415 / 1,046
デスマスク(1)噂の真相
しおりを挟む
その噂はどこで聞いたんだったか。あるスピード写真撮影ボックスで写真を撮ると、自分の死ぬ時の顔が写る。その噂が本当かどうか確かめようと、夏休みも終盤のある夜、俺達は夜中近くにそこへ出かけた。
あまり人通りのない集落の中に、それはポツンとあった。
そばにバス停があるが、廃線になっており、時刻表は錆びていて読めない。
「順番な」
ジャンケンで順番を決め、1人ずつボックスの中に入り、写真を撮る。
陽平の番が来て、中に入り、カーテンを閉める。何度か使ったことのあるものと変わりはなく、椅子に座り、正面の鏡を見る。
煌々と灯りが点いているが、噂のせいか、何となく落ち着かない。つい、鏡の中に、自分以外のものが映っていないか確認してしまった。
あったらあったで、きっと恐ろしいんだろうが……。
何も異常は無く、普通の手順で、もうすぐ必要になる免許証用の写真を撮影した。
それよりも、とにかく暑い。
撮影が終了すると、
「暑い!」
と言いながら外に出た。
数分後写真が出て来て、平気な顔をしながら、3人共、恐々それを見た。
「何にもないぞ」
「普通だ」
「普通に悪人みたいな顔だな」
急に、ホッとしたような、バカらしいような、少しでもビクついたのが恥ずかしいような気持ちを誤魔化すように、笑いながら写真を見せ合った。
「証明写真って、何でこんなに人相が悪くなるんだろうなあ」
「指名手配犯みたいだもんな」
「外国のパスポートとか、笑ってるのあるだろ。日本はだめなのかな、笑ったら」
「免許、笑顔のやつで行ってみろよ」
「やだよ。おかしなやつとか思われたらどうするんだよ」
言い合いながら車に乗り込み、家へ帰って行ったのだった。
だが、俺達は誰も気づいていなかった。ボックスの上にいる何かが、ずっと俺達を見ていた事を。
そしてこの先、何が起こるかという事にも……。
テーブルに並ぶのは、白とピンクの2色の肉団子のもち米蒸し、冷やし茶碗蒸し、えのきとしめじのお浸し、ほうれん草の湯葉巻、ハモのお吸い物、鯛めし。肉団子のもち米蒸しは、もち米の半分は水に、半分は赤い色を付けた水につけておき、塩、こしょう、酒を入れてこねて丸めた肉団子の周りに各々付け、15分程蒸したものだ。レンジでもできる。豆腐やおからを混ぜるとカロリーもダウンするし、お弁当にもいい。
「きれいし、かわいい。女子受けしそう」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡く、兄と結婚した。
「ああ。京香さんは、あてにいいとか言ってたなあ、そう言えば」
御崎 怜、大学4年生。高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
京香さんというのは僕と直の霊能師の師匠で、隣に住んでいる。
「もっと他はどうなんだ?例えば、ガールフレンドとか」
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
「ガールフレンド?女の友人……エリカは食欲魔人で、見かけよりもボリュームだろうな。ユキはきれいだと言うだろうけど、作り方とかに食いついて来るな。美里は……割と中味は男なんじゃないかなあ」
僕は想像した。
「一緒に出掛けたい相手はいないのか。祭りとかに」
「兄ちゃんと冴子姉と敬かな。後は、直に、宗や楓太郎や智史かな」
「……怜よ……俺はちょっと、育て方を間違えたんだろうか……」
「え、兄ちゃん、何で!?」
「どうにかなるから、大丈夫よ、司さん」
「ええ、冴子姉まで否定しない!?」
僕は愕然とした。僕の何が間違えているのか。
いただきますをして、箸をつける。
「うん、美味い。もちもちしてるな」
「鯛めしも出汁が効いてて美味しい!」
好評な様子にホッとしつつ、箸を進めた。
「祭りで思い出した。明日、仕事が入ったんだ。祭りに誘って来る声がするって」
「祭り?」
兄が訊き返す。
「うん。耳元で『お祭りだよ』って声がするんだって」
言うと、甥の敬が、離乳食の鯛を食べて、
「ええーん、まんん」
とパタパタと手足をさせて喜ぶ。
「今度、敬も一緒に花火を見ような」
「ああい。ええーん」
皆で、和やかに食事を進めた。花火大会を楽しみにして。
あまり人通りのない集落の中に、それはポツンとあった。
