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聴聞会
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「でも、そいつらも脅されたりしないのか?」
カイが言うのも尤もだ。
「大丈夫。誰が証言するか言ってないし、こちら側の証言者は、密かにうちに呼び寄せてガードしてる。例え皇室でも手出しはできないだろう」
それでユーリ達はその事をカリムに言うと、
「無実を勝ち取って来なさい」
と強い笑顔で言われた。
そうして、揃って銀月の馬車に乗って、ユーリ達は皇都に乗り込んだ。
「なんだ、これ。揺れが少なくて楽だな。流石は銀花楼。お抱えの探索者チームにもいい待遇なんだな。予約がギッチリで高位貴族と言えどもなかなかだと聞いたぞ、この新型馬車」
キリーは、馬車に感動していた。
「いやあ、これってユーリが開発したんだよね。だからこれはプロトタイプ。第一号だよ」
「お前だったのか。ああ、だからジンの所が売ってるんだな」
「その通り」
久しぶりの皇都は、セレムの夜のように賑やかで、昼のような人出だった。探索者の恰好の人もいるが、セレムを歩く探索者とは違って、どこかきれいに見え、血の臭いがしないように感じた。
そして市場や食料品を売る店も、皇都の方が大きい。
「こら、どこへ行く。このまま城へ行くぞ」
「だってさあ、キリー。セレムにはないお菓子があるんだよう」
ジンの首根っこを捕まえてキリーが言って聞かせる。
「今は聴聞会の為に、特例で皇都に入っているんだからな。食べ歩きや買い物は無実になった後だ」
ジンはしょぼんとしていたが、馬車は皇都の門を守る兵に見張られる形で、皇城に真っすぐに入って行った。
ナジムとスレードとモルドは、別室で待っていた。
「今更何でしょうね」
スレードが言うのに、ナジムが答える。
「流石に、大惨事になりかけたにしては、調査も短く、判決に関わった者が少なすぎたと陛下がおっしゃられたのだ。
それでも、証言者は言い含めてある。心配はいらん」
「そうですよね、殿下」
モルドはそれを聞きながら、
(もう1度聞くためだけに集めるものかな)
と、嫌な予感がしていた。
皇帝はギリギリまで仕事をしていたが、そろそろ時間だという事で、宰相を伴って聴聞会が開かれる議場へ移動していた。
「お前の下の息子が、よく動いていたらしいな。あの3人の友人だったか」
「は。当日は別行動しておりましたが、在学中は、何かと一緒に行動していたようです」
「ユーリ・セレムか。魔術の才能がずば抜けていて、天才と呼ばれていたとか聞いたが」
「はい。あのイリーナ・セエトをしのぐやもと言わしめておったそうです」
「そんな天才が、わざわざ手土産を欲したのか?」
「どうなんでしょうなあ。早々に魔術団の団長と一部の関係大臣がそう結論を出しましたので」
皇帝は詰まらなさそうな顔で、鼻を鳴らした。
皇都への影響もなく、多少の被害はあったが、躍起になって真実をあぶり出そうとしているわけではなかった。
ただ、ナジムが関係しているのであれば、皇太子レースの最中である今、将来皇帝になるのにふさわしいかどうか、非常に大切な判断材料だと思っている。
それと、「天才魔術師」というものへの興味だ。
「余の手を煩わせるのだ。つまらない茶番劇は許さん」
皇帝はそう言って、議場に通じる大きな扉の前に立った。
ナジムの母である第2皇妃は、「天才魔術師」の罪を確定するという聴聞会に、神経が刺激されていた。
「何が天才魔術師よ。ああ。つくづく、私達に目障りな存在だわ。
19年前も、あの女が――!
