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サバイバルゲーム(4)あの鐘を鳴らせ
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1階の玄関ホールの中を鏡を使って覗き、手振りで担当を決めると、一気に飛び込んで隊員の2人が玄関ホールで見張りをしていた敵の2人を撃つ。
2人は両手を上げて消えて行った。
そのまま自衛隊員は足を止めず、互いにカバーし、全方位への警戒をしながら奥の廊下へ踏み込んで行く。それに、前方の部屋の中から出て来た敵がライフルを向けて来るが、先に自衛隊員が反応し、撃つ。それで向こうは2人が両手を上げて消えて行った。
落ち着いており、実に頼もしい。
そこからは屋内訓練のセオリーに従って1部屋ずつクリアにしていき、見つけた敵を片付けて行く。
敵の残りは、2階にいるらしい。
向こうも10人だとすると、残りは2人だろうか。
2階から撃ち下ろして来るのを警戒しながら階段を駆け上り、2階の踊り場に飛び出したところを狙われ、自衛隊員が1人撃たれた。
意識を無くすが、傷はない。寝ているだけ、これまでに見つかった隊員達と同じだ。
「戻ったら訓練の追加決定だな」
小声でボソリと副隊長が言い、残った隊員達の表情がより厳しくなった。
しかし足を止める事もなく、各部屋を次々に急襲していき、敵を撃つ。
が、また1人が倒れた。
こちらは8人を残したまま、最期の1部屋に到達する。計算では、残り1人の筈だ。
ドアの前で全員が一旦足を止め、顔を合わせ、隊長の指でのカウントダウンに合わせて1人がドアを勢いよく開け、1列目の2人が転がり込むようにして部屋に入り、それを敵のBB弾が狙って浴びせられる。
上手くそれを躱して2人が左右に分かれて左右のソファとベッドの陰に隠れ、その間に飛び込んで来た次の2人が、敵に向かって撃つ。
その後から入った僕と直は、その敵が両手を上げて消えて行くところを見た。
敵影はなく、壁際に置かれた小さい机の上に金色のベルが置いてあった。
「あれを鳴らせばいいのか?」
副隊長が言い、こちらを見た。
これはやっぱり、隊長だろう。
「隊長、お願いします」
隊長はちょっと嬉しそうに笑いそうになってから、澄ました顔で机に近付き、ベルを手にすると、振った。
チリンチリンチリン。
澄んだ、この場に場違いにも思えるような音が鳴る。
と、気配が立ち込め、僕と直は警戒する。
現れたのは、敵チームの10人だった。
「やる度に強くなっていくもんなあ」
「最初はこっちが圧勝したのに」
そんな事を言う彼らの顔は、笑顔だ。
「そちらの捕虜も、目を覚まして行きますよ」
敵チームのリーダーらしき人が言うのを裏付けるように、先程撃たれて眠り込んでいた2人が駈け込んで来る。
「サバイバルゲームで交流試合をする予定だったチームの方ですか」
訊くと、
「そうです。向かう途中で事故に遭って、死んでも死に切れなくてね」
と言いながら、残念そうにした。
「そうですか。それはお気の毒様でした。
これで、満足しましたか。向こうにそろそろ行きましょうか」
彼らは顔を見合わせ、いい笑顔を浮かべ、言った。
「いえ、嫌です」
「は?」
てっきり成仏するかと思っていたこちら側は、キョトンとした。
「いや、だって、ゲームしたでしょう?」
直が訊き返す。
「そうなんですけど、力を出し切れないというか……」
「これでは悔いが残るというかですねえ……」
勝手な事を……。
「最後に接近戦で行きましょう。我々を倒せたらそちらの勝ち。そちらを倒したらこっちの勝ち。こちらが勝った場合は、我々にあなた方の体をもらおう。それなら違和感なしでいけそうだし。うん。そうしよう」
「ちょっと、それは無いでしょう――聞いてないな」
彼らは集まって1体になっていく。それと同時に、周りの景色がにじむように変わり、山小屋は消え失せ、いつの間にか全員、砂地に立っていた。
「ど、どうするんです?」
隊長が訊くので、僕と直は、顔を見合わせてから、装備を外し出した。