そばにバス停があるが、廃線になっており、時刻表は錆びていて読めない。
「順番な」
ジャンケンで順番を決め、1人ずつボックスの中に入り、写真を撮る。
陽平の番が来て、中に入り、カーテンを閉める。何度か使ったことのあるものと変わりはなく、椅子に座り、正面の鏡を見る。
煌々と灯りが点いているが、噂のせいか、何となく落ち着かない。つい、鏡の中に、自分以外のものが映っていないか確認してしまった。
あったらあったで、きっと恐ろしいんだろうが……。
何も異常は無く、普通の手順で、もうすぐ必要になる免許証用の写真を撮影した。
それよりも、とにかく暑い。
撮影が終了すると、
「暑い!」
と言いながら外に出た。
数分後写真が出て来て、平気な顔をしながら、3人共、恐々それを見た。
「何にもないぞ」
「普通だ」
「普通に悪人みたいな顔だな」
急に、ホッとしたような、バカらしいような、少しでもビクついたのが恥ずかしいような気持ちを誤魔化すように、笑いながら写真を見せ合った。
「証明写真って、何でこんなに人相が悪くなるんだろうなあ」
「指名手配犯みたいだもんな」
「外国のパスポートとか、笑ってるのあるだろ。日本はだめなのかな、笑ったら」
「免許、笑顔のやつで行ってみろよ」
「やだよ。おかしなやつとか思われたらどうするんだよ」
言い合いながら車に乗り込み、家へ帰って行ったのだった。
だが、俺達は誰も気づいていなかった。ボックスの上にいる何かが、ずっと俺達を見ていた事を。
そしてこの先、何が起こるかという事にも……。
テーブルに並ぶのは、白とピンクの2色の肉団子のもち米蒸し、冷やし茶碗蒸し、えのきとしめじのお浸し、ほうれん草の湯葉巻、ハモのお吸い物、鯛めし。肉団子のもち米蒸しは、もち米の半分は水に、半分は赤い色を付けた水につけておき、塩、こしょう、酒を入れてこねて丸めた肉団子の周りに各々付け、15分程蒸したものだ。レンジでもできる。豆腐やおからを混ぜるとカロリーもダウンするし、お弁当にもいい。
「きれいし、かわいい。女子受けしそう」
御崎冴子。姉御肌のさっぱりとした気性の兄嫁だ。母子家庭で育つが母親は既に亡く、兄と結婚した。
「ああ。京香さんは、あてにいいとか言ってたなあ、そう言えば」
御崎 怜、大学4年生。高校入学直前、突然、霊が見え、会話ができる体質になった上、神殺し、神喰い、神生み等の新体質までもが加わった、霊能師である。面倒臭い事はなるべく避け、安全な毎日を送りたいのに、危ない、どうかすれば死にそうな目に、何度も遭っている。
京香さんというのは僕と直の霊能師の師匠で、隣に住んでいる。
「もっと他はどうなんだ?例えば、ガールフレンドとか」
御崎 司。頭脳明晰でスポーツも得意。クールなハンサムで、弟から見てもカッコいい、ひと回り年上の頼れる自慢の兄である。両親が事故死してからは親代わりとして僕を育ててくれ、感謝してもしきれない。警察庁キャリアで、警視正だ。
「ガールフレンド?女の友人……エリカは食欲魔人で、見かけよりもボリュームだろうな。ユキはきれいだと言うだろうけど、作り方とかに食いついて来るな。美里は……割と中味は男なんじゃないかなあ」
僕は想像した。
「一緒に出掛けたい相手はいないのか。祭りとかに」
「兄ちゃんと冴子姉と敬かな。後は、直に、宗や楓太郎や智史かな」
「……怜よ……俺はちょっと、育て方を間違えたんだろうか……」
「え、兄ちゃん、何で!?」
「どうにかなるから、大丈夫よ、司さん」
「ええ、冴子姉まで否定しない!?」
僕は愕然とした。僕の何が間違えているのか。
いただきますをして、箸をつける。
「うん、美味い。もちもちしてるな」
「鯛めしも出汁が効いてて美味しい!」
好評な様子にホッとしつつ、箸を進めた。
「祭りで思い出した。明日、仕事が入ったんだ。祭りに誘って来る声がするって」
「祭り?」
兄が訊き返す。
「うん。耳元で『お祭りだよ』って声がするんだって」
言うと、甥の敬が、離乳食の鯛を食べて、
「ええーん、まんん」
とパタパタと手足をさせて喜ぶ。
「今度、敬も一緒に花火を見ような」
「ああい。ええーん」
皆で、和やかに食事を進めた。花火大会を楽しみにして。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
200
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる