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銀花楼へ
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ユーリ、カイ、ジン、キリーは、並んで呼ばれるのを待っていた。
ナジム達の刑の執行は非公開で、ひっそりと行われた。後は依頼料を受け取って、セレムへ帰るだけだ。
「いいのか、キリー。セレムに来るなんて」
キリーはユーリ達の肩を持つとして冷たいあしらいを受けており、ドラゴン事件についても、父や兄の協力を得て目撃者を探し出し、保護できたのだ。
「今更ご機嫌を窺って来るようなやつら、願い下げだ」
キリーはクールでいて、こういう所は頑固だ。
「私が銀花楼の経理に就くからには、無駄を排除し、尚且つ必要な所には投資を惜しまず、もっと大きくして見せる」
「頼もしいね」
ジンがにこにことして言う。
その時やっと係官が来て、皇帝との面会の準備ができたと呼びに来た。
おとなしくついて行くと、謁見の間だった。皇帝はまだだが、大臣らが並んでいた。
「うわ。これが謁見の間か」
カイがキョロキョロと視線をさ迷わせて言う。
「人生でそうそうないよね、ここに来るの。よく見ておこうっと」
ジンもしっかりと調度品などを眺め始めた。
「逞しいよな、お前ら」
ユーリが笑うのに、キリーが、
「お前も人の事は言えないだろ」
と言っておく。
皇帝を待つ大臣達は、ある者は苦々しい顔を隠そうともせず、ある者は好意的な笑みを向け、ある者は値踏みするような目を向け、ヒソヒソと囁きをかわしている。
と、しばらく待たされたあと、ようやく皇帝が姿を現した。
まずは反乱事件について軽く説明がなされ、ようやくユーリ達の報酬の話になった。
ちょっと裕福な6人家族が3年暮らせるほどの金銭だ。
これで終わりかと思ったが、皇帝は続けて言った。
「それと、新たにわかった事がある。
アイダが元ローランド侯爵に頼んで手の者を借り、余の皇妃となる予定だったイリーナを害し、余とイリーナの子をセレムへ送ったが、楼主カリム・シラルほか数名の証言から、それがユーリ・セレムだとわかった。よって、ユーリ・セレムはこれよりユーリ・サ・ヤルザと名を改める事とし、この印証を授ける」
それで宰相が、プレートを掲げた。スズランの花だ。
「は?」
ユーリ達は目がテンだが、大臣達は知っていたようだ。ユーリ達はキョトンとして、宰相がそれを秘書官である息子――キリーの兄に渡し、キリーの兄がそれをユーリのところに持って来るのを、ただ見ていた。
皇帝はユーリを見、穏やかに笑った。
「楼主は頑固にそうだとも違うとも言おうとしなかったのだがな。落としだねが誰かは言わないのが決まりだとか言って。だが、どう見てもお前はイリーナと私の子だ。第一、私はお前をイリーナと共に育てる気だったのだから、勝手にどこぞのバカが連れ去ったのだから、返せ、誘拐だと言えば、ようやく納得したわ」
しかしユーリとしては、突然そんな話をされても困るばかりだ。
「ええ?そう、ですか?」
皇帝は快活に笑った。
「まあ、今急にそんな事を言われても困るだけだろう。それは理解している。
だから、まずは認知する事にした。このまま好きにしてもいい。セレムに縛られる事もない。
だが、たまには顔を見せに来てくれぬか」
ユーリは考え、そして、ツンとして言った。
「私は絶対に同衾はしない遊妓ですから。まあ、食事と話し相手なら」
皇帝は豪快に笑った。
揺れの少ない新型馬車が、セレムへ向かって街道を行く。
「いいのか?もう、遊妓をしなくていいんだぞ。何だったら、皇太子も狙えるぜ」
カイが言うが、
「面倒臭いから嫌だ」
の一言でユーリは眉をひそめた。
「ユーリらしいけど。
でも、続けるの?」
「断るだけとは言え、客が一応は来て、お金を落としていくだろ」
断られるのを承知で指名する客が今も続くという不思議な現象が続いているのだ。訊くと、ユーリにフられるというのが1種の新たなステータスだとか言っていた。
「わからん。さっぱりわからん」
カイが言うが、キリーは、
「それで客が納得してて、銀花楼が儲かれば問題はない」
とあっさり言い切る。
「あはは。キリーがいると安泰だよね」
ジンが言い、軽やかな笑い声が重なる。
「お、見えて来たぜ!」
セレムの大門が見えて来た。
ナジム達の刑の執行は非公開で、ひっそりと行われた。後は依頼料を受け取って、セレムへ帰るだけだ。
「いいのか、キリー。セレムに来るなんて」
キリーはユーリ達の肩を持つとして冷たいあしらいを受けており、ドラゴン事件についても、父や兄の協力を得て目撃者を探し出し、保護できたのだ。
「今更ご機嫌を窺って来るようなやつら、願い下げだ」
キリーはクールでいて、こういう所は頑固だ。
「私が銀花楼の経理に就くからには、無駄を排除し、尚且つ必要な所には投資を惜しまず、もっと大きくして見せる」
「頼もしいね」
ジンがにこにことして言う。
その時やっと係官が来て、皇帝との面会の準備ができたと呼びに来た。
おとなしくついて行くと、謁見の間だった。皇帝はまだだが、大臣らが並んでいた。
「うわ。これが謁見の間か」
カイがキョロキョロと視線をさ迷わせて言う。
「人生でそうそうないよね、ここに来るの。よく見ておこうっと」
ジンもしっかりと調度品などを眺め始めた。
「逞しいよな、お前ら」
ユーリが笑うのに、キリーが、
「お前も人の事は言えないだろ」
と言っておく。
皇帝を待つ大臣達は、ある者は苦々しい顔を隠そうともせず、ある者は好意的な笑みを向け、ある者は値踏みするような目を向け、ヒソヒソと囁きをかわしている。
と、しばらく待たされたあと、ようやく皇帝が姿を現した。
まずは反乱事件について軽く説明がなされ、ようやくユーリ達の報酬の話になった。
ちょっと裕福な6人家族が3年暮らせるほどの金銭だ。
これで終わりかと思ったが、皇帝は続けて言った。
「それと、新たにわかった事がある。
アイダが元ローランド侯爵に頼んで手の者を借り、余の皇妃となる予定だったイリーナを害し、余とイリーナの子をセレムへ送ったが、楼主カリム・シラルほか数名の証言から、それがユーリ・セレムだとわかった。よって、ユーリ・セレムはこれよりユーリ・サ・ヤルザと名を改める事とし、この印証を授ける」
それで宰相が、プレートを掲げた。スズランの花だ。
「は?」
ユーリ達は目がテンだが、大臣達は知っていたようだ。ユーリ達はキョトンとして、宰相がそれを秘書官である息子――キリーの兄に渡し、キリーの兄がそれをユーリのところに持って来るのを、ただ見ていた。
皇帝はユーリを見、穏やかに笑った。
「楼主は頑固にそうだとも違うとも言おうとしなかったのだがな。落としだねが誰かは言わないのが決まりだとか言って。だが、どう見てもお前はイリーナと私の子だ。第一、私はお前をイリーナと共に育てる気だったのだから、勝手にどこぞのバカが連れ去ったのだから、返せ、誘拐だと言えば、ようやく納得したわ」
しかしユーリとしては、突然そんな話をされても困るばかりだ。
「ええ?そう、ですか?」
皇帝は快活に笑った。
「まあ、今急にそんな事を言われても困るだけだろう。それは理解している。
だから、まずは認知する事にした。このまま好きにしてもいい。セレムに縛られる事もない。
だが、たまには顔を見せに来てくれぬか」
ユーリは考え、そして、ツンとして言った。
「私は絶対に同衾はしない遊妓ですから。まあ、食事と話し相手なら」
皇帝は豪快に笑った。
揺れの少ない新型馬車が、セレムへ向かって街道を行く。
「いいのか?もう、遊妓をしなくていいんだぞ。何だったら、皇太子も狙えるぜ」
カイが言うが、
「面倒臭いから嫌だ」
の一言でユーリは眉をひそめた。
「ユーリらしいけど。
でも、続けるの?」
「断るだけとは言え、客が一応は来て、お金を落としていくだろ」
断られるのを承知で指名する客が今も続くという不思議な現象が続いているのだ。訊くと、ユーリにフられるというのが1種の新たなステータスだとか言っていた。
「わからん。さっぱりわからん」
カイが言うが、キリーは、
「それで客が納得してて、銀花楼が儲かれば問題はない」
とあっさり言い切る。
「あはは。キリーがいると安泰だよね」
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「お、見えて来たぜ!」
セレムの大門が見えて来た。
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