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願い
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身分が高ければ、どれだけ手を出してもいいのか。少なくとも、手を出したなら、責任を取れ!
そう、言いたかった。
「大丈夫。心配はいらないわ。だからしっかりして、早紀ちゃん」
親友は産んだばかりの赤子を抱いて、ただ、
「この子をお願い。どうか、どうか……」
と涙を浮かべて繰り返すのみで、もう、死がすぐそこまで迫って来ているのは、誰の目にも明らかだった。
「熊沢にも、秘密に……」
「ええ、ええ、必ず」
「お願いね、早苗さん。
ああ……ただ、幸せになって欲しい。何のしがらみも、関係ない、ところで……」
そして、目は光を失った。
それが分かったとでもいうのか、赤子はわんわんと泣き出した。
「ああ、よしよし。いい子ね。泣かないで」
そして、親友を看取った早苗も、赤子と一緒に泣き出した。
傍にいた早苗の母が、涙をそっと拭って、
「ほら、貸してごらんなさい。こうしてあやすのですよ」
と赤子を慣れた様子で抱いてあやす。
父は、難しい顔で息をつき、口を開いた。
「いいだろう。この子は我が家の次男として育てよう。名は、頼藤紀代松。良いな」
生まれてすぐに生母を亡くした子供が、新しい家族を得た瞬間だった。
そして、時は流れる──。
そう、言いたかった。
「大丈夫。心配はいらないわ。だからしっかりして、早紀ちゃん」
親友は産んだばかりの赤子を抱いて、ただ、
「この子をお願い。どうか、どうか……」
と涙を浮かべて繰り返すのみで、もう、死がすぐそこまで迫って来ているのは、誰の目にも明らかだった。
「熊沢にも、秘密に……」
「ええ、ええ、必ず」
「お願いね、早苗さん。
ああ……ただ、幸せになって欲しい。何のしがらみも、関係ない、ところで……」
そして、目は光を失った。
それが分かったとでもいうのか、赤子はわんわんと泣き出した。
「ああ、よしよし。いい子ね。泣かないで」
そして、親友を看取った早苗も、赤子と一緒に泣き出した。
傍にいた早苗の母が、涙をそっと拭って、
「ほら、貸してごらんなさい。こうしてあやすのですよ」
と赤子を慣れた様子で抱いてあやす。
父は、難しい顔で息をつき、口を開いた。
「いいだろう。この子は我が家の次男として育てよう。名は、頼藤紀代松。良いな」
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そして、時は流れる──。
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