まあ、ナジムの邪魔をするなら、今回も消してしまえばいいだけだわ」
そう言って笑顔を浮べると、侍女を引き連れて、議場を覗きに向かった。
そして、主だった貴族、上の方の文官、軍の代表者、帝国魔術団の当日その場に行った団員と団長、荷馬車に拾われた避難民達、ナジム達とユーリ達が勢揃いした中、重々しい扉が開いて、皇帝と宰相が現れた。
このそうそうたるメンバーは、いかに例の件が重大事だったのかを物語っていた。
「女神の御前だ。権威も家柄も関係なく、ただ偽りなく真実のみを述べよ。忖度もごまかしも許さぬ」
そう皇帝が宣言し、聴聞会が始まった。
カイが言うのも尤もだ。
「大丈夫。誰が証言するか言ってないし、こちら側の証言者は、密かにうちに呼び寄せてガードしてる。例え皇室でも手出しはできないだろう」
それでユーリ達はその事をカリムに言うと、
「無実を勝ち取って来なさい」
と強い笑顔で言われた。
そうして、揃って銀月の馬車に乗って、ユーリ達は皇都に乗り込んだ。
「なんだ、これ。揺れが少なくて楽だな。流石は銀花楼。お抱えの探索者チームにもいい待遇なんだな。予約がギッチリで高位貴族と言えどもなかなかだと聞いたぞ、この新型馬車」
キリーは、馬車に感動していた。
「いやあ、これってユーリが開発したんだよね。だからこれはプロトタイプ。第一号だよ」
「お前だったのか。ああ、だからジンの所が売ってるんだな」
「その通り」
久しぶりの皇都は、セレムの夜のように賑やかで、昼のような人出だった。探索者の恰好の人もいるが、セレムを歩く探索者とは違って、どこかきれいに見え、血の臭いがしないように感じた。
そして市場や食料品を売る店も、皇都の方が大きい。
「こら、どこへ行く。このまま城へ行くぞ」
「だってさあ、キリー。セレムにはないお菓子があるんだよう」
ジンの首根っこを捕まえてキリーが言って聞かせる。
「今は聴聞会の為に、特例で皇都に入っているんだからな。食べ歩きや買い物は無実になった後だ」
ジンはしょぼんとしていたが、馬車は皇都の門を守る兵に見張られる形で、皇城に真っすぐに入って行った。
ナジムとスレードとモルドは、別室で待っていた。
「今更何でしょうね」
スレードが言うのに、ナジムが答える。
「流石に、大惨事になりかけたにしては、調査も短く、判決に関わった者が少なすぎたと陛下がおっしゃられたのだ。
それでも、証言者は言い含めてある。心配はいらん」
「そうですよね、殿下」
モルドはそれを聞きながら、
(もう1度聞くためだけに集めるものかな)
と、嫌な予感がしていた。
皇帝はギリギリまで仕事をしていたが、そろそろ時間だという事で、宰相を伴って聴聞会が開かれる議場へ移動していた。
「お前の下の息子が、よく動いていたらしいな。あの3人の友人だったか」
「は。当日は別行動しておりましたが、在学中は、何かと一緒に行動していたようです」
「ユーリ・セレムか。魔術の才能がずば抜けていて、天才と呼ばれていたとか聞いたが」
「はい。あのイリーナ・セエトをしのぐやもと言わしめておったそうです」
「そんな天才が、わざわざ手土産を欲したのか?」
「どうなんでしょうなあ。早々に魔術団の団長と一部の関係大臣がそう結論を出しましたので」
皇帝は詰まらなさそうな顔で、鼻を鳴らした。
皇都への影響もなく、多少の被害はあったが、躍起になって真実をあぶり出そうとしているわけではなかった。
ただ、ナジムが関係しているのであれば、皇太子レースの最中である今、将来皇帝になるのにふさわしいかどうか、非常に大切な判断材料だと思っている。
それと、「天才魔術師」というものへの興味だ。
「余の手を煩わせるのだ。つまらない茶番劇は許さん」
皇帝はそう言って、議場に通じる大きな扉の前に立った。
ナジムの母である第2皇妃は、「天才魔術師」の罪を確定するという聴聞会に、神経が刺激されていた。
「何が天才魔術師よ。ああ。つくづく、私達に目障りな存在だわ。
19年前も、あの女が――!
まあ、ナジムの邪魔をするなら、今回も消してしまえばいいだけだわ」
そう言って笑顔を浮べると、侍女を引き連れて、議場を覗きに向かった。
そして、主だった貴族、上の方の文官、軍の代表者、帝国魔術団の当日その場に行った団員と団長、荷馬車に拾われた避難民達、ナジム達とユーリ達が勢揃いした中、重々しい扉が開いて、皇帝と宰相が現れた。
このそうそうたるメンバーは、いかに例の件が重大事だったのかを物語っていた。
「女神の御前だ。権威も家柄も関係なく、ただ偽りなく真実のみを述べよ。忖度もごまかしも許さぬ」
そう皇帝が宣言し、聴聞会が始まった。
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