「斬って祓います。ここからはいつも通りですね。
さあて、逝こうか」
「はいよ」
「さあ。最終ラウンド開始だな」
僕は右手に刀を出した。
2人は両手を上げて消えて行った。
そのまま自衛隊員は足を止めず、互いにカバーし、全方位への警戒をしながら奥の廊下へ踏み込んで行く。それに、前方の部屋の中から出て来た敵がライフルを向けて来るが、先に自衛隊員が反応し、撃つ。それで向こうは2人が両手を上げて消えて行った。
落ち着いており、実に頼もしい。
そこからは屋内訓練のセオリーに従って1部屋ずつクリアにしていき、見つけた敵を片付けて行く。
敵の残りは、2階にいるらしい。
向こうも10人だとすると、残りは2人だろうか。
2階から撃ち下ろして来るのを警戒しながら階段を駆け上り、2階の踊り場に飛び出したところを狙われ、自衛隊員が1人撃たれた。
意識を無くすが、傷はない。寝ているだけ、これまでに見つかった隊員達と同じだ。
「戻ったら訓練の追加決定だな」
小声でボソリと副隊長が言い、残った隊員達の表情がより厳しくなった。
しかし足を止める事もなく、各部屋を次々に急襲していき、敵を撃つ。
が、また1人が倒れた。
こちらは8人を残したまま、最期の1部屋に到達する。計算では、残り1人の筈だ。
ドアの前で全員が一旦足を止め、顔を合わせ、隊長の指でのカウントダウンに合わせて1人がドアを勢いよく開け、1列目の2人が転がり込むようにして部屋に入り、それを敵のBB弾が狙って浴びせられる。
上手くそれを躱して2人が左右に分かれて左右のソファとベッドの陰に隠れ、その間に飛び込んで来た次の2人が、敵に向かって撃つ。
その後から入った僕と直は、その敵が両手を上げて消えて行くところを見た。
敵影はなく、壁際に置かれた小さい机の上に金色のベルが置いてあった。
「あれを鳴らせばいいのか?」
副隊長が言い、こちらを見た。
これはやっぱり、隊長だろう。
「隊長、お願いします」
隊長はちょっと嬉しそうに笑いそうになってから、澄ました顔で机に近付き、ベルを手にすると、振った。
チリンチリンチリン。
澄んだ、この場に場違いにも思えるような音が鳴る。
と、気配が立ち込め、僕と直は警戒する。
現れたのは、敵チームの10人だった。
「やる度に強くなっていくもんなあ」
「最初はこっちが圧勝したのに」
そんな事を言う彼らの顔は、笑顔だ。
「そちらの捕虜も、目を覚まして行きますよ」
敵チームのリーダーらしき人が言うのを裏付けるように、先程撃たれて眠り込んでいた2人が駈け込んで来る。
「サバイバルゲームで交流試合をする予定だったチームの方ですか」
訊くと、
「そうです。向かう途中で事故に遭って、死んでも死に切れなくてね」
と言いながら、残念そうにした。
「そうですか。それはお気の毒様でした。
これで、満足しましたか。向こうにそろそろ行きましょうか」
彼らは顔を見合わせ、いい笑顔を浮かべ、言った。
「いえ、嫌です」
「は?」
てっきり成仏するかと思っていたこちら側は、キョトンとした。
「いや、だって、ゲームしたでしょう?」
直が訊き返す。
「そうなんですけど、力を出し切れないというか……」
「これでは悔いが残るというかですねえ……」
勝手な事を……。
「最後に接近戦で行きましょう。我々を倒せたらそちらの勝ち。そちらを倒したらこっちの勝ち。こちらが勝った場合は、我々にあなた方の体をもらおう。それなら違和感なしでいけそうだし。うん。そうしよう」
「ちょっと、それは無いでしょう――聞いてないな」
彼らは集まって1体になっていく。それと同時に、周りの景色がにじむように変わり、山小屋は消え失せ、いつの間にか全員、砂地に立っていた。
「ど、どうするんです?」
隊長が訊くので、僕と直は、顔を見合わせてから、装備を外し出した。
「斬って祓います。ここからはいつも通りですね。
さあて、逝こうか」
「はいよ」
「さあ。最終ラウンド開始だな」
僕は右手に刀を出した。
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