこで、エマ達に話しかける。
「一応協会に報告をしないとな」
カイが言い、エマ達は我に返ったようになった。
「あの、ありがとうございました」
「いいよいいよ。こっちもちょっとしたボーナスになったからねえ」
そう。ただの薬草採取だと、つまらない上に収入面で苦しいところだった。しかし、柵を超えていいと言われるまで、どうにかしなければならない。
一緒に報告するためにと、協会へ向かって歩き出す。
「私達は、『虹の鳥』というチームを組んでいます。私はエマ」
エマは剣を腰から下げている。
「私はライラです。本当にありがとうございました」
ライラは剣を腰に下げ、左腕には盾を持っていた。
「あの、ユンです」
弓を持つユンは、エマの斜め後ろに隠れるようにして言った。
3人共まだ経験の少ない探検者で、ようやく角ウサギ程度の依頼をこなせるようになったばかりだ。
「オレはカイ」
「俺はユーリ」
「ボクはジン」
「オレ達は銀月ってチームだ。よろしくな」
カイが愛想よく言う。
「高ランクの方なんですか」
エマが言うのに、ユーリ達は笑った。
「とんでもない。高等学校を出たてでさ。在学中に免許は取ってたんだけど、専業でやり出したのは今回がはじめてだぜ。な!」
「そうそう。今までは食料調達とか実験とか訓練とかだったからね」
「ま、新人だな」
それにエマ達が目を丸くした。
「そんな新人、見た事も聞いた事もないわ」
笑い合って雑談しながら協会へ戻ると、ユーリ達にとって運の悪い事に、例のうるさい新人職員がカウンター当番で窓口に座っていた。
嫌だが、行かないわけにもいかない。
ユーリ達は彼女の前に並んだ。
順番が回ってくる前に、何かの用事で交代しないかと思ったが、交代とはならず、順番が回って来た。
案の定、ユーリ達の顔を見ると、それまでの愛想が嘘のように引っ込む。
「銀月さん。はい、カードと採取品を出して下さい」
「予定外のものも増えて、かなり多いんですけど」
ユーリが言うが、ツンと澄まし、冷笑を浮かべる。
「はいはい。草の採取なんてかっこ悪いのはわかりますけどね。さっさと出してください。全部」
周囲の探索者達が、それを聞いて忍び笑いを漏らす。
カチンときたカイは、確認した。
「全部だな?」
「ええ、全部。カウンターに並べてください」
カイ、ユーリ、ジンは頷き合い、全部をバッグから出し始めた。
バッグと言っても、見かけ通りのバッグではない。内部が広く、見かけよりもはるかに物を収納できる、収納バッグだ。中の上くらいの家庭の子なら、小容量のものを通学用などとして持っているが、大容量の物は貴族や高レベルの探索者に限られる。何しろ、要領に応じて値段が変わる。このレベルのものは、かなり高価だ。
なぜそんな物を、大商会の子であるジンはともかく、下級の貧乏貴族の子であるカイや花街の子でしかないユーリまでもが持っているのかというと、ユーリが学生時代に自作したからだった。自作品なので、元手は安く、容量は恐ろしく大きい。学校にあった備品で収納実験してみたら、大型馬車126台と訓練用のゴーレム50機を収納してまだ余裕があった。
ボディバッグからドンドンと出て来る殲滅アリの甲殻とギ酸に、協会ロビーはシンとし、次いで騒然となった。
「な!なん!」
「カウンターに乗らないよ。床の上でいいのかなあ?」
ジンがのんびりと言うが、目は笑っていない。
「いいんじゃねえの?」
「ああ、ギ酸袋だから踏んで破らないでね」
周囲であっけにとられる探索者に言うと、言われた方は慌てて飛びのいた。
「何をやってるんですか!?」
奥から先輩職員が出て来るのに、
「ここに全部出せって言ったから」
と言えば、先輩職員は溜め息をついた。
そこに、階段から声がかかった。
「なんだこりゃ」
一斉に全ての目がそちらに向く。
「あ、支部長」
支部長と、支部長を訪ねて来た帝国魔術団副団長が、揃って床の上に広げられていく甲殻とギ酸袋をあっけにとられたように眺めていた。
「ふう、終わった。後処理が大変だよな」
「ギ酸袋が破れないようにするのが面倒臭いぜ」
「アリを食べる地域もあるけど、ちょっとねえ。これで美味しかったらありがたいんだけど」
