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心霊特番・イギリス(3)女王様、最強
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管理責任者は、狼狽えていた。
「え、それは……」
「祓うか、粘ってみるか。祓うと『心霊スポット跡』になるかもしれませんけど、思ったよりも力が強いのがさらに喰い合って強くなってる上に数が多いから、朝まで粘るのは、どうでしょうね」
日本語と英語で言い、結論を迫る。
結界にバン、バン、とぶつかって来る雑霊が、まるで急かしているようだ。
「わ、わかりました。祓って下さい。人間の安全が第一ですし、彼らにも安らかに眠ってもらった方がいいでしょう」
「わかりました」
「怜、どうするかねえ。集めて祓う?」
「これ以上強くなられたら、面倒臭いしな。お腹も空いて来たし、時短で終わらせようか」
「そうだねえ。昼に食べた切りだもんねえ」
「んじゃ、行くか」
大体の範囲を思い浮かべ、一気に神威を放つ。
パアッと見えない何かが広がって行くのを、誰もが知覚した。と、それに合わせるように、霊が消えて行く。
「え、あ……」
ほんの数秒で、辺りは聖域かと思うような空気に置き換わった。
「終わりました」
誰も、動かない。いや、動けない。
「怜、神威、神威」
未だ漏れる神威を抑え込むように、内向きにと閉じる。
「終わった……」
美里様が言って空気が緩み、揃って外へ出た。
「神社みたいな感じがする」
高田さんが言って、深呼吸する。
恨みを抱えて徘徊していたものもいなくなり、清浄な空気が満ちている。
「消えたのね」
イギリス人の女の子達がしみじみと言うのに、美里様は、頷いて言った。
「迷える魂も、やっと安らかな眠りにつく事を許されたのよ。神の御元で、安心しているでしょう」
聖女様のような厳かな表情と声音に、イギリス人たちは一様に納得したらしく、礼拝堂に向かって十字を切って祈りを捧げる。
流石は演技派女優だ。恐れ入った。
こうして、訴えられるリスクを大幅に下げる事にも、どうやら成功したようだった。
開いているパブへ入って、食事を摂る。
僕、直を含む数人以外はアルコールも頼んでいる。
「いやあ、お疲れ様でした。おかげさまでいいのがたくさん撮れましたよ。これは、数字が期待できますよ」
ディレクターは笑いが止まらない。
「今回も色々あったなあ。主に、想定外の所で」
「ここだけだもんね、まんまロケ地で騒動があったのは」
ミトングローブ左手右手が、遠い目をして笑う。
「怖かったけど、漫才は面白かったわよ」
えりなさんは、化粧と共に機嫌も直っていた。
「あの高校生もなかなか可愛かったよねえ」
高田さんが言うのに、美里様が頷き、
「そうよ。随分親切だったじゃない?ああいうのが好みなの。若いのがいいわけ」
と僕に絡みだす。
「いや、部外者だからな。このメンバーは霊に会いに来て、何かが起こるのを期待してたわけだし。
というか、アルコール飲んでるの?アルコールに弱いの?」
「ソーダよ、ソーダ。誤魔化さないで」
「怜。これ、ジンか何かのソーダ割りだねえ」
「酔っ払いか……」
「はあ?こら、怜。聞いてるの?」
「聞いてますよ、美里様」
「様はやめなさい。命令。わかった?」
「はいはい」
「はいは1回」
「はい」
「……幽霊より強いのがドS霊能師で、美里様はそれより強い、と」
高田さんが言い、皆で頷いている。
「面白いものが見れたな」
「おい、カメラ――よし、撮ってるな」
「今夜は話し合いましょう」
「面倒臭いな」
「ボクは眠くなってきちゃったねえ」
皆が、マイペースらしかった。
「え、それは……」
「祓うか、粘ってみるか。祓うと『心霊スポット跡』になるかもしれませんけど、思ったよりも力が強いのがさらに喰い合って強くなってる上に数が多いから、朝まで粘るのは、どうでしょうね」
日本語と英語で言い、結論を迫る。
結界にバン、バン、とぶつかって来る雑霊が、まるで急かしているようだ。
「わ、わかりました。祓って下さい。人間の安全が第一ですし、彼らにも安らかに眠ってもらった方がいいでしょう」
「わかりました」
「怜、どうするかねえ。集めて祓う?」
「これ以上強くなられたら、面倒臭いしな。お腹も空いて来たし、時短で終わらせようか」
「そうだねえ。昼に食べた切りだもんねえ」
「んじゃ、行くか」
大体の範囲を思い浮かべ、一気に神威を放つ。
パアッと見えない何かが広がって行くのを、誰もが知覚した。と、それに合わせるように、霊が消えて行く。
「え、あ……」
ほんの数秒で、辺りは聖域かと思うような空気に置き換わった。
「終わりました」
誰も、動かない。いや、動けない。
「怜、神威、神威」
未だ漏れる神威を抑え込むように、内向きにと閉じる。
「終わった……」
美里様が言って空気が緩み、揃って外へ出た。
「神社みたいな感じがする」
高田さんが言って、深呼吸する。
恨みを抱えて徘徊していたものもいなくなり、清浄な空気が満ちている。
「消えたのね」
イギリス人の女の子達がしみじみと言うのに、美里様は、頷いて言った。
「迷える魂も、やっと安らかな眠りにつく事を許されたのよ。神の御元で、安心しているでしょう」
聖女様のような厳かな表情と声音に、イギリス人たちは一様に納得したらしく、礼拝堂に向かって十字を切って祈りを捧げる。
流石は演技派女優だ。恐れ入った。
こうして、訴えられるリスクを大幅に下げる事にも、どうやら成功したようだった。
開いているパブへ入って、食事を摂る。
僕、直を含む数人以外はアルコールも頼んでいる。
「いやあ、お疲れ様でした。おかげさまでいいのがたくさん撮れましたよ。これは、数字が期待できますよ」
ディレクターは笑いが止まらない。
「今回も色々あったなあ。主に、想定外の所で」
「ここだけだもんね、まんまロケ地で騒動があったのは」
ミトングローブ左手右手が、遠い目をして笑う。
「怖かったけど、漫才は面白かったわよ」
えりなさんは、化粧と共に機嫌も直っていた。
「あの高校生もなかなか可愛かったよねえ」
高田さんが言うのに、美里様が頷き、
「そうよ。随分親切だったじゃない?ああいうのが好みなの。若いのがいいわけ」
と僕に絡みだす。
「いや、部外者だからな。このメンバーは霊に会いに来て、何かが起こるのを期待してたわけだし。
というか、アルコール飲んでるの?アルコールに弱いの?」
「ソーダよ、ソーダ。誤魔化さないで」
「怜。これ、ジンか何かのソーダ割りだねえ」
「酔っ払いか……」
「はあ?こら、怜。聞いてるの?」
「聞いてますよ、美里様」
「様はやめなさい。命令。わかった?」
「はいはい」
「はいは1回」
「はい」
「……幽霊より強いのがドS霊能師で、美里様はそれより強い、と」
高田さんが言い、皆で頷いている。
「面白いものが見れたな」
「おい、カメラ――よし、撮ってるな」
「今夜は話し合いましょう」
「面倒臭いな」
「ボクは眠くなってきちゃったねえ」
皆が、マイペースらしかった。
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