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反乱軍
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ナジムは、ひとしきりイライラと暴れ、当たり散らしてから、ふてくされていた。
「ドラゴンの卵を盗りに行って、そのせいであんな騒ぎになるなんて、知らなかった。それならそうと、教えておいてくれればよかったのに」
ナジムが恨みがましくいうのを、スレードは
「その通りでございます、殿下」
と相変わらずよいしょし、モルドは、
(わかるだろ、普通。ドラゴンが物凄く子供を大事にするというところから。
というか、殿下が廃嫡に追い込まれたのは、それを他人に擦り付けて、証言者を脅してまわったからじゃないか)
と思った。
「しかし、殿下にとっては、平民の魔術師というのは因縁のある存在なんですね」
「うむ。イリーナ・セエトの事は知っていたが、まさか父上が皇妃に迎えようとされていたとはな。母上が反対するのもよくわかる」
「はい。きっと、一時の気の迷いというやつですよ」
スレードがうんうんと言うのに、モルドは、
(だからって、嫉妬の挙句殺し屋を差し向けたらだめだろうに。
しかも今回、ナジム殿下の廃嫡で逆恨みして、ユーリを殺そうとしたって、意味ないしな)
と考え、溜め息をついた。
ナジムは廃嫡されて反省の意味で部屋に閉じ込められ、スレードとモルドも各々実家で謹慎になっていた。
そんなある日、ナジムの祖父である元ローランド侯爵からこっそりと声がかかり、「陛下は御乱心なされているのだ。ナジムを皇帝にし、このトゥヤルザ帝国を正しい姿に戻すのを手伝ってくれないか」と言われ、どうせこのままでは先が危ういと考えた父親がそれに乗り、こうして反乱軍に加わる羽目になったのだ。
「そうか。お前もそう思うか」
モルドの溜め息を誤解したナジムに言われ、モルドは反射的に肯定した。
(ああ、もうどうでもいい)
モルドは完全に、ヤケクソになっていた。
ユーリ、カイ、ジン、キリーは、皇帝の警護を担当している若い護衛官の1人をつけられ、元ローランド侯爵が立てこもっている所まで来た。
「驚く程快適ですね」
驚く護衛官だったが、ユーリは不満顔だ。
「馬が疲れて途中で休憩や替え馬が必要だろ。水や飼い葉もいる。これを何とかできないもんかな。馬なしで」
それにカイがキョトンとした。
「馬がないと馬車じゃねえよ」
「ううん。じゃあ、魔動車とか」
「魔石で動かすの?それともゴーレムかな?」
ジンは興味を持った。
「魔石がいいんじゃないかな。
よし。帰ったら取り掛かろう」
言って、ユーリは馬車を降りた。
小高い丘を見上げるようにして、現ローランド侯爵の軍が広がっていた。
こちらの姿を見付け、すぐにローランド侯爵が急いで走って来る。
「御足労をおかけしまして申し訳ございません。ローランド侯爵でございます」
ローランド侯爵は目の下に隈を作った顔でそう言った。
「皇帝陛下より依頼を受けた銀月と、陛下の代理を仰せつかったキリー・サ・ライトです」
キリーはそう言って、まずは状況を聞きたいと言った。
説明によると、元ローランド侯爵やナジムは、私兵と共に領内の丘に立てこもっている。そして元ローランド侯爵に協力しそうな領はいくつかあるが、流石に反乱となると踏ん切りがつかないのか、態度を保留し、様子を見ている所らしい。
膠着状態に陥っている原因は、私兵にあった。魔術師も剣士もおり、それがまた、強いのだ。こちらから近付いても、上から攻撃を浴びせて来て、近寄る事もできないとローランド侯爵は言った。
「ふうん」
カイが突撃したそうな顔をしている。
「だめだからな、カイ」
キリーはカイに釘を刺した。
「水と食料はあるのかな」
ジンが言うと、ローランド侯爵は頷いた。
「計算では、数か月持ちそうです」
「ふうん。同盟軍が合流するのを待ってるのかな。
それより、ラトロヌが国境付近に展開するのがいいタイミングだったのはたまたまかな」
ユーリの問いに、ローランド侯爵は悲愴な顔で言う。
「実は、我が領の小麦を父は密かにラトロヌへ売っておりました。それがわかったのは、つい先日の事でした」
「じゃあ、ラトロヌが国境で軍を引き付けているのとこの反乱は、連動してるのか。兵力を分散させるために」
護衛官が難しい顔をして唸った。
「まあ、支援者が背後から襲って来ない内に何とかしないとな。