ユーリ、カイ、ジンは言いながら、取った素材をカバンにしまい込んだ。
そこで、エマ達に話しかける。
「一応協会に報告をしないとな」
カイが言い、エマ達は我に返ったようになった。
「あの、ありがとうございました」
「いいよいいよ。こっちもちょっとしたボーナスになったからねえ」
そう。ただの薬草採取だと、つまらない上に収入面で苦しいところだった。しかし、柵を超えていいと言われるまで、どうにかしなければならない。
一緒に報告するためにと、協会へ向かって歩き出す。
「私達は、『虹の鳥』というチームを組んでいます。私はエマ」
エマは剣を腰から下げている。
「私はライラです。本当にありがとうございました」
ライラは剣を腰に下げ、左腕には盾を持っていた。
「あの、ユンです」
弓を持つユンは、エマの斜め後ろに隠れるようにして言った。
3人共まだ経験の少ない探検者で、ようやく角ウサギ程度の依頼をこなせるようになったばかりだ。
「オレはカイ」
「俺はユーリ」
「ボクはジン」
「オレ達は銀月ってチームだ。よろしくな」
カイが愛想よく言う。
「高ランクの方なんですか」
エマが言うのに、ユーリ達は笑った。
「とんでもない。高等学校を出たてでさ。在学中に免許は取ってたんだけど、専業でやり出したのは今回がはじめてだぜ。な!」
「そうそう。今までは食料調達とか実験とか訓練とかだったからね」
「ま、新人だな」
それにエマ達が目を丸くした。
「そんな新人、見た事も聞いた事もないわ」
笑い合って雑談しながら協会へ戻ると、ユーリ達にとって運の悪い事に、例のうるさい新人職員がカウンター当番で窓口に座っていた。
嫌だが、行かないわけにもいかない。
ユーリ達は彼女の前に並んだ。
順番が回ってくる前に、何かの用事で交代しないかと思ったが、交代とはならず、順番が回って来た。
案の定、ユーリ達の顔を見ると、それまでの愛想が嘘のように引っ込む。
「銀月さん。はい、カードと採取品を出して下さい」
「予定外のものも増えて、かなり多いんですけど」
ユーリが言うが、ツンと澄まし、冷笑を浮かべる。
「はいはい。草の採取なんてかっこ悪いのはわかりますけどね。さっさと出してください。全部」
周囲の探索者達が、それを聞いて忍び笑いを漏らす。
カチンときたカイは、確認した。
「全部だな?」
「ええ、全部。カウンターに並べてください」
カイ、ユーリ、ジンは頷き合い、全部をバッグから出し始めた。
バッグと言っても、見かけ通りのバッグではない。内部が広く、見かけよりもはるかに物を収納できる、収納バッグだ。中の上くらいの家庭の子なら、小容量のものを通学用などとして持っているが、大容量の物は貴族や高レベルの探索者に限られる。何しろ、要領に応じて値段が変わる。このレベルのものは、かなり高価だ。
なぜそんな物を、大商会の子であるジンはともかく、下級の貧乏貴族の子であるカイや花街の子でしかないユーリまでもが持っているのかというと、ユーリが学生時代に自作したからだった。自作品なので、元手は安く、容量は恐ろしく大きい。学校にあった備品で収納実験してみたら、大型馬車126台と訓練用のゴーレム50機を収納してまだ余裕があった。
ボディバッグからドンドンと出て来る殲滅アリの甲殻とギ酸に、協会ロビーはシンとし、次いで騒然となった。
「な!なん!」
「カウンターに乗らないよ。床の上でいいのかなあ?」
ジンがのんびりと言うが、目は笑っていない。
「いいんじゃねえの?」
「ああ、ギ酸袋だから踏んで破らないでね」
周囲であっけにとられる探索者に言うと、言われた方は慌てて飛びのいた。
「何をやってるんですか!?」
奥から先輩職員が出て来るのに、
「ここに全部出せって言ったから」
と言えば、先輩職員は溜め息をついた。
そこに、階段から声がかかった。
「なんだこりゃ」
一斉に全ての目がそちらに向く。
「あ、支部長」
支部長と、支部長を訪ねて来た帝国魔術団副団長が、揃って床の上に広げられていく甲殻とギ酸袋をあっけにとられたように眺めていた。
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