威力偵察といくか」
ユーリはそう言って、丘を眺めた。
「ドラゴンの卵を盗りに行って、そのせいであんな騒ぎになるなんて、知らなかった。それならそうと、教えておいてくれればよかったのに」
ナジムが恨みがましくいうのを、スレードは
「その通りでございます、殿下」
と相変わらずよいしょし、モルドは、
(わかるだろ、普通。ドラゴンが物凄く子供を大事にするというところから。
というか、殿下が廃嫡に追い込まれたのは、それを他人に擦り付けて、証言者を脅してまわったからじゃないか)
と思った。
「しかし、殿下にとっては、平民の魔術師というのは因縁のある存在なんですね」
「うむ。イリーナ・セエトの事は知っていたが、まさか父上が皇妃に迎えようとされていたとはな。母上が反対するのもよくわかる」
「はい。きっと、一時の気の迷いというやつですよ」
スレードがうんうんと言うのに、モルドは、
(だからって、嫉妬の挙句殺し屋を差し向けたらだめだろうに。
しかも今回、ナジム殿下の廃嫡で逆恨みして、ユーリを殺そうとしたって、意味ないしな)
と考え、溜め息をついた。
ナジムは廃嫡されて反省の意味で部屋に閉じ込められ、スレードとモルドも各々実家で謹慎になっていた。
そんなある日、ナジムの祖父である元ローランド侯爵からこっそりと声がかかり、「陛下は御乱心なされているのだ。ナジムを皇帝にし、このトゥヤルザ帝国を正しい姿に戻すのを手伝ってくれないか」と言われ、どうせこのままでは先が危ういと考えた父親がそれに乗り、こうして反乱軍に加わる羽目になったのだ。
「そうか。お前もそう思うか」
モルドの溜め息を誤解したナジムに言われ、モルドは反射的に肯定した。
(ああ、もうどうでもいい)
モルドは完全に、ヤケクソになっていた。
ユーリ、カイ、ジン、キリーは、皇帝の警護を担当している若い護衛官の1人をつけられ、元ローランド侯爵が立てこもっている所まで来た。
「驚く程快適ですね」
驚く護衛官だったが、ユーリは不満顔だ。
「馬が疲れて途中で休憩や替え馬が必要だろ。水や飼い葉もいる。これを何とかできないもんかな。馬なしで」
それにカイがキョトンとした。
「馬がないと馬車じゃねえよ」
「ううん。じゃあ、魔動車とか」
「魔石で動かすの?それともゴーレムかな?」
ジンは興味を持った。
「魔石がいいんじゃないかな。
よし。帰ったら取り掛かろう」
言って、ユーリは馬車を降りた。
小高い丘を見上げるようにして、現ローランド侯爵の軍が広がっていた。
こちらの姿を見付け、すぐにローランド侯爵が急いで走って来る。
「御足労をおかけしまして申し訳ございません。ローランド侯爵でございます」
ローランド侯爵は目の下に隈を作った顔でそう言った。
「皇帝陛下より依頼を受けた銀月と、陛下の代理を仰せつかったキリー・サ・ライトです」
キリーはそう言って、まずは状況を聞きたいと言った。
説明によると、元ローランド侯爵やナジムは、私兵と共に領内の丘に立てこもっている。そして元ローランド侯爵に協力しそうな領はいくつかあるが、流石に反乱となると踏ん切りがつかないのか、態度を保留し、様子を見ている所らしい。
膠着状態に陥っている原因は、私兵にあった。魔術師も剣士もおり、それがまた、強いのだ。こちらから近付いても、上から攻撃を浴びせて来て、近寄る事もできないとローランド侯爵は言った。
「ふうん」
カイが突撃したそうな顔をしている。
「だめだからな、カイ」
キリーはカイに釘を刺した。
「水と食料はあるのかな」
ジンが言うと、ローランド侯爵は頷いた。
「計算では、数か月持ちそうです」
「ふうん。同盟軍が合流するのを待ってるのかな。
それより、ラトロヌが国境付近に展開するのがいいタイミングだったのはたまたまかな」
ユーリの問いに、ローランド侯爵は悲愴な顔で言う。
「実は、我が領の小麦を父は密かにラトロヌへ売っておりました。それがわかったのは、つい先日の事でした」
「じゃあ、ラトロヌが国境で軍を引き付けているのとこの反乱は、連動してるのか。兵力を分散させるために」
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「まあ、支援者が背後から襲って来ない内に何とかしないとな。
威力偵察といくか」
ユーリはそう言って、丘を眺めた。
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